やや改善した失業率や有効求人倍率などの9月雇用統計をどう見るか?
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも9月の統計です。失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.4%と改善した一方で、有効求人倍率は前月を+0.01ポイント上回って1.24倍と改善しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
失業率9月は2.4%、8カ月ぶり低水準 有効求人1.24倍に小幅上昇
政府が29日発表した9月の雇用関連指標は完全失業率が季節調整値で2.4%と、前月から0.1ポイント改善した。2カ月連続で低下し、今年1月以来8カ月ぶりの低水準となった。リストラや倒産などの「非自発的な離職」が減少した。有効求人倍率は1.24倍で前月から0.01ポイント上昇した。
ロイターの事前予測調査で完全失業率は2.5%、有効求人倍率は1.23倍と見込まれていた。
総務省によると、9月の就業者数は季節調整値で6782万人と、前月に比べて9万人減少。完全失業者数(同)は、前月に比べて4万人減少し168万人だった。
正規の職員・従業員数(実数)は3692万人、このうち女性は1328万人で、ともに比較可能な2013年以降で過去最多だった。
総務省の担当者は「完全失業率はこのところ2%台半ばで推移していたが、9月は低下して今年1月以来の低い水準となった。雇用情勢は悪くない」との認識を示した。女性の就業率が伸びてきていることについては、女性の就業を支える施策が奏功してきている可能性があると述べた。
続いて、雇用統計のグラフは下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。
記事にもある通り、ロイターでは失業率に関する事前コンセンサスは前月と同じ2.5%、有効求人倍率も前月から横ばいの1.23倍が見込まれていました。人口減少局面下の人手不足を背景に、失業率も有効求人倍率もともに9月統計では改善を示し、もちろん、高い水準が続いています。ただし、グラフからも明らかなように、雇用は底堅い印象ながら、そろそろ改善局面を終えた可能性がある、と私は評価しています。ただ、それでも、今年2024年に入ってから9月統計で失業者数は季節調整済み系列の累計で▲4万人減少しており、その背景として、同じ期間に就業者が+18万人増、雇用者にいたっては+21万人増と増加を示しています。なお、季節調整していない原系列の統計で失業者数は前年同月比で+2万人増加していますが、内訳を見ると、転職を目指したりしていると見られる「自己都合による自発的な離職」が+3万人増加しており、中身としてはそれほど悪くない気がしています。もちろん、そろそろ景気回復局面は後半期に入っている可能性が高いと考えるべきですし、その意味で、いっそうの雇用改善は難しいのかもしれません。ただ、あくまで雇用統計はまだら模様であり、人口減少下での人手不足は続くでしょうし、米国がソフトランディングの可能性を強めている限り、それほど急速な雇用や景気の悪化が迫っているようにも見えません。
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