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2024年12月25日 (水)

ふたたび上昇率が+3%となった11月の企業向けサービス価格指数(SPPI)

本日、日銀から11月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月からわずかに加速して+3.0%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIについては前月と同じ+3.1%の上昇となっています。まず、ロイターのサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、11月は3.0%上昇 人件費の転嫁進む=日銀
日銀が25日公表した11月の企業向けサービス価格指数は前年比3.0%上昇し、前月から伸びが小幅に加速した。人件費の上昇をサービス価格に転嫁する動きが続いている。指数は109.1で、1995年3月(109.2)以来の高水準となった。前月比は0.4%上昇だった。
前年比プラスは3年9カ月連続。大類別で最も押し上げに寄与した「諸サービス」は前年比4.5%上昇。「機械修理」、「宿泊サービス」、「土木建築サービス」で人件費などの諸コストを価格に転嫁する動きが出ている。宿泊サービスは堅調なインバウンド需要も反映された。
押し上げの寄与度が次に高かったのは「運輸・郵便」で同2.7%上昇。「郵便・信書便」では先月実施された郵便料金の値上げが影響した。「道路貨物輸送」では人件費や燃料コストの上昇分がサービス価格に転嫁された。
情報通信は同1.2%上昇。「ソフトウェア開発」、「情報処理・提供サービス」など情報サービスで人件費などの諸コストを転嫁する動きが見られた。
公表している146品目のうち、前年比で上昇したのは114品目、下落したのは16品目。日銀の担当者は「人件費・労務費の上昇を価格に転嫁する動きの持続性や、宿泊サービスなど力強い伸びを示しているサービスの先行き、海外の景気動向や地政学リスクなども踏まえた国際商品・海運市況の動向を引き続き注視していく」と述べた。
SMBC日興証券のエコノミスト、野田一貴氏は「指数の高い伸びは日銀の利上げプロセスを妨げるものではないが、植田和男日銀総裁は賃上げの動向次第と述べており、積極的に後押しする材料にもならないのではないか」と語った。
10月の前年比は2.9%上昇、前月比は0.8%上昇だった。
<高人件費率サービス、前年比3.2%上昇>
人件費が上昇する局面では消費者物価のサービス指数よりも企業向けサービス価格の方に早く反映される傾向があることから、民間エコノミストの間では注目度が高い。
労働需給と価格の相関関係が高い「高人件費率サービス」の価格指数は前年比3.2%上昇で、伸び率は前月から横ばい。賃金が上昇トレンドにある中で価格転嫁が進んでいる。
企業向けサービス価格指数は不動産や運輸、金融、広告など企業が提供している各種サービス価格の傾向を示すため日銀が公表している指数で、内閣府の国内総生産(GDP)統計を算出するための基礎統計としても利用されている。

もっとも注目されている物価指標のひとつですから、どうしても長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

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上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、上昇率としては2023年中に上昇の加速はいったん終了したように見えたのですが、今年2024年年央時点で再加速が見られ、PPI国内物価指数の前年同月比上昇率は11月統計で+3.7%を示しています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準として一貫して上昇を続けているのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、昨年2023年11月に+2.8%まで加速し、さらに今年2024年6月統計では+3.2%まで加速した後、本日公表された11月統計では+3.0%と高止まりしています。1年超の17か月連続で日銀物価目標である+2%以上の伸びを続けているわけです。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なります。しかし、いずれにせよ、+2%超の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性があります。ただし、真ん中のパネルにプロットしたうち、モノの物価である企業物価指数のヘッドラインとなる国内物価のグラフを見ても理解できるように、物価上昇率が+2%、あるいはそれを超えて高止まりしていることは事実としても、インフレが日銀目標の+2%を大きく超えて加速する局面ではない、と私は考えています。また、人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率と高人件費比率のサービスの違いに大きな差はありません。引用した記事の通り、11月統計の前年同月比で見て、高人件費率サービスでも+3.2%であり、低人件費率サービスでは+3.0%の上昇となっています。ですので、人件費率に関係なく+2%超の価格上昇が見られる点は忘れるべきではありません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて11月統計のヘッドライン上昇率+3.0%への寄与度で見ると、機械修理や宿泊サービスや土木建築サービスなどの諸サービスが+1.70%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分超を占めています。人件費以外の原材料やエネルギーなども含めて、コストアップが着実に価格に転嫁されているというのが多くのエコノミストの見方ではないでしょうか。ただし、諸サービスのうちの宿泊サービスは前年同月比で11月統計では+19.1%の上昇と、インバウンド需要もあって引き続き高止まりしています。加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている項目として、10月から郵便料金が値上げされた郵便・信書便、石油価格の影響が大きい道路貨物輸送や旅行サービスなどの運輸・郵便が+0.46%、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスといった情報通信が+0.27%、ほかに、景気敏感項目とみなされている広告+0.19%、リース・レンタル+0.17%などとなっています。

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