東京商工リサーチによる「想定為替レート」の調査結果やいかに?
やや旧聞に属するトピックかもしれませんが、先週6月28日、東京商工リサーチから「想定為替レート」に関する調査結果が明らかにされています。調査はアンケートではなく、期首想定為替レートを開示資料などをもとに集計してコラムに取りまとめています。まず、東京商工会議所のサイトから 期初ドル想定為替レート推移 のグラフを引用すると以下の通りです。一昨日7月1日に公表された日銀短観でも想定レートが対米ドルで140円台半ばだったのですが、この東京商工リサーチの調査結果でもよく似た水準が策定されている印象です。
上のグラフからも明らかな通り。2020年の新型コロナウィルス感染症(COVID-19)パンデミックでは為替の想定は何ら影響を受けなかったのですが、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機とするエネルギー価格や穀物価格などの上昇に伴い、想定為替レートも大きく円安に触れています。輸入額の増加による円の減価が招いた結果であると考えるべきです。
他方で、東京商工リサーチのコラムでは、「円安の行き過ぎによるマイナス面の影響も無視できない。円安で輸入材や原料価格が高止まりするなかで、中小・零細事業者はコストアップ分の価格転嫁も容易でない」と指摘しつつ、同時に、「輸出比率の高い大手メーカーにとって、円安ドル高は業績の押し上げ効果を生む」と強調しています。すなわち、この調査の対象は、3月期を決算とし、東京証券取引所に上場する主な電気機器、自動車関連、機械、精密機器メーカー109社なのですが、2024年3月期の業績動向で、「増収増益」が過半の58社に対して、「減収減益」は21社にとどまるとリポートしています。
現在の対ドル160円の為替水準は、私自身はやや円安が行き過ぎているという印象を持ちますが、果たして、どの水準の為替レートが適切であるのか、また、それは市場で決定されるべきのか、それとも、何らかのスムージング・オペレーションも含めて、政府が市場に介入すべきなのか、どこまで議論されているのか、私には不明です。EBPMならざる印象論で突き進むだけでいいのでしょうか。
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