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2024年5月 3日 (金)

「OECD経済見通し」を読む

日本時間の昨夜、経済協力開発機構(OECD)から「OECD経済見通し」OECD Economic Outlook, May 2024 が公表されています。OECD閣僚理事会の開催に合わせての公表です。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。いくつか図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、プレスリリース資料から見通しのヘッドラインである成長率見通しの総括表 GDP growth projections を引用すると上の通りです。見れば明らかな通り、インドやインドネシアなどのアジア新興国が世界経済を牽引して、世界の成長率は今年2024年+3.1%、来年2025年+3.2%と見込んでいます。インフレ抑制のための金融引締めといった経済要因だけでなく、ウクライナ戦争やガザをはじめとする中東における緊張の高まりを考慮すれば、現在までのところ世界経済は驚くほどレジリエントである global activity has proved surprisingly resilient so far と評価しています。今回の見通しの副題は An unfolding recovery とされていて、まさにその通りです。ただし、先進各国について詳しく見ると、今年2024年については米国こそ高成長が見込まれているものの、欧州諸国や日本は物価高や物価抑制のために金融引締めにより+1%を下回る低成長が予測されています。しかし、来年2025年になれば逆に、米国経済がやや減速する一方で、日欧は成長率を高め+1%、あるいは少し+1%を超える成長率になるとの見通しになっています。

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続いて、最大の注目ポイントである物価の見通しについて、プレスリリース資料から インフレ見通し Inflation projections のグラフを引用すると上の通りです。大雑把に、今年2024年から来年2025年にかけて物価上昇は落ち着く方向にあると見込まれています。もっとも、OECD加盟国平均では、2024-25年とも+3%を超えるインフレ率になると予想されています。ただし、G7を構成する日本や欧米先進国はおおむね+2%のインフレ目標の周辺でアンカーされることが見込まれています。景気後退に陥ることなくインフレ抑制に成功するという意味で、典型的なソフトランディングにパスに乗っているように見えます。

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続いて、先行きリスクとして、プレスリリース資料から 地政学的な緊張の高まり Geopolitical tensions put the recovery at risk のグラフを引用すると上の通りです。左のパネルは石油価格上昇のリスク、そして、右のグラフはその石油価格上昇に起因するインフレのリスクです。ほかに、政策課題として人工知能の活用による生産性の向上なども議論されています。下のグラフはプレスリリース資料から 人工知能(AI)が経済パフォーマンスを大幅に向上させる可能性 Artificial intelligence (AI) can yield large performance gains です。ご参考以上のものとは思えませんが、あくまで、ご参考まで。

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