インフレが加速した5月の消費者物価指数(CPI)をどう見るか?
本日、総務省統計局から5月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の統計で見て前年同月比で+2.2%を記録しています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は22か月連続、すなわち、2年あまりの連続です。ヘッドライン上昇率は+2.5%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+2.4%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
消費者物価、5月2.5%上昇 エネルギー関連が押し上げ
総務省が21日発表した5月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が107.5となり、前年同月比2.5%上昇した。電気代が14.7%と大幅に上昇した。再生可能エネルギー普及のため国が上乗せする賦課金を引き上げた影響が出た。
前月の2.2%上昇から伸びが拡大した。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.6%の上昇だった。2年9カ月連続で前年同月を上回った。
エネルギーの上昇率は7.2%と前月の0.1%から急拡大した。電気代が14.7%上昇となり、生鮮食品を除く指数の伸びを0.49ポイント押し上げた。16カ月ぶりにプラスに転じた。
電気代は物価高対策として進めてきた補助の影響で2023年2月以来、マイナスが続いていた。5月も補助事業による電気代の押し下げ効果がマイナス0.48ポイントあったものの、賦課金上昇の押し上げ効果が上回った。
補助事業は5月使用分から支援が半減し、6月使用分から支援がなくなる。電気代の家計への影響は今後さらに強まる。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は2.1%上がった。生鮮食品を含む総合指数は2.8%上昇した。
食料は4.1%上昇だった。オレンジの原産国における不作の影響で果実ジュースが28.5%上昇したほか、輸入品の牛肉も円安などの影響で7.4%上がった。食料の上昇幅は前月の4.3%からは縮小した。
宿泊料も14.7%伸びたものの、前月の18.8%からは上昇幅が縮小した。前年5月に5連休があり宿泊料を押し上げた反動が出た。
全品目をモノとサービスに分けたうちのサービスは1.6%上昇だった。外食が2.8%上昇した。前月はそれぞれ1.7%、2.9%の上昇で伸び率が縮んだ。
総務省の担当者は外食について人件費を価格転嫁する動きを指摘しつつ、伸び率が鈍化した背景について「食料の上昇幅が縮小した影響が出た」と説明した。
何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。
まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.6%ということでしたので、実績の+2.5%はやや下振れたとはいうものの、先月4月統計の+2.2%から見れば少し上昇幅が拡大した印象です。品目別に消費者物価指数(CPI)を少し詳しく見ると、まず、生鮮食料を除く食料の上昇が継続しています。すなわち、先月4月統計では前年同月比+3.5%、寄与度+0.83%であったのが、今月5月統計ではそれぞれ+3.2%、+0.76%と引き続き高い伸びを示しています。次に、エネルギー価格については、昨年2023年2月統計から前年同月比マイナスに転じていたのですが、今年2024年3月統計では前年同月比で▲0.6%まで下落幅が縮小し、4月統計ではとうとう+0.1%と上昇に転じ、本日公表の5月統計では+7.2%まで上昇が加速しています。ヘッドライン上昇率に対する寄与度も4月統計の+0.01%から+0.54%まで拡大しています。4月統計から5月への上昇幅拡大の+0.3%ポイントを超える大きな寄与となっています。特に5月からインフレを大きく押し上げたのは電気代であり、ヘッドライン上昇率に対する寄与で何と+0.47%に達しています。これも引用した記事で指摘されている通りであり、今月5月から再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2024年度以降の買取価格等と2024年度の賦課金単価が、経済産業省のプレスリリースによれば1kw当たり3.49円と大幅に引き上げられているわけで、その影響が大きく物価に出ています。
食料について細かい内訳をヘッドライン上昇率に対する寄与度で見ると、コアCPI上昇率の外数ながら、生鮮食品が野菜・果物・魚介を合わせて+0.38%あり、うち生鮮野菜が+0.27%、生鮮果物が+0.13%の寄与をそれぞれ示しています。繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料の寄与度が+0.76%あります。コアCPIのカテゴリーの中でヘッドライン上昇率に対する寄与度を見ると、調理カレーなどの調理食品が+0.13%、うるち米などの穀類も+0.13%、せんべいなどの菓子類もやっぱり+0.13%、焼肉などの外食が+0.10%、飲料が+0.07%、などなどとなっています。サービスでは、外国パック旅行費などの教養娯楽サービスの寄与度が+0.35%、宿泊料も相変わらず+0.15%の寄与を示しています。
今春闘の賃上げを見ると、経団連による大手企業の集計では+5.58%に達しているものの、同じ経団連でも中小企業では+3.92%にとどまっており、連合の集計では+5.08%に達している一方で、これらの数字はほぼほぼ正規雇用に限定されていると考えられます。非正規雇用については、中央最低賃金審議会の議論が6月25日から始まる予定になっています。果たして、幅広い国民の実質所得は増加するのでしょうか。注目したいと思います。
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