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2024年9月 5日 (木)

毎月勤労統計に見る賃金の伸びやいかに?

本日、厚生労働省から7月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ね、このブログでも長らくパスしていたんですが、先月から久しぶりに取り上げています。統計のヘッドラインとなる名目の現金給与総額は季節調整していない原数値の前年同月比で▲3.2%減の54万6607円となっており、景気に敏感な所定外労働時間は季節調整済みの系列で前月から+2.5%増となっています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

7月実質賃金0.4%増、2カ月連続プラス 夏ボーナス伸び
厚生労働省が5日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上の事業所)によると、名目賃金から物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月から0.4%増加した。プラスは2カ月連続。夏の賞与など「特別に支払われた給与」の伸び率が大きかったことが寄与した。
名目賃金を示す1人あたりの現金給与総額は3.6%増の40万3490円と、2年7カ月連続で増加した。伸び率は7月の消費者物価の上昇率(3.2%、持ち家の家賃相当分を除く総合指数)を上回った。現金給与総額のうち特別に支払われた給与は6.2%多い11万8807円だった。
厚労省によると、6月から7月にかけて夏季賞与を支払う企業が増えた可能性があるという。賞与は6月に支給する企業が多く、7月の実質賃金のプラス幅は前月から0.7ポイント縮小した。
現金給与総額の内訳では、基本給を中心とする「所定内給与」が前年同月比2.7%増の26万5093円となった。ベースアップ(ベア)と定期昇給を合わせた賃上げ率が平均5%を超えた24年の春季労使交渉(春闘)の結果が反映されて伸び率は31年8カ月ぶりの大きさとなった。
所定内給与に残業代や休日手当などを加えた「きまって支給する給与」は2.5%増の28万4683円だった。8月以降は名目賃金に占める賞与の割合が小さくなる。厚労省の担当者は「このまま物価高が落ち着かなければ、実質賃金のプラスを維持することは難しい」(雇用・賃金福祉統計室)とみる。
働き方ごとにみた現金給与総額は、正社員を中心とするフルタイム労働者が3.6%増の52万9266円、パートタイム労働者は3.9%増の11万4729円。パートタイム労働者の時給換算した所定内給与は1337円と3.6%増え、実質賃金は0.7%伸びた。

物価とともに賃金は注目の指標ですので、やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上のパネルは現金給与指数と実質賃金指数のそれぞれの前年同月比、下は景気に敏感な所定外労働時間指数の季節調整済みの系列、をプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo

毎月勤労統計については、広く報じられた通り、不正事案として統計の信頼性に疑問を生じたことから、しばらく私の方では放置して注目の対象から外していましたが、昨年2023年春闘に続いて、今年2024年も大幅な賃上げがあったと考えられることから、賃金や労働時間に着目した毎月勤労統計を再び取り上げることにしました。なお、統計不正の最終的な報告については統計委員会から「毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する追加報告書」などが出ています。
ということで、春闘の結果などを受けて、現金給与総額は季節調整していない原系列の前年同月比で4月+1.6%増、5月+2.0%増から、6月+4.5%増、7月+3.6%増と跳ね上がっています。ただし、6-7月現金給与指数の大きな上昇には好業績を背景としたボーナス分が寄与しており、8月以降も賃金の大きな上昇が続く可能性は小さいと考えるべきです。ですので、決まって支給する給与ベースで見ると、4月+1.6%増、5月+2.0%増、6月+2.1%増、7月+2.5%増となります。足元で6~7月の消費者物価指数(CPI)上昇率が+3%を超えていることを考えれば、これには到底及びません。ですので、引用した記事の最後から2番目のパラでは「実質賃金のプラスを維持することは難しい」という厚生労働省のコメントが示されていますが、私もこの見方に賛成です。ただ、ボーナスを含めると、長らく前年同月比マイナスだった実質賃金の上昇率は6月+1.1%増、7月+0.4%増を記録しています。最後に、所定外労働時間指数、すなわち、残業についてもジワジワと減少を示しています。景気拡大局面が後半に入っていることを実感するグラフかもしれません。

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