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2024年8月15日 (木)

年率+3.1%成長となった4-6月期GDP統計1次QEをどう見るか?

本日、内閣府から4~6月期GDP統計速報1次QEが公表されています。季節調整済みの系列で前期比+0.8%増、年率換算で+3.1%増を記録しています。2四半期ぶりのプラス成長です。なお、なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+3.6%、国内需要デフレータも+2.6%に達し、7四半期連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質GDP3.1%増 4-6月、消費上昇で2四半期ぶりプラス
内閣府が15日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.8%増、年率換算で3.1%増だった。2四半期ぶりのプラス成長となった。自動車の品質不正問題の影響が一巡し、個人消費や設備投資が持ち直した。
QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値の年率2.3%増を上回った。4~6月期の名目GDPは年換算で607兆円となり、初めて600兆円に達した。前期比1.8%増、年率換算で7.4%増と2四半期ぶりのプラスだった。
GDPの半分以上を占める個人消費は実質で前期比1.0%増で5四半期ぶりのプラスだった。ダイハツ工業などの品質不正の影響で止まっていた生産や出荷が再開し、前期からの反動で自動車の消費が回復した。
内閣府の担当者は「個人消費の上昇分の半分は自動車が占める」と説明した。自動車以外の耐久財でエアコンや携帯電話が堅調だったほか、外食や衣服向けの消費も上昇に寄与した。野菜や証券関連手数料など金融サービスはマイナスだった。
収入の動きを示す雇用者報酬は実質で前年同期比0.8%増加し、11四半期ぶりにプラスに転じた。国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比3.0%上昇した。
消費に次ぐ民需の柱である設備投資も0.9%増と2四半期ぶりにプラスに転じた。ダイハツ工業の問題が解消し、商用車など普通乗用車向けの投資が増えた。業務用コンピューターやソフトウエア投資も伸びた。
輸出は1.4%増と2四半期ぶりに増加した。自動車の出荷が増えた。計算上は輸出に分類するインバウンド(訪日外国人)の日本国内での消費は前期比で4.2%のマイナスだった。イースター休暇が3月末までだったことが影響したとみられる。
輸入は前期比1.7%増で2四半期ぶりのプラスだった。業務用コンピューターが増えた。
前期比年率の寄与度は内需がプラス3.5ポイント、外需がマイナス0.4ポイントだった。内需のプラス寄与は5四半期ぶり、外需のマイナス寄与は2四半期連続となる。
民間住宅は1.6%増加した。貸家着工の増加が影響したとみられる。民間在庫変動の寄与度はマイナス0.1ポイントだった。公共投資は前期比4.5%増で4四半期ぶりに上昇した。政府最終消費は医療費の増加などで0.1%増えた。
実質GDPは前年同期比では0.8%のマイナスだった。伊藤忠総研の武田淳氏は「前期までの落ち込みの反動の域を脱していない」と指摘した。個人消費について「自動車生産の正常化によるところが大きく特にサービスが弱いため回復と言える状況にはない」と指摘した。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2023/4-62023/7-92023/10-122024/1-32024/4-6
国内総生産GDP+0.6▲1.0+0.1▲0.6+0.8
民間消費▲0.8▲0.3▲0.3▲0.6+0.8
民間住宅+1.4▲1.2▲1.1▲2.6+1.6
民間設備▲2.1▲0.1+2.1▲0.4+0.9
民間在庫 *(▲0.1)(▲0.5)(▲0.1)(+0.3)(▲0.1)
公的需要▲0.9+0.1▲0.4+0.1+0.8
内需寄与度 *(▲1.1)(▲0.7)(▲0.1)(▲0.1)(+0.9)
外需(純輸出)寄与度 *(+1.7)(▲0.3)(+0.2)(▲0.5)(▲0.1)
輸出+3.2+0.1+3.0▲4.6+1.4
輸入▲4.1+1.3+2.0▲2.5+1.7
国内総所得 (GDI)+1.1▲0.6+0.1▲0.7+0.8
国民総所得 (GNI)+1.4▲0.7+0.2▲0.6+1.3
名目GDP+2.0▲0.1+0.7▲0.2+1.8
雇用者報酬 (実質)▲0.4▲0.6+0.1+0.3+0.8
GDPデフレータ+3.7+5.2+3.9+3.4+3.0
国内需要デフレータ+2.7+2.5+2.1+2.3+2.4

