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2024年10月31日 (木)

台風の影響からリバウンドした9月の鉱工業生産指数(IIP)と大きく伸びが鈍化した商業販売統計

本日は月末ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が公表されています。いずれも9月の統計です。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から+1.4%の増産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.5%増の13兆4890億円を示し、季節調整済み指数は前月から▲2.3%の低下を記録しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、9月は前月比1.4%上昇 自動車が寄与=経産省
経済産業省が31日発表した9月鉱工業生産指数速報は前月比1.4%上昇となった。ロイターの事前予測調査では同1.0%上昇と予想されていた。半導体製造装置などが減少する一方、自動車やエアコンが好調だった。
生産予測指数は10月が前月比8.3%上昇、11月が同3.7%低下となった。経済産業省は生産の基調判断を「一進一退」で据え置いた。
<7-9月期は2四半期ぶりマイナス>
上昇に寄与したのは、自動車、無機・有機化学、電気・情報通信機械など。台風からの生産回復により普通乗用車が13.0%増となったほか、前月に設備トラブルの発生した反動でフェノールが71.0%増。猛暑効果でエアコンも増加した。
半導体製造装置は中国向け、国内向けの減少で7.0%減、フラットパネル・ディスプレイ製造装置も輸出減で25.9%減にとどまった。ショベルトラックも7.3%減となったが「要因は不明」(幹部)という。
一方、7-9月期の鉱工業生産指数は前期比0.4%低下となり、2四半期ぶりのマイナスに転じた。
小売業販売額、9月は前年比0.5%増 予想を下回る
経済産業省が31日に発表した9月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比0.5%増となった。ロイターの事前予測調査では2.3%増が予想されていた。
業種別では前年比で織物・衣服が10.7%増えたほか、その他小売業が3.1%増だった。一方、自動車は3.5%減、燃料は1.5%減、医薬品・化粧品は0.8%減だった。
業態別の前年比は百貨店が1.8%増、スーパーが2.1%増、コンビニが0.6%増、家電大型専門店は0.2%増、ドラッグストアは3.9%増、ホームセンターは2.3%増。


長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にはある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は+1.0%の増産、また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、+0.9%の増産が予想されていましたので、実績の前月比+1.4%の増産はやや上振れた印象です。しかしながら、引用した記事にもある通り、増産の大きな要因は8月末に台風の影響でトヨタなどで一時停止していた工場を再開したことによるリバウンドの影響が大きいと見られます。無機・有機化学では原材料調達におけるトラブルが解消したと報じられています。エアコンは、いわずもがなで、猛暑の影響であろうと考えるべきです。ということd,絵屋や市場の事前コンセンサスから上振れた印象とはいえ、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、先月に上方修正した「一進一退」で据え置いてしています。
先行きの生産については、製造工業生産予測指数を見ると、引用した記事にもある通り、足下の10月は補正なしで+8.3%の増産ながら、上方バイアスを除去した補正後では+5.1%の増産と試算されています。加えて、11月は▲3.7%の減産との予想となっています。7~9月期の生産は▲0.4%減と小幅の減産にとどまりました。経済産業省の解説サイトによれば、9月統計における生産は、自動車工業が前月比+7.1%の増産で+0.88%の寄与度を示したほか、無機・有機化学工業が前月比+6.6%増で+0.28%の寄与度、電気・情報通信機械工業が+2.2%の増産で+0.19%の寄与度などとなっています。他方で、生産低下に寄与したのは、生産用機械工業が▲1.7%の減産、寄与度▲0.14%などとなっています。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。見れば明らかな通り、小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのが習慣なのですが、伸び率が大きく落ちてきているのが見て取れます。その上、季節調整済みの系列では前月比マイナスに転じています。引用した記事にある通り、ロイターでは前年同月比で+2.3%の伸びを市場の事前コンセンサスとしていましたので、下振れした印象を持つエコノミストも多かろうと思います。統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、経済産業省のリポートでかなり機械的に判断しているところ、本日公表の9月統計までの3か月後方移動平均の前月比が▲0.3%の減少となりましたので、「上方傾向」から「一進一退」と明確に1ノッチ下方修正されています。偶然なのでしょうが、鉱工業生産と同じ表現となっています。加えて、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、9月統計ではヘッドライン上昇率が+2.5%、生鮮食品を除くコア上昇率も+2.4%、生鮮食品及びエネルギーを除くコアコアCPI上昇率が+2.1%となっていますので、小売業販売額の9月統計の+0.5%の増加は、インフレ率を大きく下回っていると考えるべきです。さらに考慮しておくべき点は、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより、部分的なりとも小売業販売額の伸びが支えられている可能性です。引用した記事にある通り、国民生活に身近で頻度高い購入が想像されるスーパーでは前年同月比で+2.1%の伸びを示したものの、コンビニは+0.6%増にとどまっている一方で、百貨店がコンビニを上回る+1.8%増と伸びが大きくなっています。この点にインバウンド消費が現れている可能性がうかがえます。したがって、小売業販売額の伸びが国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性は考慮されるべきです。

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