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2024年8月14日 (水)

4-6月期GDP統計速報1次QE予想を考える

必要な統計がほぼ出そろって、明日、4~6月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である4~6月期ではなく、足元の7~9月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.5%
(+1.9%)
7~9月期の実質GDPも、内需主導で緩やかなプラス成長が続く見通し。春闘で妥結された賃上げの適用が広がることで、7~9月期には実質賃金が増加に転じると予想。所得環境の改善により個人消費が持ち直すほか、好調な企業収益を支えに設備投資も堅調に推移する見込み。
大和総研+0.6%
(+2.3%)
2024年7-9月期の日本経済は2四半期連続のプラス成長を見込んでいる。賃上げや定額減税による所得環境の改善や自動車の増産などが個人消費を押し上げよう。また、企業の高い投資意欲などを背景に設備投資も堅調に推移するとみられる。
個人消費は、持ち直しが加速すると予想する。2024年春闘賃上げ率は33年ぶりの高水準となったが、所定内給与に夏場にかけて反映されることや、定額減税が6~7月に集中して実施されることなどが所得環境を改善させるだろう。2年超にわたってマイナス圏で推移してきた実質賃金の前年比は、7-9月期にはプラスへと転じる見込みだ。また、国内の自動車生産体制がおおむね正常化したことで、今後は受注残に対応するための自動車の増産にも期待がかかる。受注残に相当する自動車のペントアップ(繰越)需要は、家計向けだけでも6月末で約25万台(約0.7兆円)と推計され、依然として高水準にある。
住宅投資は減少傾向が続くとみられる。住宅価格の高騰が続く中、持家を中心に軟調な推移が続く公算が大きい。
設備投資は増加が続くと予想する。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)によると、6月調査時点における2024年度の設備投資計画(全規模全産業、除く土地、含むソフトウェア・研究開発)は前年度比+10.6%だった。6月調査時点としては比較的高水準を維持しており、企業の投資意欲は引き続き旺盛だ。2024 年度にはこれまで先送りしてきた更新投資や能力増強投資、人手不足に対応するための省力化投資などが徐々に発現しよう。デジタル化、グリーン化に関連したソフトウェア投資や研究開発投資も底堅く推移するとみられる。
公共投資は減少するとみられる。「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の執行が下支えする一方、4-6月期に大きく増加した反動が表れよう。政府消費は医療費の増加などを受けて、小幅に増加するとみられる。 輸出は増加が続くと予想する。財輸出は、前述した自動車の増産やシリコンサイクルの回復局面入りなどを受けて増加しよう。サービス輸出は、インバウンド消費が堅調に推移する一方で、4-6月期に好調だった一部の業務用サービスにおける反動減などもあって減少するとみられる。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+0.7%
(+2.7%)
7~9月期も、海外経済減速が外需の重石になる一方で、個人消費や設備投資を中心に日本経済は回復が続く見通しだ。現時点で、年率+1%前半程度のプラス成長を予測している。
前述したとおり、高水準の賃上げ率を背景に、名目賃金(所定内給与)は夏場にかけて伸び率が一段と高まる可能性が高いことに加え、消費者物価については政府による「酷暑乗り切り緊急支援」を受けて電気代・ガス代の前年比上昇率が再び低下するため、実質賃金は改善に向かうことが見込まれる(9~10月頃には実質賃金は前年比プラスに転じると予測している)。夏のボーナスは高い伸びとなる見込みであるほか、政府による定額減税の効果も加わり、個人消費は増加傾向が継続すると予測する(なお、定額減税の効果については、減税分の2~3割が消費に回ると想定して2024年度GDPを0.1%程度押し上げると試算している。低所得世帯は相対的に限界消費性向が高いと考えられる一方、所得税の減税分を控除し切るまでに時間がかかるため、減税による効果が年度後半まで分散される点には留意が必要だ)。ただし、食料品等の身近な品目を中心とした物価上昇継続への懸念から家計の節約志5 向が高止まりすることが引き続き個人消費の回復ペースを下押しする要因になる見込みだ(例えば、旅行大手の調査によると、夏休みの総旅行者数(国内+海外)は前年比▲4.1%、総旅行消費額も前年比▲3.2%と減少が見込まれおり、旅行内容についても物価高が続く中で短日数・近場を志向する傾向が強まっている模様である)。
