日銀金融政策決定会合と「金融政策の多角的レビュー」
日銀は、昨日から開催されていた経済政策決定会合において無担保コール翌日物の政策金利の据置きを決定しています。すなわち、現在0.25%としている水準を維持する、ということです。まず、ロイターのサイトから記事を引用すると以下の通りです。
日銀、政策金利の現状維持を決定 田村委員は利上げ主張し反対
日銀は18-19日の金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.25%程度で据え置くことを決めた。経済・物価ともに前回10月の決定会合での判断を維持した。政策金利の現状維持は賛成8反対1で決定。田村直樹委員は、経済・物価が見通しに沿って推移する中、物価上振れリスクが膨らんでいるとして0.5%程度に利上げする議案を提出したが、反対多数で否決された。
景気の現状について、日銀は「一部に弱めの動きみられるが、緩やかに回復している」との判断を維持した。輸出・生産は「横ばい圏内の動き」としたほか、個人消費については「物価上昇の影響などが見られるものの、緩やかな増加基調にある」との判断を据え置いた。その上で、景気の先行きは、海外経済が緩やかな成長続ける下で潜在成長率を上回る成長を続けるとした。
消費者物価の基調な上昇率については、需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから「徐々に高まっていく」とし、展望リポートの見通し期間後半には物価目標と「おおむね整合的な水準で推移する」との見通しを改めて示した。
リスク要因としては海外の経済や物価、資源価格、企業の賃金・価格設定などを挙げ「経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い」とした。金融・為替市場の動向やその日本経済・物価への影響を「十分注視する必要がある」と改めて明記、特にこのところ企業の賃金・価格設定行動が積極化する下で、過去と比べ「為替の変動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある」と指摘した。
今回の決定会合では、2023年4月以降取り組んできた、過去四半世紀の金融政策運営などを振り返る「多角的レビュー」の締めくくりの議論を行った 。日銀は声明文で、多角的レビューの結果も活用しつつ、引き続き2%物価目標の持続的・安定的な実現の観点から「経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく」とした。
包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次いで、記事にも言及されている「金融政策の多角的レビュー」へのリンクは以下の通りです。
黒田前総裁の下での異次元緩和については「2013年以降の大規模な金融緩和」と呼んで、経済・物価には押上げ効果があったものの、期待への働きかけの難しさなどから当初想定したほどの効果が発揮できなかった。さらに、副作用としては、国債市場の機能にははっきりとマイナスの効果があった一方で、金融仲介活動を阻害した証左は見られず、供給サイドへのプラス・マイナス効果は明確な結論は得られない、と結論しています。「金融政策の多角的レビュー」主なポイントからモデルのシミュレーションにより得られた 大規模な金融緩和の効果 のテーブルを引用すると上の通りです。加えて、「金融政策の多角的レビュー」p.128 図表1-3-14 時系列モデル(FAVAR) を用いた政策効果の検証を見る限り、大規模緩和がなければ2015-22年のウクライナ戦争前の時期では、生鮮食品を除くコア消費者物価指数の上昇率はマイナスであった可能性が高いとの結果を得ていますので、物価目標の+2%には届かなかったものの、一定の物価押上げ効果があったと見るのは自然な見方かと思います。
広く報じられている通り、米国連邦準備制度理事会(FED)は昨日12月18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で25ベーシスの利下げを決定し、米国の政策金利であるFF金利は4.25-4.5%となりました。今後の日銀の動向やいかに?
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