12月調査の日銀短観予想やいかに?
明日12月13日の公表を控えて、各シンクタンクから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業/非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下のテーブルの通りです。設備投資計画は今年度2024年度です。ただ、全規模全産業の設備投資計画の予想を出していないシンクタンクについては、適宜代替の予想を取っています。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、可能な範囲で、先行き経済動向に注目しました。短観では先行きの業況判断なども調査していますが、シンクタンクにより大きく見方が異なっています。注目です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 大企業製造業 大企業非製造業 <設備投資計画> | ヘッドライン |
9月調査 (最近) | +13 +34 <+8.9> | n.a. |
日本総研 | +12 +32 <+8.2%> | 先行きは、全規模・全産業で12月調査から±0%ポイントの横這いを予想。製造業では、グローバルな財需要の循環的な回復が全体を下支えする一方、米国政府の関税引き上げによる世界経済の減速が懸念され、景況感を下押しする見通し。非製造業の景況感は、所得環境の改善による個人消費の持ち直しが景況感を押し上げる一方、人手不足の深刻化や人件費の増加が押し下げる見通し。 |
大和総研 | +11 +34 <+8.5%> | 大企業製造業では、国内のサービス消費の回復により「食料品」などが改善するとみている。他方、米トランプ次期政権が掲げる関税引き上げへの懸念を背景に、幅広い業種で保守的な見通しが示されるとみている。「自動車」やその周辺産業では、国内の自動車生産体制の正常化が押し上げ要因となる一方、輸出の減少やメキシコなどにおける現地生産の縮小が警戒されよう。また、2025年にかけてはシリコンサイクル(世界半導体市場に見られる循環)の回復ペースの鈍化が見込まれることから、「生産用機械」を中心に半導体関連産業の改善幅は限定的となろう。 大企業非製造業では、中国人訪日客の回復ペースの鈍化1や、米国の関税引き上げなどへの警戒感が表れるだろう。非製造業の業況判断DI(先行き)は製造業と比べて落ち込みやすい傾向があるが、それを差し引いてみても弱気な結果が示される見込みだ。企業が米国の関税引き上げを織り込む程度は不明瞭だが、国際貿易の停滞を見込んで「運輸・郵便」や「卸売」、「対事業所サービス」などでは需要の減少に対する懸念が下押し要因となろう。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +12 +35 <+8.2%> | 大企業・製造業の業況判断DIの先行きは、▲1ポイントの悪化を予測する。これまで回復が続いてきた半導体市場については、足元で出荷・在庫バランスにピークアウト感が見られることから、今後徐々に減速に向かっていく可能性がある。また、米国大統領選でトランプ氏が当選したことで、為替相場や通商政策における不確実性が高まると予想される。これらの要因は、製造業の景況感を下押しするだろう。 大企業・非製造業の業況判断DIの先行きは2ポイントの改善を予測する。10月から最低賃金が5.1%引き上げられた(全国平均)ことに加えて、みずほリサーチ&テクノロジーズでは、今冬の賞与(民間企業一人当たり支給額)を前年対比+3.5%の増加と予想している。所得環境の改善は個人消費に追い風となり、先行きの非製造業の景況感を押し上げるだろう。 |
ニッセイ基礎研 | +11 +32 <+9.0%> | 先行きの景況感については総じて悪化が示されると予想。製造業では、1月に発足するトランプ米政権による関税引き上げや米中貿易摩擦激化への警戒感が景況感に現れるだろう。非製造業では、物価高の長期化による消費の腰折れや人手不足に対する懸念から、先行きの景況感が悪化すると見ている。 |
