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2024年6月 6日 (木)

1-3月期GDP統計速報2次QEは1次QEから小幅の改定か?

今週月曜日の法人企業統計をはじめとして、必要な統計がほぼ出そろって、来週6月10日に1~3月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である1~3月期ではなく、足元の4~6月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。いつものように、みずほリサーチ&テクノロジーズからは長々と引用してしまいました。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.5%
(▲2.0%)
n.a.
日本総研▲0.9%
(▲3.6%)
成長率は前期比年率▲3.6%(前期比▲0.9%)と、1次QE(前期比年率▲2.0%、前期比▲0.5%)からマイナス幅が拡大すると予想。ただし、春以降の緩やかな景気回復見通しには変更なし。
大和総研▲0.3%
(▲1.0%)
2024年1-3月期GDP2次速報(QE)(6月10日公表予定)では実質GDP成長率が前期比年率▲1.0%と、1次速報(同▲2.0%)から上方修正されると予想する。主因は民間在庫であり、前期比寄与度が+0.2%ptから+0.4%ptへと上方修正されるとみている。1次速報段階で仮置きされていた原材料在庫は減少する一方、電気機械や自動車・同附属品、運輸業、郵便業などの業種における仕掛品在庫の増加が寄与するだろう。
個人消費は3月分の基礎統計の実績が反映されるものの、1次速報値から変わらないとみている。設備投資は、1-3月期の法人企業統計の結果が反映されるものの、伸び率は据え置かれる見込みだ。また、政府消費は1次速報段階で公表されていなかった1、2月分の医療費実績が反映されるものの、1次速報値から変わらないと予想する。公共投資においては仮置きとなっていた3月分の実績が反映され、伸び率は前期比+4.6%へ上方修正されるだろう。
以上を受け、内需の前期比寄与度は0.0%ptと1次速報(▲0.2%pt)から上方修正されると予想する。2次速報では、一部自動車メーカーでの大幅減産もあって消費や輸出が下振れする一方、在庫の積み上がりが内需寄与度を押し上げると想定される。他方、サービス輸出における前期からの反動減といった特殊要因が成長率を抑制した姿が再確認されるだろう。
みずほリサーチ&テクノロジーズ▲0.5%
(▲2.1%)
一時的な下押し影響が一服する4~6月期は、プラス成長に転じるとみられる。自動車生産が持ち直すことに加え、春闘賃上げの効果が徐々に顕在化することが押し上げ要因になるだろう(ただし、自動車生産については、昨年末以上に稼働率を引き上げる余地は小さく、一時的な下押しが顕在化する前の水準には回復するとしても、それ以上の大幅な挽回生産は見込みにくい。4月時点の自動車生産は普通自動車が小幅に減少するなど想定より回復が鈍い印象であり、一部自動車メーカーの生産停止も重石になっているとみられる点には留意が必要だ)。
2024年の春闘については、高水準で推移する企業収益や人手不足の深刻化等を受けて、前年を大きく上回る賃上げ率が実現しそうな状況だ。連合構成組合の賃上げ回答(第5回集計)は5.17%と前年(2023年度同時期3.67%)を大幅に上回る高水準になっており、筆者が想定していた以上に強い数字だ(組合員数300人未満の中小企業も4.66%と第4回から下方修正されたものの、依然として高水準で「奮闘」しており、これも想定外の強さである)。人手確保を目的に中小企業でも賃上げに取り組む企業の裾野が広がっていることを確認できる内容であり、最終集計も前年を大きく上回る水準(賃上げ率は5%台、ベアは3%台)で着地する蓋然性が大きくなっている。高水準の賃上げ率を背景に、所定内給与も4月以降徐々に伸び率を高め、実質賃金は改善に向かうことが見込まれる(ただし、大企業中心の連合集計値と比して毎月勤労統計は中小企業の割合が高いため、名目賃金の伸び率はやや抑制される可能性が高い点には留意が必要である)。6月には定額減税が実施されるほか、生産回復に伴う自動車の国内販売持ち直し等も受けて、4~6月期の個人消費は増加に転じると予測している。
