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2024年8月27日 (火)

やや上昇幅が縮小した7月の企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から7月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月からさらに加速して+2.8%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIについても同様に+2.7%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、7月2.8%上昇 人件費転嫁続く
日銀が27日発表した7月の企業向けサービス価格指数(2020年平均=100)は107.5と、前年同月比で2.8%上昇した。6月(3.1%上昇)から伸び率が0.3ポイント縮小し、2カ月ぶりの縮小となった。幅広い分野で価格改定が進んだ前年7月の反動で伸び率が縮小した。
ただ人件費転嫁の動きが続き、前月比では0.3%上昇した。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格動向を表す。例えば貨物輸送代金や、IT(情報技術)サービス料などで構成される。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともに今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
内訳をみると、宿泊サービスは前年同月比で13.5%上昇し、6月(26.8%上昇)から伸び率が大きく縮小した。インバウンド(訪日外国人)需要は堅調だが、前年7月に多くの自治体で全国旅行支援が終了し、価格が上昇した反動が出た。
ソフトウエア開発は2.7%上昇した。人件費の価格への転嫁が進んだ。一方で、人件費や機材費などの価格転嫁が進んだ前年7月の反動で6月(3.6%上昇)から伸び率が縮小した。
調査品目のうち、生産額に占める人件費のコストが高い業種(高人件費率サービス)は2.7%上昇し、低人件費率サービスも2.7%上昇した。調査対象の146品目のうち、価格が前年同月比で7月に上昇したのは114品目、下落は19品目だった。

もっとも注目されている物価指標のひとつですから、長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格のとサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、上昇率としては2023年中に上昇の加速はいったん終了した後、最近時点で再加速が見られ、PPI国内物価指数の前年同月比上昇率は7月統計で+3.0%を示しています。他方、その名の通りのサービスの企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準として一貫して上昇を続けているのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、昨年2023年7月に+2%まで加速し、今年2024年6月統計では+3.1%まで加速した後、本日公表された7月統計では+2.8%にやや上昇率が縮小しています。1年超の13か月連続で日銀物価目標である+2%以上の伸びを続けているわけです。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、本日公表の企業向けサービス価格指数(PPI)とは構成要素が大きく異なります。しかいs,いずれにせよ、+2%前後の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性があります。加えて、真ん中のパネルにプロットしたうち、モノの物価である企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価のグラフを見ても理解できるように、企業向けサービス価格指数(SPPI)で見てもインフレ率は高いながら、物価上昇がさらに加速する局面ではない可能性が高い、と私は考えています。また、人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率と高人件費比率のサービスの違いに大きな差はありません。引用した記事の通り、7月統計の前年同月比で見て、高人件費率サービスも低人件費率サービスもいずれも+2.7%の上昇となっています。ですので、引用した日経新聞の記事のタイトルの「人件費転嫁」というのは大きく間違っているわけではありませんが、人件費率に関係なく価格上昇が見られる点は忘れるべきではありません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて7月統計のヘッドライン上昇率+2.7%への寄与度で見ると、機械修理や宿泊サービスや宿泊サービスなどの諸サービスが+1.35%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分を占めています。人件費以外も含めてコストアップが着実に価格に転嫁されているというのが多くのエコノミストの見方ではないでしょうか。ただし、諸サービスのうちの宿泊サービスは前年同月比で7月統計では+13.7%の上昇と、6月統計の+26.8%から大きく縮小しています。加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている石油価格の影響が大きい道路貨物輸送や外航貨物輸送や旅行サービスなどの運輸・郵便が+0.44%、ほかに、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスといった情報通信が+0.33%、景気敏感項目とみなされている広告も+0.24%、などとなっています。

直感的には、消費者物価指数(CPI)上昇率も、企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内物価上昇率も、そして、本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)上昇率も、いずれも7月統計は前月6月統計を下回っていることは事実です。日本経済研究センター(JCER)が実施しているESPフォーキャストの8月調査結果によれば、消費者物価指数の上昇率はおおむねジワジワと縮小していって、ほぼ1年後の2025年7~9月期には日銀物価目標の+2%を下回ると予想されています。物価上昇が再加速するよりも、緩やかにインフレが収束する方向を見込んでいるエコノミストが多いのだろうと私は受け止めています。

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