第一生命経済研 | +10 +34 <大企業製造業17.5%> | 先行きの見方も、トランプ関税の警戒感が強まって、現状よりも悪化するという見方に変わっていくだろう。メキシコ、カナダ、中国に対する関税率の引き上げは、間接的に現地法人を有する日本企業の業績悪化に跳ね返ってくる。トランプ関税は日本にも有害なのだ。 |
三菱総研 | +12 +34 <+8.6%> | 先行きの業況判断DI(大企業)は、製造業+12%ポイント(12月調査「最近」から▲1%ポイント低下)、非製造業は+34%ポイント(同+1%ポイント上昇)を予測する。製造業では、半導体の世界的な需要拡大が関連業種の業況を押し上げるものの、米国新政権の政策(追加関税など)の不透明感から多くの業種では業況に対する慎重な見方が広がるとみられ、全体では小幅の悪化を見込む。非製造業では、実質賃金が改善し始めるなかで、個人消費の持ち直しが続くとみられ、消費関連業種の業況は改善を見込む。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +13 +34 <大企業全産業+9.5%> | 大企業製造業の業況判断DI(最近)は、前回調査から横ばいの13と予測する。加工業種は半導体需要や自動車生産の持ち直しに支えられて改善する一方、素材業種は海外景気の減速やコスト高を受けて横ばいにとどまるとみられる。先行きは、米国トランプ次期大統領による通商政策の不確実性の高まりや不安定な為替相場等から、業況判断DI(先行き)は3ポイント悪化の10と慎重な見通しになるだろう。 大企業非製造業の業況判断DI(最近)は、前回調査から横ばいの34と予測する。堅調なインバウンド需要が下支えとなるものの、景況感はすでに歴史的な高水準にあり、さらなる改善の余地は小さい。先行きは、人手不足の深刻化や金利上昇への警戒感から、業況判断DI(先行き)は3ポイント悪化の31と慎重な見通しになるだろう。 |
農林中金総研 | +12 +31 <8.5%> | 先行きに関しては、世界経済は全般的に低成長状態から抜け出せないとみられるほか、トランプ関税への警戒感も強まっている。一方で、所得改善による消費の本格回復への期待は高い。ただし、収益伸び悩みを予想する企業が多い中、人手不足などによる賃上げ圧力がさらに収益を圧迫させるとの警戒もあるだろう。以上から、製造業では大企業が10、中小企業が▲3 と、今回予測からともに▲2ポイントの悪化、非製造業についても大企業が30、中小企業が10と、今回予測からともに▲1ポイントの悪化と予想する。 |
明治安田総研 | +12 +33 <+8.2%> | 12月の先行きDIに関しても、大企業・製造業は1ポイント悪化の+11、中小企業・製造業も1ポイント悪化の▲3と予想する。中国景気の停滞は長期化が予想されるのに加え、底を打ったとみられていた欧州景気も、その後の回復ペースは想定以上に鈍い。海外景気の見通しの下振れにより、今後の業況への期待は低下していると考えられる。また、今回の12月短観は調査票の発送が11月11日となっており、トランプ氏が次期米大統領となることが確定した6日以降にすべて回収された結果となる。前回、トランプ氏の大統領選勝利後に行なわれた2016年12月調査でも、先行きDIが大企業製造業で▲4ポイント、中小企業で▲5ポイント悪化した。関税引き上げや米中関係の冷え込みによる業績悪化懸念が高まったことも業況を下押ししたとみる。 |
12月調査の日銀短観における景況判断DIはおおむね横ばい圏内と私は考えていますが、これまた、極めて大雑把には、製造業・非製造業ともにやや悪化する可能性が高いと考えています。ただ、先行きについては、製造業で明確に悪化の方向が考えられます。でも、その理由は米国大統領選挙におけるトランプ次期大統領の当選であり、短観回答基準日の後のイベントですので、どこまで回答に織り込まれているかは不明です。設備投資についても、前回調査から上下どちらも方向の予想も見られますが、これまた、私は基本ラインは下方修正だろうと考えており、しかも、昨日公表された法人企業景気予測調査と同じで、最終的に設備投資として実現されることなく計画倒れに終わる可能性も十分あると見ています。
最後に、下は三菱リサーチ&コンサルティングのリポートから引用した 業況判断DIの推移 のグラフです。

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