« 日銀金融政策決定会合と「金融政策の多角的レビュー」 | トップページ | 今週の読書は経済の学術書をはじめとして計7冊 »

2024年12月20日 (金)

再び上昇幅を拡大した11月の消費者物価指数(CPI)をどう見るか?

本日、総務省統計局から11月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、前月の+2.3%から拡大して+2.7%を記録しています。日銀の物価目標である+2%以上の上昇は2022年4月から31か月、すなわち、ほぼ2年半の間続いています。ヘッドライン上昇率も+2.9%に達しており、生鮮食品とエネルギーを除く総合で定義されるコアコアCPI上昇率も+2.4%と高止まりしています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価2.7%上昇 11月、3カ月ぶり伸び率拡大
総務省が20日発表した11月の消費者物価指数(CPI、2020年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が109.2となり、前年同月と比べて2.7%上昇した。3カ月ぶりに伸び率が拡大した。政府による電気・ガス代補助が縮小したエネルギー、生産コストが上がったコメの上昇が目立った。
QUICKが事前にまとめた市場予測の中央値は2.6%の上昇だった。
エネルギーの上昇幅は6.0%と、10月の2.3%から拡大した。政府が「酷暑乗り切り緊急支援」として実施していた電気・ガス代への補助金が縮小して、プラス幅が拡大した。11月の電気代は9.9%、都市ガス代は6.4%とそれぞれ上がった。
生鮮食品を除く食料は4.2%上昇で、4カ月連続で上昇幅が拡大した。特に上がったのは米類で63.6%プラスだった。比較が可能な1971年1月以降で過去最大の上昇率となった。総務省の担当者は「流通段階における確保競争で価格が上昇したことに加え、新米の生産コストが上がっている」と説明する。
原材料価格の上昇で価格改定のあったチョコレートは29.2%上昇した。コーヒー豆は主要産地のブラジルの天候不良によって出荷量が減少し、24.9%のプラスだった。国産品の豚肉は猛暑による生育状況が悪く供給量が減って、5.7%上昇した。
食料以外では火災・地震保険料が7.0%プラスだった。災害の増加により10月に保険料の改定があった。下落が大きかったのは通信で、マイナス12.1%だった。通信設備の更新に伴い料金体系が変更され、1月に価格改定があった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は前年同月比2.4%上がった。生鮮食品を含む総合指数は2.9%上昇した。

何といっても、現在もっとも注目されている経済指標のひとつですので、やたらと長い記事でしたが、いつものように、よく取りまとめられているという気がします。続いて、消費者物価(CPI)上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIと生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPI、それぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフはコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。寄与度はエネルギーと生鮮食品とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1ケタの指数を基に私の方で算出しています。丸めずに有効数字桁数の大きい指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。統計局の公表数値を入手したい向きには、総務省統計局のサイトから引用することをオススメします。

photo

まず、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.6%ということでしたので、実績の+2.7%はやや上振れた印象でした。品目別に消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率とヘッドライン上昇率に対する寄与度を少し詳しく見ると、まず、生鮮食品を除く食料の上昇が継続しています。すなわち、先月10月統計では前年同月比+3.8%、ヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度+0.92%であったのが、今月11月統計ではそれぞれ+4.2%、+1.00%と、さらに高い伸びと寄与度を示しています。ただし、10月統計の上昇率+2.3%から11月統計の+2.7%へと上昇率で見て+0.4%ポイントの拡大を示した主因はエネルギーです。すなわち、エネルギー価格については、10月統計で+2.3%の上昇率、寄与度+0.17%でしたが、本日公表の11月統計では上昇率+6.0%の高い上昇率となっていて、寄与度も+0.45%を示していますので、寄与度差は+0.28%あります。特に、インフレを押し上げているのは電気代であり、寄与度は+0.20%に達しています。引用した記事で指摘されている通り、政府の「酷暑乗り切り緊急支援」として実施されていた電気・ガス代への補助金が縮小して、電気代は上昇率+9.9%、寄与度+0.45%、都市ガス代は上昇率+6.4%、寄与度+0.06%と、いずれも前月から跳ね上がりました。なお、統計局のプレスリリースによれば、この緊急支援の寄与度は▲0.34%、うち電気代▲0.28%、都市ガス代▲0.05%、とそれぞれ試算されています。
多くのエコノミストが注目している食料について細かい内訳について、前年同月比上昇率とヘッドラインCPI上昇率に対する寄与度で見ると、繰り返しになりますが、生鮮食品を除く食料が上昇率+4.2%、寄与度+1.00%に上ります。その食料の中で、コシヒカリを除くうるち米などの穀類が上昇率+64.7%ととてつもないインフレとなっていて、寄与度も+0.24%あります。さすがに一時の品薄感は解消されているようですが、少し前までスーパーなどからコメが姿を消していたわけですし、今でも大きく値上げされているのは日常生活でも目にし、広く報道されていたところかと思います。コメの値上がりの余波を受けて、外食が上昇率+2.4%、寄与度+0.11%、おにぎりなどの調理食品が上昇率+2.4%、寄与度+0.09%、に上っています。コメ関係のほかの食料を見ると、チョコレートなどの菓子類が上昇率+5.8%、寄与度+0.15%コーヒー豆などの飲料も上昇率+7.0%、寄与度0.13%、豚肉などの肉類が上昇率+4.5%、寄与度も+0.12%、などなどとなっています。コアCPIの外数の食料ながら、キャベツなどの生鮮野菜が+14.3%、寄与度+0.29%、みかんなどの生鮮果物も上昇率+11.1%、寄与度+0.12%の上昇となっています。また、食料からサービスに目を転じると、外国パック旅行費の上昇率80.8%、寄与度+0.17%を含めて教養娯楽サービス全体で上昇率+5.6%、寄与度が+0.30%、火災・地震保険料などの設備修繕・維持が上昇率+3.9%、寄与度+0.13%などとなっています。食料をはじめとして、サービスまで幅広い値上がりが見られます。

一昨日の米国連邦準備制度理事会(FED)の連邦公開市場委員会での利下げと昨日の日銀金融政策決定会合での金利据置きを受けて、外国為替市場ではジワリと円安が進んでいます。今後の物価動向やいかに?

|

« 日銀金融政策決定会合と「金融政策の多角的レビュー」 | トップページ | 今週の読書は経済の学術書をはじめとして計7冊 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 日銀金融政策決定会合と「金融政策の多角的レビュー」 | トップページ | 今週の読書は経済の学術書をはじめとして計7冊 »