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4~6月期の最新データでは、前期比成長率がプラス成長を示し、灰色の在庫と黒の純輸出がマイナス寄与しているほかは、赤の消費をはじめとしてGDPの国内需要項目の多くのコンポーネントが軒並みプラス寄与しているのが見て取れます。

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まず、引用した記事にある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前期比年率で+2.3%のプラスでしたから、予想レンジの上限が+3.0%とはいうことでしたので、やや上振れしたと私は受け止めています。季節調整済み系列の前期比伸び率で見て、GDP+0.8%増のうち、内需寄与度が+0.9%、外需寄与度が▲0.1%ですから、まあ、何と申しましょうかで、前期1~3月期から今期4~6月期への変化で見れば内需主導の成長といえます。また、外需のマイナス寄与についても、輸出入ともに伸びている中で、輸入の伸びが輸出を上回った結果としての純輸出のマイナス寄与です。内需では、特に、GDPコンポーネントとして最大シェアを占める消費が+0.6%の寄与を示しています。ただ、後のグラフで見るように、雇用者報酬が4~6月期は前期から見て増加したとはいえ、ここまで水準として低くなっている点には今後の先行きを考える上で注意すべきだろうと私は考えています。広く報じられている通り、1~3月期のマイナス成長の大きな要因であった自動車の品質不正問題に端を発する工場閉鎖や自動車の売行き不振から、4~6月期は反動によるプラス成長、と考えるべきです。従来から、私は日本経済が自動車のモノカルチャーに近い印象を持っていましたが、まさに、この私の印象を裏付ける形で悪い面が出てしまった気がします。今さらながらに、生産面での自動車産業のすそ野の広さや波及効果の大きさを実感し、需要面でも幅広い消費に及ぼす影響の強さを再認識させられた思いです。私自身としては、60歳の定年まで東京で公務員をしていて、公共交通の便利さから自動車とは縁遠く、逆に、住宅に同じような影響力の強さを感じていたのですが、やっぱり、自動車のモノカルチャーかもしれないと思い直しています。

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続いて、上のグラフはGDPデフレータ、消費デフレータ、国内需要デフレータのそれぞれの季節調整していない原系列データの前年同期比をプロットしています。影をつけた部分は景気後退期です。GDP統計の需要項目については季節調整済み系列の前期比や前期比年率で見るのに対して、伝統的に、デフレータ項目は季節調整していない原系列の前年同期比で見ることになっています。私には理由は不明ですが、あるいは、同じように季節調整していない原系列の前年同期比で見る消費者物価指数になぞらえているのかもしれません。ということで、上のグラフで見る通り、GDPデフレータで見たインフレは昨年2023年7~9月期にピークアウトしたようですし、消費デフレータや国内需要デフレータに基づくインフレは、さらにもう1四半期早い2023年4~6月期にピークアウトしているようです。ただ、GDPデフレータはまだ前年同期比+3.0%の上昇となっていますし、消費デフレータや国内需要デフレータでもまだ+2.4%のインフレです。日銀の物価目標は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除くコアCPIで+2%ですから、計測基準が異なるとはいえ、物価上昇率は低下しているとはいえ、まだ、インフレは高止まりしていると考えるべきです。

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最後に、上のグラフは雇用者報酬の推移と非居住者家計の購入額、すなわち、インバウンド消費の推移をプロットしています。このそれぞれのグラフの傾きを見ると、消費を中心とする国内需要よりもインバウンドの方に先行き見込みがありそうな気がする人も少なくないかと思います。でも、グラフの縦軸をよく見てみれば理解がはかどるかもしれません。スケールがまったく異なるわけです。すなわち、2023年度に国内消費は322.9兆円、家計消費だけでも314.9兆円に達しています。最新データの4~6月期には国内の家計消費が72,719.9十億円に対して、インバウンドは1,527.7十億円にとどまっています。インバウンドは国内家計消費の2.1%にしか過ぎないわけです。もちろん、業種や地域性などさまざまな要因に左右されますが、マクロ経済政策として家計消費とインバウンドのどちらに重点を置くべきかということは明らかであろうと私は考えます。現在の岸田総理大臣が退陣することは広く報じられていますが、こういったマクロ経済政策の要点を理解する人に総理大臣になって欲しいと私は考えています。

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