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2024年6月26日 (水)

6月調査の日銀短観予想やいかに?

来週月曜日7月1日の公表を控えて、各シンクタンクから6月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業/非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下のテーブルの通りです。設備投資計画は今年度2024年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、可能な範囲で、先行き経済動向に注目しました。短観では先行きの業況判断なども調査していますが、シンクタンクにより大きく見方が異なっています。注目です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
3月調査 (最近)+11
+34
<+3.3>
n.a.
日本総研+11
+32
<+9.5%>
先行き(2024年9月調査)は、全規模・全産業で6月調査から横這いを予想。製造業では、自動車の生産回復や電子部品など財需要の循環的な回復が見込まれることから、関連業種を中心に小幅改善する見通し。非製造業は小幅な低下が見込まれるものの、高水準で推移する見通し。ただし、製造業、非製造業ともに人件費の増加や、物価上昇による消費低迷などへの懸念が企業マインドの重石となる可能性。
大和総研+11
+33
<+11.1%>
6月日銀短観では、大企業製造業の業況判断DI(先行き)は+12%pt(最近からの変化幅:+1%pt)、 同非製造業は+28%pt(同: ▲5%pt)を予想する。
大企業製造業では、「はん用機械」、「生産用機械」、「業務用機械」などの機械類において業況判断DI(先行き)の上昇を見込む。米国の底堅い民需や欧州における経済成長率の加速、中国の景気回復などを背景に資本財輸出が回復基調に転じるとみている。「鉄鋼」や「非鉄金属」など、関連する素材業種の業況判断DI(先行き)も改善するだろう。
大企業非製造業については、「卸売」や「対個人サービス」、「宿泊・飲食サービス」の業況判断DI(先行き)の低下を予想する。インバウンド消費の拡大が追い風となる一方、人手不足や時間外労働の上限規制への警戒感が強い状況が続くだろう。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+12
+33
<+12.0%>
大企業・製造業の業況判断DIの先行きは、1ポイントの改善を予測する。半導体関連産業は先行き、持ち直しの動きが継続すると想定される。また、6月に発覚した大手自動車メーカーの認証不正問題に伴う影響についても、今後は徐々にはく落するとみられ、景況感の改善要因になるだろう。
大企業・非製造業の業況判断DIの先行きも改善を予測する。春闘賃上げ率は日本労働組合総連合会(連合)の第6回集計時点で+5.08%と、昨年同期集計(+3.66%)対比で大幅に高まっている。夏場にかけて賃上げ分が徐々に所定内給与に反映されるほか、6月には定額減税も始まった。家計の購買力が高まることで、個人消費は増加に転じると期待される。こうした要因を背景に、非製造業の見通しも改善すると予測する。
ニッセイ基礎研+13
+33
<+12.6%>
先行きの景況感はバラツキが生じると予想。引き続き、円安に伴う原材料高への懸念が幅広く景況感の重石となるが、製造業では、自動車の挽回生産や半導体市場の回復期待が支えとなり、景況感の緩やかな持ち直し継続が示されると見ている。非製造業についても、大企業では定額減税や賃上げ効果による消費回復期待を受けて、景況感がやや改善するだろう。一方、中小企業では、人手不足への懸念が特に強いうえ、もともと先行きを慎重に見る傾向が強いだけに、今回も先行きにかけて悪化が示されると予想している。
第一生命経済研+10
+36
<大企業製造業18.2%>
6月調査の業況判断DI(大企業製造業)は、前回比▲1ポイントの悪化が予想される。自動車メーカーの検査不正が発覚して、それが出荷停止に響くことが大きい。
三菱総研+14
+34
<+11.2%>
先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業+14%ポイント(6月時点から+1%ポイント上昇)、非製造業は+34%ポイント(同+1%ポイント上昇)を予測する。製造業は、半導体市場の回復を背景に、電気機械や生産用機械など関連業種の業況改善を見込む。非製造業は、24年春闘を受けた賃金上昇率の高まりから、個人消費が持ち直すことで、消費関連業種を中心に業況は改善するだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+11
+35
<大企業全産業+15.7%>
大企業製造業の業況判断DI(最近)は、前回調査から横ばいの11と予測する。半導体需要の回復が生産用機械等の改善に寄与する一方、海外景気の弱さや足元で判明した自動車の新たな品質不正が鉄鋼等の下押し材料となり、全体では一進一退が見込まれる。先行きは、種々の下押し要因の解消で、3ポイント改善の14と前向きな見通しになるだろう。
大企業非製造業の業況判断DI(最近)は、前回調査から1ポイント改善の35と予測する。景況感は歴史的な水準まで高まっており、さらなる改善の余地は小さいものの、需要の回復が続く中で、対個人サービスや宿泊・飲食業等を中心に改善が続こう。先行きは、物価上昇による需要減やコスト増、人手不足の深刻化による悪影響等が懸念され、3ポイント悪化の32と慎重な見通しになるだろう。
農林中金総研+12
+35
<5.5%>
先行きに関しては、世界経済の低成長状態はしばらく続く半面、賃上げの高まりや所得税・住民税減税の効果への期待は高まっている。消費改善への期待感が民間企業設備投資などにも好影響を与えていくだろう。ただし、夏場にエネルギー高騰が想定されるほか、サービス産業では人件費増加分の価格転嫁が進展するかに対する懸念もあると思われる。以上から、製造業では大企業が13、中小企業が1と、ともに今回予測から+1ポイントの改善、一方の非製造業では大企業が33、中小企業が14と、今回予測からともに▲2ポイントの悪化となるだろう
明治安田総研+10
+35
<+9.4%>
9月の先行きDIに関しては、大企業・製造業は2ポイント改善の+12、中小企業・製造業は1ポイント改善の▲1と予想する。自動車メーカーの認証不正問題の影響一巡への期待や、半導体市場における需要回復などを追い風に改善すると予想する。

3月調査の日銀短観景況判断では、先行きについて大企業製造業は▲1ポイント低下して+10、大企業非製造業は▲7ポイント低下して+27との結果を得ていましたが、上のテーブルを見れば判るように、ほぼ横ばい圏内の動きと考えられます。製造業については、先進国経済がソフトランディングに向かっていたり、中国経済も回復の兆しを見せ始めていいるとはいえ、どちらもまだ力強さには欠ける一方で、自動車産業の認証不正の影響も徐々に剥落する可能性が高いと考えられます。非製造業では、需要面では定額減税や賃上げ効果から消費の伸びが期待でき、また、インバウンド消費も急速な勢いで回復しているとはいえ、人手不足や時間外労働規制の強化などの供給面での制約が懸念されているといった特徴があります。また、非製造業の供給制約は大企業よりも中小企業や零細企業といった規模の小さな企業に対するインパクトの方が強くなりがちな点も懸念されます。ですので、硬軟取り混ぜて、どちらに振れても大きな変化ではなく横ばい圏内、ということなのかもしれません。設備投資計画に関しては、日銀短観の統計としてのクセで、3月調査で低くスタートした後、6月調査で上方修正される可能性が高いと受け止められています。
最後に、下のグラフは三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートから 業況判断DIの推移 を引用しています。

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