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2024年8月22日 (木)

リクルートワークス研究所「『日本型雇用』のリアル」を読む

一昨日8月20日に、リクルートワークス研究所から「『日本型雇用』のリアル」と題するリポートが明らかにされています。Global Career Survey 2024 によって得られたデータを基にした分析です。まず、このリポートでは、いわゆる「日本型雇用」として以下の7点を上げています。


1
新卒一括採用
2
企業主導の人事異動
3
年功型賃金
4
OJTによる育成
5
幹部の内部登用
6
終身雇用
7
企業別労働組合

通常、特に1950-60年代の高度成長期に完成したと考えられている「日本型雇用」の大きな特徴は、上のテーブルでいう3と6と7の3点、すなわち、年功型賃金、終身雇用(長期雇用)、企業内組合であり、私は授業では第1の新卒一括採用もあわせて説明することもあります。
順に見ていくと、第1の新卒一括採用は、日本では大学(大学院)を卒業する前」と「大学(大学院)卒業後すぐ」を合わせて80%超を占めていて、これに次ぐドイツがせいぜい60%強ですので、新卒一括採用は日本の雇用の特徴といえる、と結論しています。続いて、企業主導の人事異動についても、「業務命令」による職種変更や勤務地変更の可能性と経験率からみて、日本の雇用の特徴といえる、と結論しています。ただし、第3の点である年功型賃金は日本の雇用の特徴といえない、と結論しています。

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上のグラフはリクルートのリポートから 【図表13】年収推移(年齢5歳刻み) を引用しています。見れば明らかですが、年齢や勤続年数に応じて年収が上昇する傾向は日本だけの特徴ではない上に、むしろ上昇のカーブが緩やかとすらいえるわけです。続いて、第4のOJTによる育成は日本の雇用の特徴ではない、また、第5の幹部の内部登用日本の雇用の特徴といえる、とそれぞれ結論しています。興味深いのは、第6の終身雇用は日本の雇用の特徴といえる、と分析しています。

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上のグラフはリクルートのリポートから 【図表21】今の会社の勤続年数(年代別、男女年代別) を引用しています。見れば明らかですが、勤続年数は10年以上の割合で見て中国を別にすれば欧米各国と比較して日本がもっとも長くなっています。最後に、企業別労働組合は日本の雇用の特徴といえる、と結論しています。日本では労働組合員のうち95%超が企業内労働組合に加入しているとのデータを示しており、まあ、私も企業内組合以外の組合員は見たことがありません。

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上のグラフはリクルートのリポートから 【図表26】7つの特徴からみた、日本の雇用の全体像 を引用すると上の通りです。私が重要と考える「日本型雇用」の4点、すなわち、新卒一括採用・年功型賃金・終身雇用(長期雇用)・企業別労働組合は合わせて30%余りを占めています。他方で、7つのポイントすべて当てはまらない雇用も40%強に上っています。

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上のグラフはリクルートのリポートから 【図表27】日本型雇用の7つの特徴の実態 を引用しています。本リポートのサマリといえます。

最後に、「日本型雇用」のいくつかの特徴のうち、少なくとも、終身雇用(長期雇用)と年功型賃金は補完的関係煮ると私は考えています。ただ、このリポートによれば、終身雇用(長期雇用)は日本型雇用に当てはまっている一方で、年功型賃金はそうではない、と結論しています。私は反対に年功型賃金はまだ日本的雇用の特徴のひとつだと考えています。しかし、現在の日本の賃金が余りに伸び悩んでいる、というか、まったく伸びなくなっているために、年功型賃金に見えずに横ばいで推移しているように見えているだけなのではないか、と考えていたりします。

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