大和総研リポート「『国債買入減額+利上げ』だけで長期金利は2%超えか」は何を主張しようとしているのか?
先週6月12日に大和総研から「『国債買入減額+利上げ』だけで長期金利は2%超えか」とダオするリポートが明らかにされています。まず、大和総研のサイトからサマリーを3点引用すると以下の通りです。
サマリー
- 本稿では、国債買入額の減額ペースに関してシナリオ(月額5兆円、同4兆円、同3兆円)ごとに長期金利への上昇圧力を試算した。
- いずれのシナリオにおいても、当面の間は、国債買入額の減額が長期金利に与える影響は限定的と見込まれる。だが、国債買入縮小による長期金利への上昇圧力は時間とともに強まっていくことには注意が必要だ。最終的な日本銀行の保有国債割合を10~30%と仮定すると、「国債買入縮小要因」と「短期金利引き上げ要因」だけで、長期金利は最終的には2%台半ばから3%程度まで押し上げられる可能性がある。
- リスクシナリオとしては、財政リスクプレミアムの拡大が挙げられる。この抑制には、財政に対する信認を失わないことが必要だ。「金利のある世界」で政府が財政健全化を着実に進めることができるか否かが、金融システムの安定性に大きく関わる。
ものすごい試算結果をシラッとリポートしています。要するに、日銀の国債買入れ縮小で長期金利に上昇圧力がかかる上に、財政リスクも高まるので財政再建、すなわち、増税または歳出カットを着実に進めねばならない、ということを主張しています。日銀で金利引上げで金融引締めを実施しつつ、政府では財政も引き締める、ということです。景気後退リスクを一気に高めるポリシー・ミックスといえます。いったい、何のためにこのようなポリシー・ミックスを追求しようというのでしょうか。円安を回避してインフレを抑制するため、ということなのでしょうか。私は、金利上昇により、銀行業界が利ざやを得やすくする意図があるのではないか、と疑っています。もしも、メガバンクの利益のために国民生活や事業会社の経営を犠牲にするのであれば大いに疑問、という気がしないでもありません。下のグラフは、大和総研のリポートから 図表3: シナリオ別の長期金利の見通し を引用しています。
最後に、大和総研のほかにも、私が目にした中で、SMBC日興証券からも同様のリポートをお送りいただいています。その分析では、長期金利は日銀の長期国債買い入れで▲1%ポイントほど押し下げられていると結論していて、市場の長期金利は1.5%超まで上昇すると試算し、そのあたりで安定すると仮定すれば、先行きの長期金利は政策金利次第、との見通しだそうです。ネットで広く公開されているリポートではなく、メールで個人宛に送られてきているので詳細は割愛します。
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