+2.9%の上昇を記録した2024年12月の企業向けサービス価格指数(SPPI)
本日、日銀から昨年2024年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月11月の+3.0%からわずかに縮小して+2.9%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも前月から△0.1%ポイント縮小の+3.0%の上昇となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。
企業向けサービス価格24年2.9%上昇、33年ぶり伸び率
日銀が28日に発表した2024年12月の企業向けサービス価格指数(速報値、20年平均=100)は109.1と前年同月比で2.9%上昇した。伸び率は11月(3.0%上昇)から0.1ポイント縮小した。24年平均では前年比2.9%上昇し、1991年(3.0%上昇)以来33年ぶりの高い伸び率となった。
年間では幅広い業種で人件費の価格への転嫁が見られた。特に、宿泊サービスを含む諸サービスや道路貨物輸送を含む運輸・郵便などが全体を押し上げた。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格動向を表す。例えば、貨物輸送代金やIT(情報技術)サービス料などで構成される。モノの価格の動きを示す企業物価指数とともに、今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
24年12月の内訳をみると、宿泊サービスは12.0%上昇と11月(19.1%上昇)から伸び率が縮小した。引き続き高い伸び率を維持しているが、インバウンド需要がわずかに鈍化したことが押し下げに寄与した。引き続き多くの業種で人件費などの諸コストを価格に転嫁する動きが続いている。
調査品目のうち、生産額に占める人件費のコストが高い業種(高人件費率サービス)は3.1%上昇し、低人件費率サービスも2.8%上昇した。調査対象の146品目のうち、価格が上昇したのは113品目、下落は16品目、不変は17品目だった。
もっとも注目されている物価指標のひとつですから、どうしても長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、上昇率としては2023年中に上昇の加速はいったん終了したように見えたのですが、昨年2024年年央時点で再加速が見られ、PPI国内物価指数の前年同月比上昇率は12月統計で+3.8%を示しています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準として一貫して上昇を続けているのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、昨年2024年6月に+3.2%まで加速し、その後、2024年9月に+2.8%を記録した以外は、11月まで+3%以上の上昇率でした。12月になって、ようやく、+3%を下回ったわけです。日銀物価目標の+2%を大きく上回って高止まりしていることは変わりありません。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、+3%近傍の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性があります。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率と高人件費比率のサービスの違いに大きな差はなく、広く人件費などのコストが価格に転嫁されている印象です。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて12月統計のヘッドライン上昇率+2.9%への寄与度で見ると、機械修理や土木建築サービスや宿泊サービスなどの諸サービスが+1.59%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分超を占めています。諸サービスのうち、引用した記事にもあるように、宿泊サービスは11月の+19.1%の上昇から12月には+12.0%になりましたが、インバウンド需要もあって引き続き高止まりしています。加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている項目として、10月から郵便料金が値上げされた郵便・信書便、石油価格の影響が大きい道路貨物輸送などの運輸・郵便が+0.49%、情報処理・提供サービスやソフトウェア開発やインターネット附随サービスといった情報通信が+0.27%、ほかに、景気敏感項目とみなされている広告+0.16%、リース・レンタルも+0.16%などとなっています。
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