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2024年10月23日 (水)

IMF「世界経済見通し」見通し編を読む

日本時間の昨夜、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」World Economic Outlook, October 2024 の見通し編が公表されています。リポートの副題は Policy Pivot, Rising Threats となっており、インフレのリスクが後退しつつあるとはいえ、世界経済の成長は力強さにかけており、インフレ抑制から成長促進への政策転換の必要性を強調する内容となっています。分析編はすでに照会していますが、何といってもこのリポートのメインですので、リポートなどから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、IMFのチーフエコノミストであるグランシャ教授によるIMG Blogのサイトから成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。文字通り安定した成長率見通しながら、力強さに欠け、やや物足りない、というのも事実だろうという気がします。

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次に、リポートから Figure 1.13. Inflation Outlook を引用すると上の通りです。全体として、2025年までにインフレは物価目標に戻ると期待される "Overall, returning inflation to target is expected to take until 2025 in most cases." と結論しています。早い話が、インフレは2025年までにおおむね収束しつつある、ということです。すでに分析編で取り上げたように、フィリップス曲線がかなりスティープになっていて、急速な物価上昇が起こりがちな反面、それほどの産出ロスなしにインフレを収束させることができそうである、という見通しです。

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いくつかの政策提案もなされているのですが、かなり慎重な姿勢が伺われます。すなわち、金融政策については、インフレ収束が蓋然性高くなったわけですので、ソフトランディングを確実にすることを求めています。"Ensuring a Smooth Landing" というわけです。次に、財政政策については、債務問題を回避しつつ財政の余力を再構築すること "Rebuilding Fiscal Buffers while Avoiding Debt Distress" を求めています。財政再建の一本槍とは違う印象を持ちました。上のグラフはリポートから Figure 1.18. Required Fiscal Consolidation を引用しています。ただ、インフレがまだ高い国では財政再建を強力に進めることが総需要を抑制し、インフレ圧力を低下させるのに有効だとしても、市場の混乱を防止する "prevent disruptive market reactions" という観点も強調されています。引用した Figure 1.18. Required Fiscal Consolidation においても、ドーマー方程式を意識して、金利と成長率の差にも着目していますし、従来のワシントン・コンセンサス的ではない視点といえます。

下振れリスクとして、保護主義の台頭 "Countries ratchet up protectionist policies" が上げられており、米国大統領選挙の年らしいと感じました。トランプ前大統領が当選すれば、保護主義リスクが顕在化する可能性が高まると考えるべきです。また、"China's property sector contracts more deeply than expected" と表現した中国の不動産バブル崩壊リスク、あるいは、商品価格の高騰、すなわち、"Renewed spikes in commodity prices arise as a result of climate shocks, regional conflicts, or broader geopolitical tensions" なども先行きの下振れリスクとして上げられています。他方で、先進国における投資の回復 "Stronger recovery in investment in advanced economies" や構造改革の進展 "Stronger momentum of structural reforms" が上振れリスクとして上げられています。

かなり分厚な英文のリポートですので、取りあえず、ファーストショットの印象を残しておきたいと思います。

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