「経済財政白書」を読む
先週金曜日8月2日に「経済財政白書」が公表されています。副題は「熱量あふれる新たな経済ステージへ」とされています。もちろん、pdfでもアップロードされています。まず、章立ての構成は以下の通りです。
- 第1章
- マクロ経済の動向と課題
- 第1節
- 実体経済の動向
- 第2節
- デフレに後戻りしない経済構造の構築
- 第2章
- 人手不足による成長制約を乗り越えるための課題
- 第1節
- 高まる人手不足感と企業部門の対応
- 第2節
- 労働移動に係る現状と課題
- 第3節
- 我が国における外国人労働者の現状と課題
- 第3章
- ストックの力で豊かさを感じられる経済社会へ
- 第1節
- 家計の金融資産投資構造の現状と課題
- 第2節
- 住宅ストックの展望と課題
- 第3節
- 高齢者就業の現状と課題~知識と経験のストック活用に向けて~
全文で400ページをはるかに上回るボリュームですので、すべてに目を通すのは少し時間かかるような気もしますが、取りあえず、2点だけ図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、上のグラフは「経済財政白書」p.110から、第1-2-20図 仕入価格判断DIと販売価格判断DIの関係 を引用しています。横軸には仕入れ価格判断DI、縦軸には販売価格判断DIが、それぞれ取られています。業種別に、加工系製造業、素材系製造業、非製造業に分割されていますが、いずれも、デフレ期には単純に下方シフトしているだけでなく、縦軸の切片が低下するとともに、傾きも緩やかになっています。最近時点の2020年以降では、デフレ期の状態からデフレ前の状態に戻ってきているのが見て取れます。これは、価格転嫁がデフレ以前に戻りつつあると考えられます。加えて、グラフは引用しませんが、サービス業でも人件費が販売価格に転嫁されつつあると結論されています。
次に、上のグラフは「経済財政白書」p.294から、第3-3-4図 主要国の高齢者の労働参加率 を引用しています。第2章で人手不足による成長制約を分析した後、第3章では金融資産や住宅ストック、さらに、労働における高齢者などの知識と経験のストックを論じていますが、私が従来から主張しているように、日本ではすでに高齢者雇用がかなり進んでおり、韓国はともかく、主要な先進国の中では我が国の65-74歳の高齢者の労働参加率は際立って高い点を忘れるべきではありません。この高齢者の労働参加率の高さの背景には、高齢者の就業意欲の高さとともに、「経済財政白書」では決して指摘しませんが、所得の不足、生活の貧しさが一定の影響を及ぼしている可能性も否定できません。
今朝、銀行のATMで預金を引き下ろすと、初めて新券が出てきました。昨日の夕立では、スーパーのレジで支障が出て、電卓で計算して現金払いのみ、というところがあったように聞き及んでいます。さすがに法貨 legal tender は強い、と感じてしまいました。
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