« 2枚看板のクローザー2人がともに失点して巨人に惜敗 | トップページ | +2.8%の大きな上昇となった4月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか? »

2024年5月27日 (月)

ピーターソン国際経済研究所(PIIP)によるトランプ候補の財政提案の分析やいかに?

先週月曜日の5月20日に、ピーターソン国際経済研究所(Peterson Institute for International Economics=PIIE)から "Why Trump's Tariff Proposals Would Harm Working Americans" と題する Policy Brief が明らかにされています。すなわち、米国大統領選挙に共和党の候補として出馬するトランプ候補の関税と減税の提案が低所得や中所得の層が税負担の増加を負うダメージをもたらすとの主張です。まず、引用情報は以下の通りです。

私が大雑把に読んだところ、伝統的なミクロ経済学の余剰分析、すなわち、厚生経済学の第2定理に基づく市場価格に関税が課された時の消費者余剰と生産者余剰の変化、さらに、死荷重(dead weight loss)の計測を行っています。そして、それをいくつかの所得階層別に計測するとともに、逆進的な消費者課税の提案の影響も併せて計測しています。トランプ提案は2017年税制改革法の延長、一律10%の関税率の設定、特に中国からの輸入には60%の関税率の適用などが中心として考えられています。

photo

まず、リポートから Figure 3 Consumption-based taxes are less progressive than other tax instruments, putting more burden on lower-income taxpayers を引用すると上の通りです。10分位所得で見ていて、もっとも所得の低い第1分位は所得の0.7%を占める一方で、ほとんどの税金の0.7%未満、給与税の0.7%、物品税/関税の1.7%を負担しています。このように間接税は逆進性があり、トランプ提案は低所得層の税負担を重くするものであると主張しています。

photo

続いて、リポートから Figure 5 Trump's fiscal agenda includes both regressive tax cuts and regressive tax increases を引用すると上の通りです。グラフのタイトル通り、トランプ提案は逆進的な減税と同じく逆進的な増税の両方を含んでいると分析しています。TCJAというのは、2017年税制改革法=Tax Cuts and Jobs Act のことなのですが、所得の5分位でみて、低所得層ほどネットのロスが多くなっているのが見て取れます。

photo

続いて、リポートから Figure 6 Trump's fiscal agenda places a greater burden on lower- and middle-income taxpayers を引用すると上の通りです。要するに、このリポートの結論となるわけで、5分位所得で見てもっとも低所得の第1分位から第4分位までは負担増となり、所得が低い方が負担が大きい、と結論しています。5分位の中でネットでプラスとなるのは、もっとも所得の高い第5分位だけと試算されています。そして、その5分位所得の中の第5分位でもプラスは+0.21%にしか過ぎない一方で、100分位で考えてもっとも裕福なトップ1%は+1.36%のプラスと結論しています。

米国大統領選挙の二大政党の候補者はほぼほぼ決まったも同じで、これからいろんな政策議論が行われると考えられます。いろんな政策課題の中で、1992年のクリントン陣営のモットーであった "It's the economy, stupid." は今でも真実なのではなかろうか、と私は考えています。

|

« 2枚看板のクローザー2人がともに失点して巨人に惜敗 | トップページ | +2.8%の大きな上昇となった4月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 2枚看板のクローザー2人がともに失点して巨人に惜敗 | トップページ | +2.8%の大きな上昇となった4月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか? »