4か月ぶりに前月比で増加した10月の機械受注をどう見るか?
本日、内閣府から10月の機械受注が公表されています。機械受注のうち民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から▲0.7%減の8520億円と、3か月連続の前月比減少を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。
機械受注10月は前月比+2.1%、4カ月ぶり増加 判断維持
内閣府が16日に発表した10月機械受注統計によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は、前月比2.1%増と4カ月ぶりの増加となった。ロイターの事前予測調査では前月比1.2%増と予想されており、結果はこれを上回った。
前年比では5.6%増えた。外需は同8.9%増で、前月比でみると7.9%増となった。
ただ、3カ月移動平均が2カ月連続で減少していることから、内閣府は機械受注の判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」と6カ月連続同じ表現で据え置いた。
機械受注統計は機械メーカーの受注した設備用機械について毎月の受注実績を調査したもの。設備投資の先行指標として注目されているが、振れが大きいことで知られ、船舶・電力を除いたコア指数が注目されている。
セクター別にみると、製造業が前月比12.5%増と4カ月ぶりのプラスに転じたが、非製造業(船舶・電力を除く)は1.2%減と2カ月ぶりのマイナスになった。
10月は人手不足に起因した省力化投資が活発化。産業別では蓄電池や家電など電気機械、パルプ・紙、鉄鋼がプラスに寄与した。
非製造業では通信機やパソコン、電子計算機などが落ち込んだ通信業のほか、金融・保険業が下押し要因となった。
やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事にもある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比+1.2%増、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも同じく+1.2%増でしたので、実績の+2.1%は上振れした印象です。ただし、日経・QUICKによるマクロ予測のレンジ上限は+5.0%増でしたので軽くレンジ内ということはいえます。4か月ぶりの前月比プラスながら、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いています。6か月連続だそうです。日経新聞の記事によると、10~12月期の見通しが前期比で+5.7%と集計されており、11~12月は連続で前月比+4.7%以上の伸びが必要だそうで、この見通しは達成されるかどうか、ビミョーなところです。振れの大きな指標ですので、何とも先行きは見通せません。ただ、先行きリスクは下方に厚いと私は考えており、特に、年内10~12月期くらいから年明けには日銀による金利引き上げの影響がラグを伴って現れる可能性が十分あります。すでに、住宅ローン金利が引き上げられたのは広く報じられている通りです。
ただ、さらに大きな謎は、計画段階では先週12月13日に公表された日銀短観などのソフトデータで示されている企業マインドとしての投資意欲は底堅い一方で、実際に設備投資が実行されるに至っておらず、したがって、GDP統計や本日公表された機械受注などには一向に現れていない点です。すなわち、投資マインドと実績の乖離が気にかかります。乖離の理由について、「先行き不透明感」で片付けるのは忍びなく、私は十分には理解できていません。これだけ人口減少による人手不足が続いている中で、労働に代替する資本ストック増加のための設備投資の伸びもなくそのためにDXやGXが進まないとすれば、日本企業は大丈夫なのかどうか大きな不安が残ります。ひとつの仮説としては、新語・流行語大賞の「ふてほど」ではないのですが、エコノミストとしては極めて不穏当・不適切ながら、日本企業はもはや経済活動で利潤最大化を目指すのではなく、政治活動で、すなわち、政治献金による政治的なレント、補助金や減税を目指している可能性がある、という見方はどこまで成り立つ可能性があるのでしょうか?
| 固定リンク
コメント