ただし、各種物価押し上げ要因により、物価上昇率が当面高止まることで賃上げによる押し上げ効果が減殺されてしまう点には注意が必要だ。再生可能エネルギー賦課金の引き上げや政府による電気代・ガス代支援策の終了を背景にエネルギー価格の再上昇が見込まれるほか、賃上げに伴う人件費の上昇はサービス物価を中心に物価押し上げ要因になる。いわゆる「2024年問題」の影響もあって運送業の人手不足深刻化により物流費の上昇が見込まれることに加え、昨秋以降の円安や原油価格上昇に伴う輸入物価再上昇によるコストプッシュ(いわゆる「第1の力」)が食料品など財価格の下げ渋りにつながる公算が大きくなっており、コアCPIベースのインフレ率は夏場にかけて前年比+2%台後半~+3%前後で推移する可能性が高まっている。持ち家の帰属家賃除く総合ベースでCPIは前年比+3%台前半~;半ば程度まで高まる可能性があり、実質賃金の前年比マイナスは当面継続すると見込まれることから、個人消費の回復ペースも抑制される可能性が高い(実際、内閣府「消費動向調査」における消費者態度指数は「暮らし向き」を中心に4月・5月と2か月連続で悪化しており、足元で生鮮食品の価格が高騰していることに加えて、円安進展や電気代上昇等を受けたインフレ再加速への懸念が家計の消費マインドを悪化させていることが示唆される)。また、サービスや半耐久財については、前述した1~3月期のうるう年要因の反動減が押し下げに働く可能性が高い点にも留意が必要だ。
設備投資についても、4~6月期はプラスに転じるとみている。日銀短観3月調査における2024年度の設備投資計画(全規模合計・全産業、ソフトウェア・研究開発を含む)は前年比+4.5%と、3月調査時点としては高い伸びとなった。資材価格高騰等を受けて2023年度に実行しきれなかった投資が2024年度に繰り越された面もあるが、自動車や化学、生産用機械(半導体製造装置含む)等では過去の実績を大きく上回る設備投資計画になっており、旺盛な企業の設備投資意欲が確認できる内容だ。先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)をみても、1~3月期は前期比+4.4%と4四半期ぶりに増加している。需要業種別にみると、はん用・生産用機械器具、情報通信機械器具、電気機械器具向けの受注が大幅に増加しており、半導体関連産業やEV関連産業(電池等)向けの投資意欲が高まっている可能性が高いだろう。後述の海外経済減速が重石になる一方、DX・GX関連投資や人手不足対応の省力化投資も顕在化することで、先行きの設備投資は回復基調で推移するとみている。
輸出については、自動車生産の持ち直しが押し上げ要因になる一方、海外経済の減速が財輸出の逆風になるだろう。米国経済は、良好な雇用所得環境を背景に個人消費など内需は堅調な推移が続いている。それでも、これまでの金融引き締めの影響が企業部門を中心に徐々に顕在化することで、2024年前半にかけて景気は緩やかな減速基調で推移すると予想している。足元の経済指標をみると、後述のとおり雇用統計で労働需給の緩和が示唆されていることに加え、4月の実質個人消費は前月比▲0.1%と小幅に減少するなど、景気減速を示唆する材料も出てきている。大幅な減速には至らないとみているが、ここにきて金融引き締めの効果が徐々に顕在化しつつあるように思える。欧州経済については、実質賃金回復を背景に足元で個人消費に底打ちの兆しがみられる点が好材料である一方、金融引き締め効果の顕在化を受けて、2024年前半は軟調に推移する可能性が高い。中国企業との競争激化などを受けて低迷が長期化する自動車を中心に、生産の回復は鈍い状況だ。特にドイツでは、安価なロシア産ガスからの切り替えに伴う採算性の悪化等を受けた構造的な競争力の低下が今後も生産回復の足かせとなる可能性が高い。