設備投資についても、前述したように2024年度の設備投資計画は堅調であり、資材価格高騰の一服等が先行きの押し上げ要因になるだろう。先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)をみると4~5月は1~3月期平均対比でほぼ横ばい圏にとどまっているが、前述したように1~3月期が増加した反動が出た面もあるだろう。中期的な観点からは、中国・アジアの人件費上昇に伴う生産拠点としてのコスト優位性の低下、米中対立の深刻化・地政学的リスクの高まり(経済安全保障への関心の高まり)を背景としたグローバル・サプライチェーンの見直し、さらには近年の円安進行等が国内投資シフトを後押ししている面もあると考えられる。内閣府「企業行動に関するアンケート調査」(上場企業が調査対象)をみると、今後3年間の設備投資見通しは全産業で年度平均+6.8%と1990年(同+7.9%)以来の高い伸びとなっている。精密機械や輸送用機械等を中心に広がりつつある国内生産拠点の強化の動きが設備投資の持続的な押し上げ要因になろう。
一方、外需については当面力強い伸びは期待しにくい。海外経済の減速が引き続き財輸出の逆風になるだろう。米国経済は、個人消費や設備投資はいまだ堅調を維持しており、景気や雇用の大幅な悪化を伴う「ハードランディング」を懸念する状況ではないとみている。それでも、既往の金融引き締めの影響が企業部門(特に小売・レジャー・宿泊等の低生産性業種)を中心に徐々に顕在化することで、2024年後半にかけて緩やかな減速基調で推移すると予想している。家計部門についても、低所得層は高金利・インフレに加えて雇用環境の軟化が重石になり、個人消費が下押しされるだろう(7月地区連銀経済報告(ベージュブック)では「低所得層が低価格帯の小売業者を選ぶようになった」との報告もみられ、足元で消費者の価格志向は一段と高まっている模様である)。足元でハイテク株を中心に株価が急落していることも個人消費の下押し要因になり得るだろう。欧州経済については、7月のユーロ圏総合PMIをみると50.1と2か月連続で悪化しており、特に製造業の不振が継続している。先行きは、実質購買力の回復継続と利下げの影響を受けて年後半にかけて経済活動は徐々に回復に向かうとみられるものの、海外への生産拠点移管に伴うドイツを中心とした生産能力の低迷等を受けて、回復ペースは緩やかなものにとどまるだろう。7月の消費者信頼感は前月から小幅な改善にとどまり未だにコロナ禍前を下回る水準で低迷しており、長引く景6 気下振れ懸念が消費者マインドの重石になっているとみられる。さらに、中国経済は雇用・所得環境の低迷が個人消費を下押しする状況が続く見通しだ。現状は価格抑制を通じた輸出攻勢で内需の弱さを補う構図となっているが、EU・米国による対中輸入関税引上げ等の外圧やマージン圧縮による企業収益の悪化が輸出ドライブの減衰要因になるだろう。不動産不況の長期化も相まって、年後半も景気減速が続く見通しだ(なお、国家発展改革委員会・財政部による耐久消費財買い替え・設備更新の促進策拡大については既存財源を転用するものであり景気押し上げ効果は限定的であるとみられる)。こうした海外経済の動向を踏まえると、財輸出の力強い回復は当面期待しにくいだろう。
一方、インバウンド需要の回復は継続が見込まれる。夏場にかけて航空便数が拡大する見込みであり、円安傾向が継続すれば先行きも訪日外客数は緩やかな増加基調が続く可能性が高い。ただし、訪日外客数については、中国等からの訪日外客数は持ち直しの動きが継続しているものの全体としては増勢が徐々に一服しつつあるほか、一人当たり消費単価についても平均泊数(観光・レジャー目的)の縮小などを通じて高水準ながらも回復ペースが鈍化する可能性が高いだろう。
ニッセイ基礎研+0.8%
(+3.0%)
2024年4-6月期のプラス成長は、1-3月期の大幅な落ち込みの反動の側面が強く、景気が一進一退の状態から抜け出したとは言えない。日本経済の回復を確認するためには、7-9月期以降の動向を見極める必要がある。現時点では、7-9月期の実質GDPは6月に開始された所得税・住民税減税による可処分所得の増加が民間消費を押し上げることを主因として、前期比年率2%台後半のプラス成長を予想している。
第一生命経済研+0.6%
(+2.3%)
