7-9月期GDP統計速報1次QEは年率+1%弱のプラス成長
本日、内閣府から7~9月期GDP統計速報1次QEが公表されています。季節調整済みの系列で前期比+0.2%増、年率換算で+0.9%増を記録しています。2四半期連続のプラス成長です。なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+2.5%、国内需要デフレータも+2.3%に達し、8四半期連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
GDP年率0.9%増 7-9月実質、消費伸び2期連続プラス
内閣府が15日発表した7~9月の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.2%増、年率換算で0.9%増だった。個人消費が全体を押し上げ、2四半期連続のプラス成長となった。
QUICKが事前にまとめた民間予測の中心値である年率0.7%増より高かった。ゼロ%台半ばとされる潜在成長率を上回る伸びとなった。
赤沢亮正経済財政・再生相は15日の記者会見で「33年ぶりの高水準となった春季労使交渉における賃上げの効果や、堅調な夏のボーナスを受け、実質雇用者報酬が前年同期比でプラス0.9%と、2四半期連続の増加となった」と所得の改善を強調した。先行きについても「景気の緩やかな回復が続くことが期待される」と話した。
GDPの半分以上を占める個人消費は前期比0.9%増と2四半期連続のプラスだった。品質不正による出荷停止の影響が解消し、自動車の購入が回復した。スマートフォンの新商品も増加に寄与した。
猛暑や台風、南海トラフ地震臨時情報なども消費に影響した。旅行や外食、宿泊などが振るわなかったが、パックご飯や清涼飲料水が押し上げ要因となった。衣料品は4~6月期の販売が好調だった反動がみられた。
民間住宅は前期比0.1%減で2四半期ぶりにマイナスに転じた。
消費に次ぐ民需の柱である設備投資は前期比0.2%減で2四半期ぶりのマイナスだった。「プラント工事関連の支出が減少した」(内閣府の担当者)という。半導体製造装置や業務用の複写機の落ち込みもみられた。民間在庫変動の前期比寄与度はプラス0.1ポイントだった。
公共投資は前期比0.9%減で2四半期ぶりに落ち込んだ。政府消費は同0.5%増だった。
輸出は前期比0.4%増だった。金属製品や半導体などの電子部品が増えた。GDP統計で輸出に分類するインバウンド(訪日外国人)消費は前期比13.3%減と、22年4~6月期以来、9四半期ぶりのマイナスとなった。訪日客数が頭打ち傾向にあることが背景とみられる。
輸入は前期比2.1%増だった。医薬品やスマホの輸入が増えたという。
前期比年率の成長率に対する寄与度をみると、内需がプラス2.5ポイント、外需がマイナス1.6ポイントだった。寄与度について内需のプラスは2四半期連続、外需のマイナスは3四半期連続となる。
名目GDPは前期比0.5%増、年率2.1%増で2四半期連続のプラスだった。国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比で2.5%上昇した。4~6月の3.1%から伸び率が縮んだ。
働く人の収入の動きを示す雇用者報酬は前年同期比で名目3.6%増だった。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした需要項目 | 2023/7-9 | 2023/10-12 | 2024/1-3 | 2024/4-6 | 20234/7-9 |
国内総生産GDP | ▲1.0 | +0.1 | ▲0.6 | +0.5 | +0.2 |
民間消費 | ▲1.1 | +0.2 | ▲0.3 | +0.6 | +0.7 |
民間住宅 | ▲0.9 | ▲1.0 | ▲2.9 | +1.4 | ▲0.1 |
民間設備 | ▲0.1 | +2.1 | ▲0.4 | +0.9 | ▲0.2 |
民間在庫 * | (▲0.6) | (▲0.0) | (+0.3) | (▲0.1) | (+0.1) |
公的需要 | +0.0 | ▲0.4 | +0.1 | +0.8 | +.3 |
内需寄与度 * | (▲0.) | (+0.0) | (▲0.2) | (+0.7) | (+0.6) |
外需(純輸出)寄与度 * | (▲0.2) | (+0.1) | (▲0.4) | (▲0.1) | (▲0.4) |