中国経済は、4月の小売売上高は横ばい、固定資産投資は小幅マイナスで推移するなど、内需は弱い動きが続いている。不動産市場は販売・投資ともに底ばいの動きが継続しているほか、新築住宅価格は前月比▲0.6%とマイナス幅が拡大しており、住宅価格下落に歯止めがかかっていない。政府は地方国有企業に住宅在庫の買い取りを促す支援策を発表したが、対策規模からすると在庫縮減等の効果は大きくないとみられる。シリコンサイクルについても、足元の半導体市場(出荷額)の回復は生成AI向け半導体の値上がり等による単価上昇が押し上げに寄与している面が大きく、PC・スマホなど最終製品の需要回復が遅れていることが日本の半導体関連輸出の重石になる可能性が高い。
こうした海外経済・シリコンサイクルの動向を踏まえれば、財輸出の力強い回復は当面期待しにくい。実際、4月の輸出数量をみると、欧州向けを中心に自動車が持ち直しているほか、半導体製造装置も均してみれば回復基調を維持している一方で、集積回路は2カ月連続の減少と盛り上がりに欠ける状況である(足元で特に中国向けの輸出が落ち込んでいる)。電子部品・デバイスの出荷内訳をみても、国内向け出荷に比べて輸出向け出荷の回復が鈍く、半導体関連輸出に過度な期待は禁物と言えよう。機械受注(外需)をみても、1~3月期は前期比▲4.7%と弱含んでおり、先行きの資本財輸出も伸び悩む可能性があるだろう。
一方、インバウンド需要の回復は継続が見込まれる。夏場にかけて航空便数が拡大する見込みであり、円安傾向が継続すれば先行きも訪日外客数は緩やかな増加基調が続く可能性が高い。ただし、訪日外客数については、中国からの訪日外客数は持ち直しの動きが継続しているものの全体としては増勢が一服しつつあるほか、一人当たり消費単価についても平均泊数(観光・レジャー目的)が徐々に縮小するなど、高水準ながらも回復ペースが鈍化する可能性が高い。また、中国方面の定期航空便数は2019年対比6割程度にとどまっており、中国からの訪日外客数が今後伸び悩んだ場合は訪日外客数全体の回復ペースが鈍いものになる可能性がある点には留意が必要だ。
さらに、政府の「デフレ完全脱却のための総合経済対策」、並びにその財源として成立した2023年度補正予算を受けて、防災・減災、国土強靭化の推進に係る公共事業が4~6月期も一段と進捗することが見込まれる。先行指標となる1~3月期の公共工事請負金額(みずほリサーチ&テクノロジーズによる季節調整値)は前期比+11.0%と大幅に増加しており、公共投資は増加傾向で推移しよう。
以上を踏まえ、4~6月期の日本経済は、海外経済の減速が輸出を下押しするものの、自動車生産が持ち直すほか、高水準の企業収益が賃金・設備投資に回ること等により内需が持ち直し、年率+2%程度のプラス成長になると現時点で予測している。
ニッセイ基礎研▲0.5%
(▲1.9%)
24年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.5%(前期比年率▲1.9%)と予想する。1次速報の前期比▲0.5%(前期比年率▲2.0%)とほぼ変わらないだろう。
第一生命経済研▲0.5%
(▲2.1%)
先行きについては緩やかな持ち直しを予想している。1-3月期はマイナス成長となったが、4-6月期は自動車生産の正常化に伴ってリバウンドが予想され、プラス成長になるだろう。その先も、24年後半に実質賃金のプラス転化が見込まれることが下支えになり、個人消費は緩やかに持ち直すだろう。製造業部門の下押しが弱まることや底堅い企業収益を背景として設備投資も緩やかに増加する可能性が高い。これまで景気の足を引っ張ってきた内需に持ち直しの動きが出ることで、景況感も徐々に改善に向かうと予想する。
もっとも、物価上昇による実質購買力の抑制が消費の頭を押さえる状況は残る。①再エネ賦課金引き上げや負担軽減策終了によるエネルギー価格大幅上昇や、円安、人件費増分の価格転嫁が進むことで物価が上振れ、実質賃金の増加幅が限定的なものにとどまる可能性があること、②実質賃金の増加が貯蓄に回るリスクがあること、③コロナ禍からのリバウンドは既に終了していることなどを踏まえると、消費の先行きには不透明感が大きい。景気は先行き改善を見込むも、加速感が出るには至らないとみている。