先行きについては、景気の緩やかな持ち直しを予想する。24年春闘での大幅賃上げが夏にかけて実際の給与に反映されることで、賃金上昇率は高まる可能性が高い。実質賃金も24年秋以降にはプラス転化が見込まれ、個人消費を取り巻く環境は徐々に改善するだろう。製造業部門の下押しが弱まることや底堅い企業収益を背景として設備投資も増加する可能性が高い。
もっとも、回復ペースはあくまで緩やかなものにとどまる。実質賃金はプラス転化するものの、物価の高止まりが続くことの影響で増加幅は抑制される可能性が高い。加えて、物価高の影響で消費マインドは停滞が続いており、実質賃金の増加や減税分の多くが貯蓄に回るリスクもある。コロナ禍からのリバウンドは既に終了していることもあり、消費の持ち直し度合いは限定的なものにとどまるだろう。景気は先行き改善を見込むも、加速感が出るには至らないとみている。
PwC Intelligence+0.5%
(+1.9%)
経済見通しを改定し、実質GDPは2024年度+0.1%、2025年度+0.8%を見込む。上記の2024年4-6月期GDP1次速報の予測、足元の経済状況に加えて、前回日本経済見通し第10号の出版後に公表された2024年1-3月期2次速報改定値の内容を含んでいる。2024年度は前回+0.5%から今回+0.1%へと0.4%ポイントの下方修正とした。要因の一つは輸出の減少である。
伊藤忠総研+1.0%
(+4.0%)
続く2024年7~9月期は、賃金上昇が一段と進む一方で物価上昇は鈍化、実質賃金が増加し、消費者マインドが改善、個人消費の拡大が加速しよう。設備投資は各種調査で今年度の強気の計画が確認されており、計画が実行に移されることで増加に転じる見込み。輸出は米国を中心に海外景気の減速が予想されるため伸び悩むものの、実質GDP成長率は内需主導で前期比プラス成長を維持すると予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.2%
(+0.6%)
2024年4~6月期の実質GDP成長率(1次速報値)は、前期比+0.2%(前期比年率換算+0.6%)となり、2四半期ぶりのプラス成長に転じたと予想される。物価高によって節約志向が高まっているものの、一部自動車メーカーの品質不正問題によって停止していた自動車生産が回復したことに加え、賃金増加等による所得の改善を受けて個人消費が5四半期ぶりに前期比プラスに転じた可能性が高い。また、好調な業績を背景に企業の設備投資も増加したと考えられる。
三菱総研+0.5%
(+1.8%)
2024年4-6月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.5%(年率+1.8%)と、プラス成長転換を予測する。
明治安田総研+0.6%
(+2.5%)
先行きについては、賃金上昇に加え、秋口以降の物価上昇率鈍化に伴う実質所得のプラス転換が個人消費を押し上げると予想する。設備投資は、シリコン・サイクルの好転で半導体製造装置や半導体材料の増産のための投資需要増加が追い風になるとみる。一方、外需に関しては、当面軟調な推移が続くと見込む。インバウンドは引き続き下支え要因になるとみられるが、財輸出は中国景気が力強さを欠くことなどから低迷持続が見込まれ、2024年後半の日本景気の回復ペースは緩やかなものにとどまると予想する。

なお、テーブルにはありませんが、日経・QUICKが取りまとめた市場の事前コンセンサスは前期比年率で+2.3%と報じられています。テーブルを見れば明らかな通り、三菱リサーチ&コンサルティングがもっとも低い予想となっていて、それでも前期比+0.2%、前期比年率+0.6%のプラス成長と見込んでいます。もっとも高い成長を予想しているのは伊藤忠総研であり、年率で+4.0%となっています。私自身は直感的に前期比年率で+3%前後と考えています。ただし、今回の4~6月期にはほとんど影響はありませんが、金融政策が明らかに引締めに向かっていますし、為替相場も円高が続いていますので、金融政策の波及ラグを考えても、遅くとも年明けには金利引上げが成長率の重荷となるだろうと考えるべきです。もしも、今年中の12月とか、来年2025年早々に金利の再引上げがあれば、さらに先行き成長率の下押し要因となることはいうまでもありません。ただ、米国をはじめとする海外経済が景気後退を避けられるのであれば、すなわり、ソフトランディングに成功するのであれば、少なくとも、我が国が勝手に景気後退に陥ったとしても、経済へのダメージはそれほど大きくない可能性もゼロではありません。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研究所のリポートから引用しています。

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