日本のジェンダーギャップを生活時間から考える
6月12日に世界経済フォーラム(WEF)から今年度2024年版の「ジェンダーギャップ報告書」Global Gendaer Gap Report 2024 が明らかにされて、先週金曜日のこのブログでも取り上げたところですが、私自身はいつも注目しているのは男女の生活時間の差です。世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ報告書」の少し前に、国際通貨基金(IMF)から IMF Gender Notes "Promoting Gender Equality and Tackling Demographic Challenges" が公表されています。もちろん、pdfファイルもアップロードされています。まず、引用情報は以下の通りです。
とても長いのですが、IMFのサイトからサマリーを引用すると以下の通りです。
Summary
Two broad contrasting demographic trends present challenges for economies globally: countries with aging populations, often advanced economies and increasingly emerging markets, anticipate a significant shrinking of the labor force, with implications for growth, economic stability, and public finances. Economies with rapidly growing populations, as is the case in many low-income and developing countries, will face a burgeoning young population entering the labor market in the next decades-a large potential to reap the demographic dividend if the right skills and economic and social conditions are in place. This note highlights how gender equality, in both cases, can serve as a stabilizing factor to rebalance demographic trends. As decisions regarding fertility, human capital investment, and labor force participation are interlinked, policies should aim at relaxing households’ time and resource constraints that condition these choices. This means that, in general, in advanced economies and emerging markets, policies should facilitate women’s work-life choices and boost female participation in the labor market, whereas policies in low-income and developing countries should focus on reforms that narrow gender gaps in opportunities and support human capital accumulation.
人口動態的に考えて、日本をはじめとする先進国など、高齢化が進んで労働力の減少が見込まれる国と低所得国や発展途上国など、人口が急速に増加する国において、"This note highlights how gender equality, in both cases, can serve as a stabilizing factor to rebalance demographic trends." どちらのケースでも男女平等が人口動態のトレンドのバランスを取り戻すための安定化要因として重視すべき、という結論です。私がとても興味を持ったのは男女間の生活時間の差であり、リポート p.13 から Figure 8. Time Use Gap (Male-Female) by Country by Activity, Minutes per Day を引用すると以下の通りです。
黄色い棒グラフが家事で代表される無償労働=unpaid work であり、青いのが有償労働・学習=paid work or study です。男性から女性を差し引いていますので、有償労働のようにマイナスになっているのは女性が多くの時間を割いていて、プラスは逆に男性に多く割り当てられている、という意味です。日本では女性が無償労働に従事し、男性が外で働いて稼ぐ、という形になっています。無償労働と有償労働・学習の差はそれぞれ1日当りで180分=3時間ほどにもなります。この差が小さくて、したがって、グラフの下の方に位置している北欧3か国でも1日当り数十分あるのは事実ですが、日本ではこの差が北欧と比べると約3倍となっています。したがって、日本は生活時間から見て男女間の格差が極めて大きい国といわざるを得ません。
この時間利用の男女差については、日本政府でも十分に認識されていて、私が授業で使っているグラフは上の通りなのですが、実は、2020年度の「男女共同参画白書」 p.45 図表1 男女別に見た生活時間(週全体平均)(1日当たり、国際比較) を引用しています。特に強調しているのは無償労働の男女比であり、先進国とは思えないほど女性に偏っていて、男性比5倍超の無償労働を女性は余儀なくされている、というのが読み取れます。
先週金曜日にはクズネット教授による世界各国の4分法を紹介しましたが、すでに3分法になっていて、日本とアルゼンチンは同じグループなのかもしれません。
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