伊藤忠総研▲0.5%
(▲2.1%)
1~3月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比▲0.5%(年率▲2.1%)と1次速報から若干下方修正の見通し。設備投資が大幅下方修正されるが、民間在庫投資や公共投資は上方修正される見込み。企業業績は好調、労働分配率は下げ止まりつつあり、今後は家計所得増による個人消費拡大と設備投資の復調に期待。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.6%
(▲1.6%)
2024年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比-0.6%(前期比年率換算-2.6%)と 1次速報値の前期比-0.5%(年率換算-2.0%)から下方修正される見込みである。ただし、1次速報からの修正は小幅であり、内需低迷を背景に景気が足踏み状態にあるとの判断を変更するほどの内容ではない。
三菱総研▲0.4%
(▲1.6%)
2024年1-3月期の実質GDP成長率は、季調済前期比▲0.4%(年率▲1.6%)と、1次速報値(同▲0.5%(年率▲2.0%))から上方修正を予測する。
明治安田総研▲0.5%
(▲2.0%)
1-3月期の実質GDP成長率は、能登半島地震や一部自動車メーカー等の認証不正問題に伴う出荷停止の影響もあって、2四半期ぶりのマイナスとなる可能性が高まった。もっとも、日本経済の先行きの見通しは改善しつつある。まず個人消費は、春闘における高めの賃上げが段階的に給与に反映されることや、定額減税など政府の経済対策が追い風となり、持ち直しに向かうと予想する。設備投資は、シリコン・サイクルの好転で半導体製造装置や半導体材料の増産のための投資が増加することなどが下支え要因になると見込む。輸出に関しては、中国景気の停滞が持続するほか、欧米景気の減速の影響で財輸出は低迷が予想される。ただし、インバウンド需要は引き続き下支え要因となるとみられ、2024年度の景気は回復基調で推移すると予想する。

多くのシンクタンクで強調されているように、設備投資が下方改定、在庫が上方改定ですので相殺して大きな変更はなし、という形になろうかと私も考えています。おそらく、わずかながらも上方改定であろうという気がするのですが、仕上がりがどうなるかは判りかねます。先行き日本経済について、基本的には、私も多くのシンクタンクと同じように、回復基調が継続されるものと期待していますが、リスクが2点あります。第1に、インフレのリスクです。エネルギーが高止まりしていて、さらに価格上昇が加速するようですと、コストプッシュインフレが続くとともに、日本政策投資銀行のリポートで指摘しているように、賃上げの転嫁ではなく企業の利潤拡大行動に伴ったインフレであるとすれば、消費が盛り上がらない危険が十分あります。第2に、自動車の認証不正問題です。ダイハツに端を発して、国土交通省が自動車工業各社に調査を指示した結果として把握されたようです。例えば、日経新聞のサイトによれば、トヨタについては年間13万台を生産する宮城大衡工場と岩手工場の計2ラインを当面停止すると報じられていますが、詳細が不明で現時点では評価のしようがありません。ダイハツだけでも1~3月期にあれほどのインパクトあったわけですので、業界トップのトヨタをはじめとして、ホンダ、マツダ、スズキ、ヤマハ発動機の5社に及ぶようですから、何とも計り知れません。私自身は先進各国のソフトランディングはほぼほぼ確定と考えていますが、この2点については下振れリスクを顕在化させる可能性が否定できません。。
最後に、下のグラフはみずほリサーチ&テクノロジーズのリポートから引用しています。

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