輸出 | +0.2 | +2.9 | ▲4.5 | +1.4 | +0.1 |
輸入 | +0.9 | +2.4 | ▲2.4 | +2.9 | +2.1 |
国内総所得 (GDI) | ▲0.7 | +0.2 | ▲0.7 | +0.6 | +0.3 |
国民総所得 (GNI) | ▲0.7 | +0.3 | ▲0.7 | +1.2 | +0.4 |
名目GDP | ▲0.1 | +0.8 | ▲0.3 | +1.7 | +0.5 |
雇用者報酬 (実質) | ▲0.5 | +0.1 | +0.2 | +0.7 | +0.0 |
GDPデフレータ | +5.3 | +4.0 | +3.4 | +3.1 | +2.5 |
国内需要デフレータ | +2.6 | +2.2 | +2.3 | +2.6 | +2.3 |
上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7~9月期の最新データでは、前期比成長率がプラス成長を示し、灰色の在庫と黒の純輸出がマイナス寄与しているほかは、赤の消費をはじめとしてGDPの国内需要項目の多くのコンポーネントが軒並みプラス寄与しているのが見て取れます。

まず、引用した記事には+0.7%とあるのですが、私が見た範囲では、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前期比年率で+0.6%のプラスで、予想レンジの上限が+1.8%とはいうことでしたので、やや上振れしたと私は受け止めています。季節調整済み系列の前期比伸び率で見て、GDP+0.2%増のうち、内需寄与度が+0.6%、外需寄与度が▲0.2%ですから、内需主導で潜在成長率近傍の成長といえます。また、外需のマイナス寄与についても、輸出入ともに伸びている中で、輸入の伸びが輸出を上回った結果としての純輸出のマイナス寄与です。内需では、特に、GDPコンポーネントとして最大シェアを占める消費が+0.5%の寄与を示しています。ただ、後のグラフで見るように、雇用者報酬がここまで水準として低くなっている一方で、今春島における賃上げなどによって伸びが大きくなっっている点が消費の伸びにつながっていると考えるべきです。加えて、今年の年末ボーナスも増加すると見込まれていて、10~12月期の消費も期待できる、と私は考えています。また、8月末には台風により一部の自動車工場などで操業を停止したりしていましたが、それでも7~9月期はプラス成長でしたし、10~12月期はこういった天候要因のリバウンドも期待できますので、目先の景気はそれほど悪くないと私は楽観しています。

続いて、上のグラフの上のパネルでは、GDPデフレータ、消費デフレータ、国内需要デフレータのそれぞれの季節調整していない原系列データの前年同期比を、下のパネルでは、季節調整済みの系列の雇用者所得の実額を、それぞれプロットしています。上のパネルで影をつけた部分は景気後退期です。GDP統計の需要項目については季節調整済み系列の前期比や前期比年率で見るのに対して、伝統的に、デフレータ項目は季節調整していない原系列の前年同期比で見ることになっています。原系列の前年同期比で見る理由は、私には不明ですが、あるいは、同じように季節調整していない原系列の前年同期比で見る消費者物価指数になぞらえているのかもしれません。ということで、上のグラフで見る通り、GDPデフレータで見たインフレは昨年2023年7~9月期にピークアウトしたようですし、消費デフレータや国内需要デフレータに基づくインフレは、さらにもう1四半期早い2023年4~6月期にピークアウトしているようです。ただ、GDPデフレータはまだ前年同期比+2.5%の上昇となっていますし、消費デフレータや国内需要デフレータでもまだ+2%超のインフレです。日銀の物価目標は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除くコアCPIで+2%ですから、計測基準が異なるとはいえ、物価上昇率は低下しているものの、まだ、インフレは高止まりしていると考えるべきです。また、下のパネルから雇用者報酬が春闘における賃上げにより伸びている点が見て取れます。ただし、水準としてはまだコロナ前には追いついていません。円安とともにインフレが懸念材料ですが、所得面では年末ボーナスに期待します。
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