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2024年10月25日 (金)

やや上昇率が縮小した9月の企業向けサービス価格指数(SPPI)

本日、日銀から9月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月からわずかに縮小して+2.6%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIについては前月と同じ+2.8%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、9月は2.6%増 3カ月連続で上昇率縮小=日銀
日銀が25日に公表した9月の企業向けサービス価格指数速報は前年比2.6%上昇、前月比では0.1%低下した。8月は前年比2.8%上昇、前月比変わらずだった。前年比での上昇率は6月に3.2%まで拡大した後、9月まで3カ月連続で縮小した。
日銀の担当者によると、9月は外航貨物輸送が前年比で大幅下落となり、押し下げに寄与したほか、運輸・郵便、インターネット広告・新聞・雑誌広告、土木建築、労働者派遣サービス、金融手数料等が上昇幅を縮小させ、全体の下落に寄与した。
担当者は「日本経済をめぐる不確実性は高い状況が続いているが、企業向けサービス価格指数の観点からは、人件費の上昇を価格に転嫁する動きも持続している」と指摘。「宿泊サービスなど、それまで力強い伸びを示してきたサービスの先行きの増勢、地政学リスクを踏まえた国際商品市況や海運市況の状況を注視していく」と述べた。
指数を構成する146品目中、上昇した品目は116、下落は14品目で差し引きは102品目となり、8月の96品目から増加した。

もっとも注目されている物価指標のひとつですから、やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

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上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、上昇率としては2023年中に上昇の加速はいったん終了したように見えたのですが、今年2024年年央時点で再加速が見られ、PPI国内物価指数の前年同月比上昇率は9月統計で+2.8%を示しています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準として一貫して上昇を続けているのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、昨年2023年11月に+2.8%まで加速し、さらに今年2024年6月統計では+3.2%まで加速した後、本日公表された9月統計では+2.6%に上昇率が縮小しています。1年超の15か月連続で日銀物価目標である+2%以上の伸びを続けているわけです。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なります。しかし、いずれにせよ、+2%超の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性があります。加えて、真ん中のパネルにプロットしたうち、モノの物価である企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価のグラフを見ても理解できるように、物価上昇率が高止まりしていることは事実としても、インフレが+2%を大きく超えて加速する局面ではない、と私は考えています。また、本日総務省統計局から公表された消費者物価指数の東京都区部10月中旬速報でも、ヘッドラインも生鮮食品を除くコアCPIもともに+1.8%の上昇率と日銀物価目標を下回るくらいまで縮小してきています。SPPIに戻って、人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率と高人件費比率のサービスの違いに大きな差はありません。引用した記事の通り、8月統計の前年同月比で見て、高人件費率サービス+2.9%、低人件費率サービス+2.3%の上昇となっています。ですので、引用した記事の日銀担当者の発言、あるいは、巷間いわれているような「人件費転嫁による物価上昇」という説が正しいかどうかはやや疑問といわざるを得ません。すなわち、人件費率に関係なく+2%超の価格上昇が見られる点は忘れるべきではありません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて9月統計のヘッドライン上昇率+2.6%への寄与度で見ると、機械修理や廃棄物処理や土木建築ササービスなどの諸サービスが+1.47%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分超を占めています。人件費以外の原材料やエネルギーなども含めて、コストアップが着実に価格に転嫁されているというのが多くのエコノミストの見方ではないでしょうか。ただし、諸サービスのうちの宿泊サービスは前年同月比で9月統計では+12.7%の上昇と、引き続き高止まりしています。加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている項目として、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスといった情報通信が+0.31%、石油価格の影響が大きい道路貨物輸送や旅行サービスや道路旅客輸送などの運輸・郵便が+0.28%、ほかに、景気敏感項目とみなされている広告+0.19%、リース・レンタル+0.16%などとなっています。

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