+2.2%と上昇率が縮小した消費者物価指数(CPI)の先行きをどう見るか?
本日、総務省統計局から4月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.2%を記録しています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は22か月連続、すなわち、2年あまりの連続です。ヘッドライン上昇率は+2.5%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+2.4%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
4月の消費者物価2.2%上昇、エネルギー上昇に転じる
総務省が24日発表した4月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が107.1となり、前年同月比で2.2%上昇した。エネルギーが上昇に転じ全体を押し上げた。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.2%の上昇だった。2年8カ月連続で前年同月を上回った。伸びは前の月の2.6%から縮小したものの、日銀の物価安定目標である2%を超える上昇が続いている。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は2.4%上がった。生鮮食品を含む総合指数は2.5%上昇した。
エネルギーは0.1%上がり、前月の0.6%下落から上昇に転じた。プラスに転じたのは2023年1月以来、1年3カ月ぶりとなる。
資源価格の上昇や円安が影響し、ガソリン価格の上昇が加速したほか、都市ガス代のマイナス幅が縮まった。
5月以降は光熱費の上昇が加速しそうだ。再生可能エネルギーの普及のため国が電気代に上乗せしている「再生可能エネルギー賦課金」の上げが5月の電気代に反映される。物価高対策として進めてきた電気代やガス代を補助する事業は5月使用分で終了する。中東情勢の悪化や円安も上昇圧力となる。
4月の結果について他の品目をみると生鮮野菜・果物の上昇が目立った。キャベツが39.4%、リンゴが37.6%それぞれ上がった。天候不良で出荷量が減少し品薄になったことが影響した。
果実ジュースは28.9%上昇した。オレンジジュース果汁の主要原産国であるブラジルや米国で、天候不良による不作や病害の影響で需給が逼迫した。
生鮮食品を除く食料は3.5%上昇だった。8カ月連続で上昇幅が縮小した。アイスクリームや冷凍ギョーザ、チョコレートなど昨年4月にあった値上げの影響がはく落した。
宿泊料は18.8%伸びた。3月の27.7%からは上昇幅が縮小した。前年4月には全国旅行支援の影響縮小などで宿泊費が大きく伸びていた。今年4月はその反動が出た。
何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。
まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.2%ということでしたので、まさにジャストミートしました。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、エネルギー価格については、昨年2023年2月統計から前年同月比マイナスに転じていたのですが、3月統計では前年同月比で▲0.6%まで下落幅が縮小し、本日発表された4月統計ではとうとう+0.1%と上昇に転じました。ヘッドライン上昇率に対する寄与度はまだ+0.01%なのですが、先月3月統計では▲0.04%でしたので、先月との寄与度差を見ると+0.05%押し上げたことになります。ガソリン補助金が縮減された影響で、ガソリン価格は3月統計では+4.3%、本日公表された4月統計でも+4.4%と、ともにヘッドライン上昇率に対する寄与度は+0.09%となっています。
現在のインフレの主役である食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮食品が野菜・果物・魚介を合わせて+0.38%あり、うち生鮮野菜が+0.26%、生鮮果物が+0.14%の寄与をそれぞれ示しています。生鮮食品を除く食料の寄与度が+0.83%あります。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見ると、せんべいなどの菓子類が+0.15%、調理カレーなどの調理食品が+0.13%、うるち米などの穀類が+0.12%、焼肉などの外食が+0.10%、鶏卵は下がったものの牛乳など上昇した乳卵類が+0.09%、などなどとなっています。サービスでは、宿泊料が前年同月比で+18.8%上昇し、寄与度も+0.19%に達しています。
消費者物価指数(CPI)の先行きに関しては、コアCPIの前年同月比上昇率で見て、3月の+2.6%から4月統計では+2.2%に縮小しましたが、先行き、順調に物価上昇率が沈静化していくとは考えられていません。特に、エネルギーの価格が上昇に転じており、さらに、5月から再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価が、経済産業省の発表によれば1kw当たり3.49円と大幅に引き上げられます。それまでは1.4円でしたので、大幅な引上げといえます。したがって、日経新聞の報道では、「標準家庭で月836円負担増」があると報じられており、国民生活を直撃するとともに、食料に加えてエネルギーがふたたびインフレの主役となる可能性も否定できません。日銀は金利上昇をどこまで許容するのでしょうか?
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