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2024年8月19日 (月)

金利引上げ局面における機械受注の動向やいかに?

本日、内閣府から6月の機械受注統計の結果が公表されています。民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から+2.1%増加し8,761億円となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

4-6月の機械受注0.1%減、2四半期ぶりマイナス
内閣府が19日発表した4~6月期の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前期比0.1%減の2兆6202億円だった。2四半期ぶりのマイナスになった。
船舶と電力を除く非製造業は3.7%減だった。製造業は2.8%増えた。
7~9月期の受注額見通しは前期比0.2%増だった。見込み通りなら2四半期ぶりのプラスとなる。
6月単月の民需は前月比2.1%増の8761億円だった。3カ月ぶりのプラスになった。QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は0.9%増だった。「持ち直しの動きに足踏みがみられる」との基調判断を据え置いた。

包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+0.9%増でしたので、実績の+2.1%増は予想レンジの上限+3.0%増の範囲ながら、やや上振れした印象です。したがって、というか、何というか、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いています。設備投資については、日銀短観などで示されている企業マインドとしての意欲は底堅い一方で、設備投資が実行されているかどうかは、GDP統計や本日公表された機械受注などには一向に現れていません。すなわち、投資マインドと実績の乖離が激しくなっています。その理由について、私は十分には理解できていません。これだけ人手不足が続いている中で、設備投資の伸びもなく、したがって、DXやGXが進まないとすれば、日本企業は大丈夫なかどうか、とても不安が残ります。
すなわち、単月での振れの激しい統計ですので、コア機械受注を季節調整済みの系列で四半期でならして見ると、昨年2023年7~9月期の前期比▲1.4%減の2兆5458億円、10~12月期▲1.3%減の2兆5133億円、今年2024年に入って1~3月期+4.4%増の2兆6236億円、4~6月期▲0.1%減の2兆6202億円を記録しましたが、7~9月期の受注見通しは+0.2%増となっていて、2四半期連続でほぼほぼ横ばいと考えるべきです。ただし、四半期データとして公表されている達成率はコア機械受注で見て、まだ90%を少し上回っています。エコノミスト業界の経験則として、景気後退局面入りのひとつのシグナルである90%を下回るところまでは落ちていません。

私は従来から、米国経済がリセッションに陥ることなくソフトランディングに成功すれば、日本経済もそうそう簡単に景気後退にはならない、と主張してきましたが、日銀が利上げの方向を強く示唆し、年内にも再利上げがあると仮定すれば、米国経済がリセッションにならなくても、日本経済が勝手に景気後退局面を迎える可能性がある、と少し考えを改めつつあります。消費もさることながら、設備投資はより金利に敏感なことは多くのエコノミストのコンセンサスがあるところですので、先行きの動向を占う上で重要な指標となります。都合により、統計公表直後のファーストショットでポストしておきます。

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