上昇幅がまたまた拡大した6月の企業物価指数(PPI)をどう見るか?
本日、日銀から6月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で+2.9%の上昇となり、先月5月統計からさらに上昇幅が拡大しました。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業物価指数、6月2.9%上昇 5カ月連続で伸び率拡大
日銀が10日発表した6月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は122.7と、前年同月比で2.9%上昇した。5月(2.6%上昇)から伸び率が0.3ポイント拡大した。5カ月連続で伸び率が拡大し、23年8月以来の高い伸びとなった。電気・ガスの補助金が6月検針分から半減した影響が大きかった。
企業物価指数は企業間で取引するモノの価格動向を示す。サービス価格の動向を示す企業向けサービス価格指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。6月の上昇率は事前の民間予測の中央値(2.9%上昇)と同じだった。
内訳をみると、電力・都市ガス・水道が政府の補助金減少により前年同月比で0.1%上昇し、5月(7.2%下落)から大きく伸びた。石油・石炭製品もガソリン補助金の減少を背景に4.5%上昇した。木材・木製品は人手不足を背景に建築着工が弱含み、国内需要が減少した影響で2.1%下落した。
円安を背景に円ベースの輸入物価指数は前年同月比9.5%上昇し、23年2月(15%上昇)以来の伸びとなった。契約通貨ベースでは前年同月比0.3%上昇と23年3月以来初めてプラスに転じた。
半減した電気・ガスの補助金は8~10月に再開される。今後の企業物価指数の押し下げ要因になる。
いつもながら、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価指数(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率をプロットしています。また、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事にはありませんが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内企業物価の前年同月比上昇率は+2.9%と見込まれていましたのでジャストミートし、サプライズはありませんでした。国内物価の上昇幅が拡大した要因は、引用した記事にもある通り、政府による電気・ガスの補助金の影響です。6月検針分から補助金が半減し、8~10月には復活の予定です。また、輸入物価が2月から再び上昇に転じ、本日公表の6月統計では+9.5%の上昇と2ケタ近くに達しています。引用した記事にもあるように、契約通貨ベースでの上昇を超えて円建て価格が上昇しています。ただし、原油価格の上昇も考慮すべきです。すなわち、企業物価指数のうちの輸入物価の原油価格の前年同月比を見ると、直近の6月統計では契約通貨建てで+9.1%、円建てで+22.0%の上昇と大きく値上がりしています。我が国では、金融政策を通じた需給関係などよりも、原油価格のパススルーが極端に大きいので、国内物価にも無視し得ない影響を及ぼしている可能性があります。
企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価を品目別の前年同月比上昇率・下落率で少し詳しく見ると、電力・都市ガス・水道が6月には+0.1%と5月の▲7.2%の下落から上昇に転じています。食料品の原料として重要な農林水産物も5月の+0.2%から6月は+1.2%と上昇幅を拡大しています。したがって、飲食料品は+2.8%と高い伸びを続け、ほかに、非鉄金属+19.4%、石油・石炭製品と窯業・土石製品がともに+4.5%、などといった費目で高い上昇率を示しています。そして、価格上昇がかなり幅広い費目に及んでおり、生産用機器+3.9%、電気機器+3.0%、情報通信機器+3.1%、はん用機器+3.0%、などの我が国リーディングインダストリーで+3%以上の上昇率となっています。ある意味で、企業間で順調な価格転嫁が進んでいると見ることも出来ます。
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