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2024年5月21日 (火)

日本の低所得家計の負担率を国際比較する

先週金曜日5月17日、NIRA総合研究開発機構から勤労者世帯の負担と給付の国際比較について、「勤労者世帯の負担と給付の国際比較」と題するワーキングペーパーにより明らかにされています。もちろん、pdfファイルもアップロードされています。引用情報は以下の通りです。

まず、ワーキングペーパーの概要をNIRA総合研究開発機構のサイトから引用すると以下の通りです。

概要
家計にどれほどの税や社会保険料の負担がかかり、手当などの給付を受けられるのか、ということは、人々の大きな関心事であり、その制度設計は政策的に非常に重要である。しかし、税制・給付制度は複雑で全体像を把握しづらく、また、他国の情報を参考にすることも容易ではない。本稿では、OECDが各国の政策・制度の内容を収集して構築したOECD tax-benefit model (TaxBEN) を用いて、勤労者世帯における収入と純負担の関係を分析し、国際比較を踏まえながら日本の特徴を整理した。モデル世帯アプローチ (hypothetical family approach) に基づき2022年のデータでシミュレーションしたところ、以前から指摘されるように、日本は低中所得層において収入に占める社会保険料の負担割合が高いことが確認された。また、諸外国と比べると、日本は負担率全体の累進度が低く、高所得層ほど相対的に負担率が低くなることがわかった。この傾向は子どもの有無にかかわらず観察された。さらに、収入が児童手当の所得制限や所得上限を超えるところで負担率が上がる段差があることや、配偶者の働き方によって世帯の負担率が異なることも検証した。不公正な仕組みを是正し、税と社会保険を一体的に改革する必要性が示唆される。

実に、上に引用した概要にある通り、「諸外国と比べると、日本は負担率全体の累進度が低く、高所得層ほど相対的に負担率が低くなる」ことが確認されています。極めて直接的にこれを表したテーブルは以下の通りです。

photo

上のテーブルは、ワーキングペーパー p.14 から 表8 共働き世帯の負担率 (日本と主要9カ国、2022年) を引用しています。少し判りにくいのですが、共働き世帯の世帯総収入70%のやや低所得の家計、100%平均的な家計、そして、200%の高所得家計の3ケースについて、OECD平均及び主要9か国と比較しています。累進度が低くて高所得家計ほど相対的に負担が低くなる、というすでに指摘した点とともに、子供がいない方が負担が大きい点も見逃すべきではありません。このワーキングペーパーでは負担とともに給付の試算も同時にしていて、子供がいなければ給付が大きく減りますので、子供がいない家計の方の負担率が高くなるのは当然といえば当然なのですが、岸田内閣が掲げる異次元の少子化対策の財源を考える上で議論になる可能性があると私は受け止めています。

先日、第一生命経済研究所のリポート「賃金と物価の好循環の幻想」を取り上げて、日本では国民負担率がほかの先進国と比較して大きく増加していて、賃上げにより所得が伸びても消費への影響が小さい可能性がある、との議論を示しました。まさに、政府の外郭団体の研究成果により実証的に裏付けられた形です。

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