3か月ぶりの前月比減を記録した4月の機械受注をどう見るか?
本日、内閣府から4月の機械受注統計の結果が公表されています。統計のヘッドラインについては、民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注が、季節調整済みの系列で見て前月比▲2.9%減の8,863億円となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。
4月の機械受注2.9%減 3カ月ぶり、基調判断据え置き
内閣府が17日発表した4月の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前月比2.9%減の8863億円だった。マイナスは3カ月ぶりだった。3月の製造業の一時的な受注増加の反動があったとみられる。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は3.0%減だった。基調判断は「持ち直しの動きがみられる」とし、前月から据え置いた。2~4月の3カ月平均でみると受注額は増加基調を維持していることを踏まえた。
製造業は11.3%減の4194億円で、3カ月ぶりの減少だった。17業種中、9業種が前月から減少した。
発注した業種ごとにみると「造船業」が79.7%減った。エンジンなど内燃機関や船舶などが押し下げた。汎用コンピューターなどを発注する「電気機械」は18.9%減だった。造船業を中心に3月は大型案件などがあり、大きく増えた反動で4月は減少した。
「自動車・同付属品」は6.8%増だった。足元は増加基調が続いている。6月にはトヨタ自動車やマツダなどの型式指定を巡る認証不正問題が新たに発覚した。内閣府の担当者は今後の影響について「今後注視する必要がある」と指摘した。
非製造業は5.9%増の4753億円で、2カ月ぶりに増えた。業種別では「金融業・保険業」からの受注が54.9%増で全体を押し上げた。
SMBC日興証券の薗部亮・エコノミストは「企業のデジタル化の推進を背景に、電子・通信機械の受注が増加しやすいとみられる」と指摘する。
「運輸業・郵便業」は15.6%増だった。道路車両や運搬機械などが押し上げた。「農林漁業」は26.6%増えた。
包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。
まず、引用した記事の最後にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比▲3.1%減でしたので、ほぼ実績も予想通りとなっています。引用した記事では「3.0%減」とありますが、日経新聞のサイトでは「3.1%減」の記事しか見つかりませんでした。念のため。
上のグラフで見ても、2月統計と3月統計の2か月連続の増加の後ですので、4月統計の前月比減を受けても、6か月後方移動平均でまだ増加トレンドとなっています。したがって、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いています。ただ、先行きが問題ないわけではなく不安が残っています。すなわち、コア機械受注の4~6月期の見通しは前期比で▲1.6%減の2兆5,810億円であり、製造業▲2.0%減、非製造業(除く船舶・電力)▲4.0%減といずれも減少すると見込まれています。また、引用した記事でも指摘していますが、自動車産業の認証不正の影響も何とも見通せません。ついでながら、グラフは示しませんが、四半期データでコア機械受注の達成率を見ると2023年7~9月期95.0%、10~12月期93.1%、そして、今年2024年1~3月期92.1%とジワジワと低下してきています。エコノミストの経験則として、この達成率が90%を下回ると景気後退局面入りのシグナル、と見なす向きもあります。
何度も繰り返していますが、景気回復局面もかなり後半の部ですので、欧米先進国がソフトランディングに成功するとしても、国内の政策要因、すなわち、金融引締めの強化や海外要因、例えば、中国の景気動向などから景気局面が転換して景気後退に陥る可能性は今や警戒水準に入った、と考えるべきです。
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