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2024年10月11日 (金)

STEM卒業生とグリーンジョブに見る男女格差やいかに?

今週月曜日10月7日の IMF Blog において Why Women Risk Losing Out in Shift to Green Jobs と題して、STEM、すなわち、科学(science)、技術(technology)、工学(engineering)、数学(mathematics)における男女格差を縮小させることにより、気候変動対策が加速し、いっそう包括的(inclusive)なものとなるという主張がなされています。
書き出しが "Men hold about 70 percent of the world's polluting jobs" となっていて、男性優位経済では気候変動対策を進めることに対して、汚染するジョブを持つ男性が失業するリスクを負う可能性があると示唆しています。そして、気候変動対策を進めるグリーンジョブにおいて女性がもっと活躍することにより、対策を加速する必要性を強調しています。まず、IMF Blogのサイトからグリーンジョブにおける男女の就業格差を示す Women have fewer green jobs than men と第するグラフを引用すると以下の通りです。

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見れば明らかな通り、先進国で働く女性のうちでグリーンジョブに従事しているのはわずかに6%に過ぎない一方で、男性はこの比率が20%に達しています。"just 6 percent of women who work in advanced economies hold green jobs, compared to over 20 percent of working men" また、他の仕事に比較してグリーンジョブは大きな賃金プレミアムを獲得している "green jobs command a substantial wage premium over other jobs in the economy" と強調しています。この賃金プレミアムは、コロンビアの例では男性で9%、女性では16%となっています。"In Colombia, for example, the wage premium is 9 percent for men and 16 percent for women." という事実を上げて、STEMを学習し、グリーンジョブに就くことを女性に推奨しています。

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しかし、他方でいまだに、STEM教育における男女格差が大きいと指摘しています。すなわち、多くの国では、STEMを勉強して卒業する学生のうち女性は⅓に過ぎず、将来の労働市場で重要性を増すグリーンジョブへの準備が不十分である "Women account for less than a third of STEM graduates in many countries, leaving them less prepared for green jobs that will shape the future labor market." と結論しています。上のグラフはIMF BlogのサイトからSTEM卒業生の男女比率をプロットした Too few women を引用しています。一番下のルクセンブルクという突飛な例外を別にすれば、真ん中あたりに見える日本女性のSTEM卒業生の人口比がもっとも低いのが見て取れると思います。まあ、あらゆるシーンで日本が立ち遅れていることは何度も指摘されている通りですが、STEM卒業生の少なさもご同様であり、したがって、グリーンジョブへの就職も遅れているんだろうと私は想像しています。

私は従来から先行き重要な人材は、グローバル人材、データサイエンス人材、デジタル人材、グリーン人材、の4カテゴリーだと考えてきました。この4カテゴリーのうちの私のいう「グリーン人材」がIMFのいう「グリーンジョブ」に就いていることは明らかです。ただし、東京で公務員をしていたころは、日本にはこういった人材は十分いると私は思っていましたが、京阪神の関西圏ですら決して十分ではないという地方圏の現実に直面しています。私自身が所属している大学教育の分野で、もっとも日本で対応が進んでいるのはデータサイエンス人材だと思います。アチコチにいっぱい学部や学科ができています。残る3分野のうち、まさにこのIMF Blogが指摘するように、グリーン人材はSTEM系の学問を専攻した人材なので、私のような経済学部の教員はお呼びじゃないかもしれませんが、特に、日本が立ち遅れている男女格差の是正をさらに進める必要性を痛感させられました。

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