順調に増加を続ける5月の商業販売統計は基調判断が上昇改定される
本日、経済産業省から5月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.0%増の13兆5040億円を示し、季節調整済み指数は前月から+1.7%の上昇を記録しています。まず、ロイターのサイトなどから各統計を報じる記事を引用すると以下の通りです。
小売業販売5月は前年比3%増、ドラッグストア好調やガソリン値上げで
経済産業省が27日公表した商業動態統計速報によると、5月の小売販売額(全店ベース)は前年比3.0%増の13兆5040億円となり27カ月連続で増加した。プラス幅は4月の2.0%から拡大した。ドラッグストアの販売好調やガソリン値上げなどが押し上げた。
ロイター集計の民間予測中央値2.0%増を上回った。
<ドラッグストアの飲料・菓子好調、スーパーは節約志向影響>
業種別の前年比は、ホームセンターや園芸などを含むその他小売業が7.1%増、機械器具小売(家電量販含む)や無店舗小売(ネット通販含む)がそれぞれ5.3%増など。ドラッグストア内の食品販売も含まれる医薬・化粧品は5.1%増。ガソリン値上げが寄与し燃料小売り業も4.5%増だった。一方、自動車は3.3%減少した。
業態別の前年比は、百貨店13.7%増、ドラッグストア6.6%増、コンビニ1.3%増、スーパー1.2%増などとなった。
ドラッグストアは、スーパーなどより値下げ率の大きい飲料や菓子が伸びたほか、インバウンド需要含めスキンケアなど化粧品販売が好調だった。一部地域でのコロナ流行もあり調剤も伸びたという。
的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。
見れば明らかな通り、小売業販売は堅調な動きを続けています。季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、経済産業省のリポートでかなり機械的に判断している小売業販売額の基調判断は、本日公表の5月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+0.4%の上昇となりましたので、「緩やかな上昇傾向」と4月統計から上方改定されています。ただ、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、5月統計ではヘッドライン上昇率が+2.8%、生鮮食品を除くコア上昇率も+2.5%と、前年同月比で+2%台半ばから後半のインフレですので、小売業販売額の5月統計の+3.0%の前年同月比での増加は、インフレ率ギリギリです。したがって、実質的な消費はほとんど伸びていないと考えるべきです。考慮しておくべき点が2点あり、ひとつは、インフレにより名目販売額が膨らんでいる可能性です。もうひとつは、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより、部分的なりとも小売業販売額の伸びが支えられている可能性です。最初の点については、引用した記事にもある通り、「ガソリン値上げが寄与し燃料小売り業も4.5%増」と指摘しています。また、2番目の点についても、グラフは示しませんが、これもロイターの記事にある通り、国民生活に身近で頻度高い購入が想像されるスーパーやコンビニよりも、百貨店販売の伸びの方が大きくなっている点にインバウンド消費が現れている気がします。したがって、小売業販売額の伸びが国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性は考慮されるべきです。
| 固定リンク
コメント