大きく上昇幅が拡大した5月の企業物価指数(PPI)国内物価をどう見るか?
本日、日銀から5月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+2.4%の上昇となり、先月4月統計から大きく上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業物価指数、5月2.4%上昇 4カ月連続で伸び率拡大
日銀が12日発表した5月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は122.2と、前年同月比で2.4%上昇した。4月(1.1%上昇)から伸び率が1.3ポイント拡大した。4カ月連続で伸び率が拡大し、23年8月以来の高い伸びとなった。再生可能エネルギー普及のため国が電気代に上乗せしている賦課金や銅の価格上昇が押し上げ圧力となった。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。5月の上昇率は民間予測の中央値(2.0%上昇)より0.4ポイント高かった。
内訳をみると、電力・都市ガス・水道は燃料安を背景に前年同月比で7.4%下落し、4月(19.6%下落)からマイナス幅が大きく縮小した。
24年度からの再生エネ賦課金の値上がりは、指数全体で前年同月比0.7ポイントの押し上げ要因となった。銅を含む非鉄金属は20.7%上昇し、4月(11.8%上昇)から加速した。
いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
まず、引用した記事にあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+2.0%と見込まれていましたし、予想レンジの上限も+2.3%でしたので、このレンジを突破して上振れました。国内物価の上昇幅が拡大した要因は、政府による「電気・ガス価格激変緩和対策事業」が2月に終了した影響に加えて、引用した記事にある通り、再生可能エネルギー普及のため国が電気代に上乗せしている賦課金の影響もあります。すなわち、5月から再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価が、経済産業省の発表によれば1kw当たり3.49円と大幅に引き上げられます。引用した記事に従えば、再生エネルギー賦課金の影響が国内物価上昇率+2.4%のうちの+0.7%ポイントの押上げ要因となっています。また、輸入物価が2月から再び上昇に転じ、4-5月には+6%を越える上昇率となっています。もちろん、引用した記事にもある円安は決して無視できないのですが、原油価格の上昇も考慮すべきです。すなわち、企業物価指数のうちの輸入物価の原油価格の円建ての前年同月比を見ると、2023年12月に+3.0%と再上昇に転じた後、1月+10.4%、2月+7.9%、3月+7.8%、4月は+19.2%、5月+18.1%の上昇と大きく値上がりしています。我が国では、金融政策を通じた需給関係などよりも、原油価格のパススルーが極端に大きいので、国内物価にも無視し得ない影響を及ぼしている可能性があります。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、電力・都市ガス・水道が▲7.4%の下落とマイナスを続けているのですが、4月統計では▲19.6%でしたので、下落幅が大きく縮小しています。食料品の原料として重要な農林水産物は+0.1%とわずかながら5月統計から上昇に転じています。飲食料品は+3.1%と高い伸びを続け、ほかに、非鉄金属+20.7%、窯業・土石製品+5.5%、石油・石炭製品+6.8%、などといった費目で+5%以上の上昇率を示しています。そして、価格上昇がかなり幅広い費目に及んでおり、生産用機器+4.0%、はん用機器+3.1%、情報通信機器+2.6%、電気機器+2.1%、などが+2%超の上昇率となっています。ある意味で、企業間で順調な価格転嫁が進んでいると見ることも出来ます。
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