3か月連続で減少した9月の機械受注をどう見るか?
本日、内閣府から9月の機械受注が公表されています。機械受注のうち民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から▲0.7%減の8520億円と、3か月連続の前月比減少を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。
機械受注は9月は-0.7%、3カ月連続減 設備投資に懸念の声
内閣府が18日に発表した9月機械受注統計によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は、前月比0.7%減となった。3カ月連続の減少で、賃上げから所得、消費と企業活動の好循環の鍵を握る設備投資は足踏みが続いている。
ロイターの事前予測調査では前月比1.9%増と予想されており、結果はこれを下回った。前年比での実績は4.8%減だった。
内閣府は、機械受注の判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いた。
製造業は前月比0.0%減、非製造業は同1.5%増だった。製造業は4カ月連続の減少で、機械受注全体の足を引っ張っている。
アナリストらは、日銀短観などにみられる計画段階では企業は設備投資に旺盛な意欲を示しているものの、内外需とも先行きの不透明感が増す中、実際の投資を実行するには至っていないとみる。
外需は、9月は前月比10.3%減だった。
四半期ベースでは、7-9月が前期比1.3%減、10-12月の見通しは同5.7%増となった。
機械受注統計は機械メーカーの受注した設備用機械について毎月の受注実績を調査したもの。設備投資の先行指標として注目されている。
やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事にもある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+1.9%増、日経・QUICKによるマクロ予測でも+2.1%増でしたので、実績の▲0.7%減は大きく下振れした印象です。ただし、日経・QUICKによるマクロ予測のレンジ下限は▲0.8%減でしたのでギリギリレンジ内ということはいえます。もっとも、繰り返しになりますが、3か月連続でコア機械受注が前月比マイナスを記録していますし、四半期でならしてみても7~9月期は前期比で▲1.3%減となりました。内閣府による見通しでは前期比で+0.2%でしたので、これまたかなり下振れた印象です。かなり弱め内容となっていますが、しかしながら、というか、何というか、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いています。ひとつには、10~12月期の見通しが前期比で+5.7%と集計されており、4~6月期の実績の▲0.1%減、7~9月期の▲1.3%減を上回る可能性がまだあるからといえます。振れの大きな指標ですので、何とも先行きは見通せません。ただ、先行きリスクは下方に厚いと私は考えており、特に、年内10~12月期くらいから年明けには日銀による金利引き上げの影響がラグを伴って現れる可能性が十分あります。すでに、住宅ローン金利が引き上げられたのは広く報じられている通りです。
ただ、さらに大きな謎は、引用したロイターの記事にもある通り、計画段階では日銀短観などのソフトデータで示されている企業マインドとしての意欲は底堅い一方で、設備投資が実行されるに至っておらず、したがって、GDP統計や本日公表された機械受注などには一向に現れていない点です。すなわち、投資マインドと実績の乖離が気にかかります。乖離の理由について、「先行き不透明感」で片付けるのは忍びなく、私は十分には理解できていません。これだけ人口減少による人手不足が続いている中で、労働に代替する資本ストック増加のための設備投資の伸びもなくそのためにDXやGXが進まないとすれば、日本企業は大丈夫なのかどうか大きな不安が残ります。
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