ふた月連続で前月比プラスとなり基調判断が上方修正された2024年11月の機械受注
本日、内閣府から昨年2024年11月の機械受注が公表されています。機械受注のうち民間設備投資の先行指標であり、変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月から▲0.7%減の8520億円と、3か月連続の前月比減少を記録しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから引用すると以下の通りです。
11月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比+3.4%=内閣府(ロイター予測: -0.4%)
内閣府が20日に発表した11月機械受注統計によると、設備投資の先行指標である船舶・電力を除いた民需の受注額(季節調整値)は、前月比3.4%増となった。2カ月連続の増加。ロイターの事前予測調査では前月比0.4%減と予想されており、結果はこれを上回った。
前年比では10.3%増だった。
内閣府は、機械受注の判断を「持ち直しの動きがみられる」に上方修正した。
機械受注統計は機械メーカーの受注した設備用機械について毎月の受注実績を調査したもの。設備投資の先行指標として注目されている。
やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、機械受注のグラフは下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

まず、引用した記事にもある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスでは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で見て前月比△0.4%減、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも同様に▲0.3%減でしたので、実績の+3.4%は明らかに上振れした印象です。ただ、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスのレンジ上限は+8.0%増でしたので軽くレンジ内ということはいえます。4か月ぶりの前月比プラスながら、引用した記事にもあるように、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」と、「足踏み」を削除して半ノッチ上方修正しています。7か月ぶりの上方修正だと思います。内閣府の報告によれば、製造業でも、非製造業(除船・電)でも、前月比はプラスであり、前月比で増加したのは17業種の中で、化学工業(+71.4%増)、情報通信機械(+47.4%増)などの7業種であり、他方、減少は10業種となっています。内閣府の以前の報告によれば、10~12月期の見通しは季節調整済みの系列による前期比で+5.7%と集計されており、この見通しは達成されるかどうか、ビミョーなところです。振れの大きな指標ですので、何とも先行きは見通せません。ただ、先行きリスクは下方に厚いと私は考えており、特に、次の日銀金融政策決定会合では金利引上げが予想されており、昨年2024年の利上げの影響も同時にラグを伴って現れる可能性が十分あります。すでに、住宅ローン金利が上昇しているのは広く報じられている通りです。
ただ、さらに大きな謎は、計画段階では先週12月13日に公表された日銀短観などのソフトデータで示されている企業マインドとしての投資意欲は底堅い一方で、実際に設備投資が実行されるに至っておらず、したがって、GDP統計や本日公表された機械受注などには一向に現れていない点です。すなわち、投資マインドと実績の乖離が気にかかります。乖離の理由について、「先行き不透明感」で片付けるのは忍びなく、私は十分には理解できていません。これだけ人口減少による人手不足が続いている中で、労働に代替する資本ストック増加のための設備投資の伸びもなくそのためにDXやGXが進まないとすれば、日本企業は大丈夫なのかどうか大きな不安が残ります。
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