2か月連続で上昇した7月の景気ウォッチャーと大きな黒字が続く6月の経常収支
本日、内閣府から7月の景気ウォッチャーが、また、財務省から6月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.5ポイント上昇の47.5となった一方で、先行き判断DIも+0.4ポイント上昇の48.3を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+1兆5335億円の黒字の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから記事を引用すると以下の通りです。
街角景気7月は0.5ポイント上昇、2カ月連続プラス 判断は維持
内閣府が8日に発表した7月の景気ウオッチャー調査は現状判断DIが47.5となり、前月から0.5ポイント上昇した。インバウンド需要や夏休みシーズンの旅行・観光が景況感を押し上げている一方、物価高が押し下げ要因となっている。猛暑は好悪両面に影響が出ている。
現状判断DIは2カ月連続で上昇したが、景気判断は「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」で維持した。伸びが小幅だったことなどを踏まえた。
指数を構成する3部門はいずれも上向き。家計動向関連DIは0.2ポイント上昇の47.2、企業動向関連は1.4ポイント上昇の48.7、雇用関連は0.9ポイント上昇の47.1となった。
回答者からは「インバウンドの増加や夏休みに伴う需要により高稼働が続いている」(近畿=都市型ホテル)、「タオルの店頭販売が最も多くなる時期であり、今年も順調。特にインバウンド向け、土産品として手軽に購入できる小物の発注が多い」(四国=繊維工業)といったコメントが出ていた。
一方、「商品、サービスの値上がりが続き、節約志向がさらに強まっている」(東北=スーパー)、「用紙、インク代などの消耗資材価格が高騰。受注率も低下している(南関東=出版・印刷・同関連産業)との指摘もあった。
猛暑は、エアコンやアイスクリームなど季節商材の販売に追い風。定額減税やボーナス商戦で高額の耐久消費材の売れ行きもいいという。もっとも、気温が高くなったことで外出を控える動きなどマイナス面の影響もある。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは前月から0.4ポイント上昇の48.3と、2カ月連続で上昇した。内閣府は先行きについて「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」とした。
調査期間は7月25日から31日。
経常収支6月は1兆5335億円の黒字、予想下回る黒字幅
財務省が8日発表した国際収支状況速報によると、6月の経常収支は1兆5335億円の黒字だった。ロイターが民間調査機関に行った事前調査の予測中央値は1兆7897億円程度の黒字で、公表された黒字幅は予想を下回った。
経常収支のうち貿易収支は黒字幅を拡大した。貿易収支を含む貿易・サービス収支は1805億円の黒字に転じた。第1次所得収支の黒字は1兆4737億円で、前年同月からは黒字幅を縮小した。第2次所得収支は1207億円の赤字だった。
併せて発表した2024年1月から6月までの暦年上期の経常黒字は12兆6817億円に積み上がった。
やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。
景気ウォッチャーの現状判断DIは、昨年2023年年末11~12月から今年2024年2月まで50を超える水準が続いていましたが、5月統計で45.7の底となった後、6月統計では47.0、本日公表の7月統計では47.5に上昇しています。長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、現在の水準は決して低くない点には注意が必要です。引用した記事にもあるように、7月統計では家計動向関連・企業動向関連・雇用関連の3部門ともに上昇しています。家計動向関連では、飲食関連では前月から低下し、小売関連も前月から横ばいでしたが、サービス関連と住宅関連は前月から上昇しています。小売関連は先行き判断DIもさらに落ちると予想されていて、インフレの影響がまだ残っているのか、猛暑で出歩かない影響も含めて、賃上げや定額減税の効果がまったく見られない印象です。企業動向関連では、家計部門での飲食関連や小売関連の停滞にもかかわらず、非製造業が前月から+2.5ポイント上昇したものの、製造業が▲0.2ポイント低下し、企業動向関連として+1.4ポイントの上昇を示しています。ただし、先行き判断DIでは製造業・非製造業ともに上向きの方向が予想されています。引用した記事にあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」で据え置いています。先行きについては、猛暑効果や定額減税への期待が見られると考えるべきです。
また、内閣府のリポート「景気の現状に対する判断理由等」の中から、百貨店業界で定額減税や賃上げに言及したものを取り上げると、「今月の売上はほぼ前年どおりで推移しているが、前年と比較して土曜日、日曜日がそれぞれ1日少ないため、やや下回る見通しである。天候の影響もあるが、買上客数が減少していることが要因である。4月からの再エネ賦課金引上げによる電気代の値上げなどにより客の節約志向がより一層強まっており、6月実施の定額減税効果もみられない(東京都)」といった見方がある一方で、「定額減税の実施やボーナス支給額の増加などの影響で、週末の客の動きが活発になっており、特に高額商品が好調である(東北)」といった見方もあり、私の直感的な印象ながら現在や賃上げは効果が小さい、といった意見が多かった気がします。
続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。引用した記事にもある通り、市場の事前コンセンサスは経常黒字は+1.8兆程度の黒字でしたので、実績の+1兆5335億円は予想をやや下回ったものの、大きなサプライズはありませんでした。6月時点では円安が進んでいましたので経常黒字が大きく膨らんでいます。しかし、貿易収支は季節調整済みの系列で見ると相変わらず赤字を計上しており、円安にもかかわらず赤字が縮小したにとどまっています。もちろん、経常収支にせよ、貿易収支にせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はなく、資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常赤字や貿易赤字は何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。加えて、先月7月2日に「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」報告書が公表されていますが、国際収支や経常収支に関して、それほど騒ぎ立てる必要もないと私は受け止めています。
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