« 2か月連続で前月から上昇した景気動向指数をどう見るか? | トップページ | 今週の読書は経済書2冊をはじめ計6冊 »

2024年6月 7日 (金)

米国雇用統計に見る米国労働市場の過熱感払拭には時間がかかるか?

日本時間の今夜、米国労働省から4月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の前月差は直近の5月統計では+272千人増となり、失業率は前月から+0.1%ポイント上昇して4.0%を記録しています。まず、USA Today のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を中見出しを除いてやや長めに7パラ引用すると以下の通りです。

Today's jobs report: US economy added booming 272,000 jobs in May, unemployment at 4%
Hiring accelerated in May as employers added a robust 272,000 jobs despite stubborn inflation, high interest rates and intensifying household financial strains.
The unemployment rate, which is calculated from a separate survey, rose from 3.9% to 4%, the highest since January 2022, the Labor Department said Friday.
Economists had estimated that 185,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
Average hourly pay rose 14 cents to $34.91, pushing up the yearly increase to 4.1%.
Wage growth generally has downshifted as COVID-related labor shortages have eased, but it's still above the 3.5% clip that's consistent with the Federal Reserve's 2% inflation goal.
Many Americans, meanwhile, are benefiting because typical pay increases have outpaced inflation the past year, giving them more purchasing power.
The report will likely not be well received by a Federal Reserve looking for a slowdown in wage growth, which feeds into inflation.

いつもの通り、よく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルでは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門を、さらに、下は失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。NBERでは2020年2月を米国景気の山、2020年4月を谷、とそれぞれ認定しています。ともかく、2020年4月からの雇用統計からやたらと大きな変動があって縦軸のスケールを変更したため、わけの判らないグラフになって、その前の動向が見えにくくなっています。少し見やすくしたのですが、それでもまだ判りにくさが残っています。

photo

ということで、米国の雇用は非農業部門雇用者の増加が、ようやく、というか、何というか、ひとつの目安とされる+200千人を先月4月統計で下回りましたが、直近の5月統計では再び上回って272千人を記録しました。引用した記事の3パラ目にあるように、Bloomberg による市場の事前コンセンサスでは+185千人の雇用増を見込んでいましたので、大きく上振れた形です。ただ、失業率はわずかながら上昇して4.0%となっています。失業率は雇用統計の中では遅行指標とはいえ、心理的な影響も見逃せないところです。ただし、3月統計は前月差+315千人から+310千人に、また、4月統計も+175千人から+165千人に、それぞれ下方修正されています。しかし、米国労働市場の過熱感が払拭されるにはまだ時間がかかりそうです。
当然ながら、賃金の伸びもまだ高止まりを続けています。時間あたり賃金は5月統計では34.91ドルとなり、前年同月比で+4.1%の伸びを示しています。4月統計の+3.9%から伸びを高めているわけです。+2%のインフレ目標に相当する賃金上昇率は+3.5%と考えられており、まだ上回っている形です。ということで、下のグラフは米国の時間あたり賃金と消費者物価指数のそれぞれの前年同月比上昇率です。賃金の最新月は雇用統計と同じ5月ですが、消費者物価はまだ5月統計は公表されておらず、最新月は4月となっています。時間当たり賃金の伸びは緩やかな低下傾向にありますが、消費者物価上昇率な米国連邦準備制度理事会(FED)が目標とする+2%までは低下してきていません。次回の連邦公開市場委員会(FOMC)は来週の6月11~12日に開催される予定ですが、6月12日の消費者物価指数(CPI)の公表を受けて、どのような議論がなされるのでしょうか?

photo

|

« 2か月連続で前月から上昇した景気動向指数をどう見るか? | トップページ | 今週の読書は経済書2冊をはじめ計6冊 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 2か月連続で前月から上昇した景気動向指数をどう見るか? | トップページ | 今週の読書は経済書2冊をはじめ計6冊 »