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2024年6月19日 (水)

2か月連続の赤字を記録した5月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。統計のヘッドラインを季節調整していない原系列で見ると、輸出額が前年同月比+8.3%増の8兆9807億円に対して、輸入額は+8.3%増の9兆4432億円、差引き貿易収支は▲4625億円の赤字を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

貿易収支、5月は1兆2212億円の赤字 2カ月連続
財務省が19日発表した5月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆2212億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。自動車や半導体などの輸出が伸び、赤字幅は前年同月に比べて11.6%縮小した。
輸出額は8兆2766億円と13.5%増え、6カ月連続の増加となった。5月としては過去最高だった。輸入額は9兆4979億円で9.5%増えた。増加は2カ月連続。
輸出を品目別に見ると、自動車が13.6%増の1兆3129億円とけん引した。米国向けが好調だった。半導体関連の製造装置は45.9%増で、金額ベースで中国向けが55%を占めた。半導体など電子部品は24%増だった。
地域別に見ると米国が1兆7017億円と23.9%増、アジアが4兆4585億円で13.6%増だった。
円安や資源高により原油や石油製品などの輸入額は膨らんだ。品目別で見ると原油は9284億円で8.1%増えた。輸入量は8.5%減少しており、価格上昇による伸びが大きい。
原油はドル建て価格が1バレルあたり88.9ドルと前年同月から2.7%上がった。円建て価格は1キロリットルあたり8万6906円と18%上昇した。
地域別の輸入では米国が1兆2281億円と29.7%増えた。アジアは4兆4315億円で10%伸びた。
5月の貿易収支を季節調整値で見ると6182億円の赤字となった。赤字幅は前月比で6.3%拡大した。輸入は1.5%増の9兆5755億円、輸出は1.2%増の8兆9573億円だった。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲1兆2000億円を超える貿易赤字が見込まれており、実績の▲1兆2212億円はほぼジャストミートした印象です。また、引用した記事の最後のパラにあるように、季節調整済みの系列で見て、輸出入ともに前月比で増加した一方で、結果として貿易収支赤字は前月4月統計からやや拡大しています。なお、季節調整済み系列の貿易収支では、2021年6月から直近で利用可能な2024年5月統計まで、36か月連続の赤字を記録しています。いずれにせよ、私の主張は従来から変わりなく、輸入は国内の生産や消費などのために必要なだけ輸入すればよく、貿易収支や経常収支の赤字と黒字は何ら悲観する必要はない、と考えています。そして、これも季節調整済みの系列で見て、貿易収支赤字がもっとも大きかったのは2022年年央であり、2022年7~10月の各月は貿易赤字が月次で▲2兆円を超えていました。最近時点での▲5000~7000億円の貿易赤字は、特に何の問題もないものと考えるべきです。
5月の貿易統計について、季節調整していない原系列の前年同月比により品目別に少し詳しく見ておくと、まず、輸入については、原油及び粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入額が再び増加となっています。すなわち、引用した記事にもあるように、原油及び粗油は数量ベースで▲8.5%減ながら、金額ベースでは+8.1%増となっています。数量ベースの減少を超えた単価の上昇があり、輸入額が増加しているわけです。引用した記事の5パラ目にある通りです。LNGについても、数量ベースでは+5.6%増、金額ベースでも+9.1%増となっています。数量の伸びを超えて金額が増えていますから、単価が上がっていることがうかがわれます。これらのエネルギー価格については、ガザ地域における紛争の拡大など、地政学的なリスクが先行き不透明です。また、ある意味で、エネルギーよりも注目されている食料について、穀物類は数量ベースのトン数では+7.5%増ながら、金額ベースでは▲2.3%減となっていて、エネルギーと違って穀物については単価が下落していることが見て取れます。輸出に目を転ずると、引用した記事にもある通り、輸送用機器の中の自動車が輸出を牽引しています。季節調整していない原系列の前年同月比で見て、数量ベースの輸出台数は▲1.4%減とわずかに減少したものの、金額ベースでは+13.6%増と2ケタ増を記録しています。円安による円建て価格の上昇があったものと想像しています。すなわち、外貨建て、例えば、米ドル建ての価格が大きく変更ないならば円建ての輸出単価は膨らむわけで、その分、輸出額は増加します。自動車を含む輸送機械が金額ベースの前年同月比で+16.9%増を記録した一方で、一般機械も+9.8%増、電気機器も+16.9%増と我が国リーディング・インダストリーの輸出は先進各国のソフトランディングで堅調に推移しています。

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