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2024年10月 2日 (水)

わずかに上昇した9月の消費者態度指数をどう見るか?

本日、内閣府から9月の消費者態度指数が公表されています。9月統計では、前月からわずかに+0.2ポイント上昇して36.9を記録しています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者態度指数9月は0.2ポイント上昇、物価見通しも上昇=内閣府
内閣府が2日公表した9月の消費動向調査(2人以上の世帯、季節調整値)によると、消費者態度指数は前月比で0.2ポイント上昇の36.9となり、2カ月ぶりに改善した。基調判断は「改善に足踏みがみられる」で据え置いた。1年後の物価見通しはいまより上昇するとの回答者比率が93.1%と前月比で1.0ポイント上昇し3カ月ぶりに増えた。
4つの意識指標の前月比は、「雇用環境」が0.8ポイント改善した。「収入の増え方」も0.4ポイント、「耐久消費財の買い時判断」も0.1ポイント改善した。一方、「暮らし向き」は0.3ポイント悪化した。
1年後の物価見通しは、「5%以上上昇する」との回答比率が、8月の42.7%から46.6%に増えた。上昇率が「2%以上5%未満」、「2%未満」との回答比率はそれぞれ8月よりも低下した。

的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。影を付けた部分は景気後退期となっています。

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消費者態度指数は今後の暮らし向きの見通しや雇用環境などについての消費者の意識について質問するものであり、4項目の消費者意識指標から成っています。9月統計では、引用した記事にある通り、前月から3指標が上昇しており、「雇用環境」が+0.8ポイント上昇し42.2、「収入の増え方」が+0.4ポイント上昇し40.1、「耐久消費財の買い時判断」が+0.1ポイント上昇し31.0となった一方で、「暮らし向き」は▲0.3ポイント低下し34.4となっています。消費者態度指数は、昨年2023年10月統計から6か月連続の上昇を記録した後、4-5月統計では2か月連続で低下し、6-7月統計では逆に2か月連続で上昇した後、8月統計では前月比横ばい、本日公表の9月統計では+0.2ポイントの上昇でした。引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「改善に足踏みがみられる」で据え置いています。5月統計で下方修正されてから5か月連続での「足踏み」です。年度始まりで物価改定が集中した4月、それに続く5月の2か月で大きく低下した後、まさに足踏みが続いています。
注目すべきは、引用した記事にもある通り、インフレを見込む割合が低下から上昇に転じた点です。すなわち、物価上昇を見込む割合は、昨年2023年12月の91.6%を底に6月統計まで上昇を続け、6月に93.8%を記録した後、7月93.2%、8月92.1%とジワジワと低下していましたが、本日公表の9月統計では+93.1%と再上昇に転じました。もちろん、90%を超えた結果で大きな変化はないという見方もできます。ただ、物価上昇を見込む90%超のうち、+5%以上の高いインフレを予想する割合が、引用した記事の通り、前月の+42.7%から今月9月統計では+46.6%に上昇しています。いずれにせよ、圧倒的に高い比率で物価上昇を見込む結果に変わりありません。ただ、9月17日に公表された日本経済研究センターのESPフォーキャストに示されたエコノミストの見方では、消費者物価上昇率は今年2024年7~9月期に+2.54%でピークとなり、その後も+2.5%から+2.2%で高止まりを続けるものの、来年2025年7~9月期になると日銀インフレ目標の+2%を下回る+1.91%まで物価上昇率が縮小すると予想されており、しばらくは日銀の物価目標を上回るインフレが続く見込みです。したがって、消費者マインドもいくぶんなりとも物価に連動する時期がしばらく続く可能性が十分あります。

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