リクルートの考える日本型雇用の問題は何か
先週11月15日、リクルートワークス研究所から「日本型雇用の問題は何か」と題するリポートが明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。なお、今年2024年8月に取り上げた「『日本型雇用』のリアル」に続いて、Global Career Survey 2024 のデータに基づく研究成果の第2弾です。第1弾は日本的雇用のイメージと実態について考え、高度成長期から「日本的雇用」の特徴と考えられてきたナラティブが、必ずしも当てはまらない、という事実を明らかにしています。この第2弾では、日本的雇用のネガな面を探っています。4つの分析が収録されているのですが、そのうちの3点について、リポートからグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思いまあす。以下の通りです。
まず、上のグラフはリポート p.6 から 【図表3】今の会社を辞めることになったとしても、希望の仕事につくことができる を引用しています。転職後のキャリアといえます。日本的雇用慣行のひとつとして長期雇用とそれを補完する年功賃金が上げられますが、逆に、転職にはとても大きな不利益をもたらしかねないといえます。また、主として女性かもしれませんが、p.7 には結婚・出産などでキャリアの中断をした後の再就職について、【図表4】一度働くのをやめてブランク期間を経ても、再び同じような待遇や働き方が選べる 問い設問の回答が収録されており、同じような結果となっています。要するに、再チャレンジが困難であることです。ただし、前のリポート「『日本型雇用』のリアル」では、終身雇用は日本的雇用の特徴であるが、年功賃金はそうではない、と結論していただけに、私は少し違和感を感じてしまいました。
続いて、上のグラフはリポート p.12 から 【図表11】 7カ国における男女の年収格差 を引用しています。もはや、言葉を持ちません。何度も繰り返していますが、日本経済の最大の障害のひとつは男女格差です。グラフなどは引用しませんが、リポートでは、加えて、年齢が上がるとともに、また、金属年収が長くなるとさらに男女間格差が拡大するとの分析結果を示しています。
続いて、上のグラフはリポート p.18 から 【図表18】2023年の1年間で自己啓発を行った人の割合 を引用しています。広くスキルアップとまでいわずとも、日本の雇用者・労働者は「学び」に不熱心だという点については定評があり、本田由紀先生の論文「世界の変容の中での日本の学び直しの課題」などでも指摘されている通りです。上のグラフでも自己啓発の不熱心さが現れています。「学び」や自己啓発に不熱心だとスキルアップに繋がる可能性も低いのではないかと私は懸念します。ただ、これは就職してからの学びや自己啓発についての日本的な弱点であり、リポートでも、日本における就職前の大学での学び=専攻と現職職種の関連が他国の現状と比べて明確に弱いとまではいえない、という結果も示されています。私も典型的にこれに当てはまり、就職してから大学院などでのリスキリングはさっぱりやっていませんが、大学の時に勉強した経済学を60代半ばになっても活用できています。
4点目の分析はキャリアの自律性に関する考察で、長期雇用といわれつつも、他国と比べて引退するまで雇い続けてくれる可能性はそれほど大きく感じていない割には、自分のキャリアに対する自己決定意欲が低い、という点を分析しています。今日のところは割愛します、といいつつ、たぶん、改めて取り上げることもしないと思います。
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