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2025年1月31日 (金)

2か月ぶり増産の鉱工業生産指数(IIP)と一進一退の商業販売統計と堅調な雇用統計

本日は月末の閣議日ということで、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも昨年2024年12月の統計です。IIP生産指数は季節調整済みの系列で前月から+0.3%の増産でした。また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額は、季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.7%増の16兆1230億円を示し、季節調整済み指数は前月から+1.8%の上昇を記録しています。雇用統計では、失業率は前月からわずかに改善して2.4%、有効求人倍率は横ばいの1.25倍を記録しています。まず、ロイターのサイトから各統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産12月は0.3%上昇、予想と一致 電子部品・デバイスなどけん引
経済産業省が31日発表した2024年12月の鉱工業生産指数速報は前月比0.3%上昇と、2カ月ぶりのプラスとなり、ロイターがまとめた事前予想と一致した。
設備投資関連の生産財やスマートフォンで使うモス型メモリなど電子部品・デバイスが伸長した一方で、国内外の新車需要が振るわず、年央までの挽回生産の反動もみられた自動車が減産となったほか、化粧品・洗顔用品など化学もマイナスとなり、全体の足を引っ張った。
企業の生産計画から算出する予測指数は1月が前月比1.0%上昇、2月が同1.2%上昇となった。しかし、予測指数は上振れる傾向があり、12月も前月に算出された予測値を下回った。経済産業省は生産の基調判断を「一進一退」で据え置いた。
12月の生産品目別の前月比は生産用機械が2.9%増、電子部品・デバイスが2.1%増となった。半面、自動車が1.7%減となり、化学も3.0%のマイナスとなった。
農林中金総合研究所の南武志主席研究員は、輸出の基調が弱く、世界経済が加速していない中、生産のトレンドは国内要因に大きく依存していると指摘。輸出が生産をけん引することは当面望めないとした。
小売業販売12月は3.7%増、冬物好調と価格上昇で予想上回る
経済産業省が31日に発表した昨年12月の商業動態統計速報によると、小売業販売額(全店ベース)は前年比3.7%増となった。ロイターがまとめた事前予測(3.2%増)を上回った。冬物衣料の好調や食品など幅広い品目の値上げで金額が膨張した。
業種別の前年比は、織物・衣服などが14.2%増と大きく伸びたほか、燃料が5.1%、機械器具が4.9%、医薬品・化粧品が4.1%、飲食料品が1.7%とそれぞれ増えた。一方、自動車は3.4%減少した。冬物衣料品の好調や飲食料品の価格上昇が主に寄与した。
<ドラッグストアでコメ・解熱剤好調、ホームセンターは紙類値上げ寄与>
業態別ではドラッグストアが9.3%増と大きく伸びた。コメや化粧品に加え、インフルエンザ流行で解熱鎮痛剤などが増えた。家電大型専門店も4.8%増と好調だった。スマートフォン関連や、電気暖房など冬物家電が伸びた。ホームセンターはトイレットペーパーなど紙類の値上げもあり、3.3%増だった。スーパーは3.0%増加。食品の価格上昇が販売額を増やした。百貨店は2.2%増。冬物衣料やインバウンド需要が増加した。半面、コンビニエンスストアは、チケット販売の不振で0.9%減少した。
失業率12月は2.4%に改善、就業者増加 求人倍率1.25倍で横ばい
政府が31日発表した12月の雇用関連指標は完全失業率が季節調整値で2.4%と、前月から0.1ポイント改善した。完全失業者と非労働力人口が減った一方、就業者が増えており、労働市場は拡大している。有効求人倍率は前月比同水準の1.25倍だった。
ロイターの事前予測調査で完全失業率は2.5%、有効求人倍率は1.25倍と見込まれていた。
総務省によると、12月の就業者数は季節調整値で6822万人と、前月に比べて14万人増加。完全失業者数(同)は170万人で、2万人減少した。非労働力人口は20万人減少し3984万人だった。総務省の担当者は「労働市場が拡大しており、雇用情勢は悪くない」としている。
女性の就業者数は3116万人で、比較可能な1953年以降で過去最多となった。2024年平均の完全失業率は2.5%と、前年に比べて0.1ポイント改善。2019年(2.4%)以来の低水準となった。就業者数は6781万人と前年から34万人増加し、1953年以降で過去最多となった。
厚生労働省によると、12月の有効求人数(季節調整値)は前月に比べて0.2%減だった。物価高の影響で原材料費などコストがかさみ、求人を手控える傾向が出ている。一方、有効求職者数(同)も0.2%減少。最近の賃上げ機運を背景に、現在の職場から離転職を踏みとどまる動きがあるという。
有効求人倍率は、仕事を探している求職者1人当たり企業から何件の求人があるかを示す。厚労省の担当者は「倍率は1倍を大きく上回っており、雇用情勢は決して悪い状況ではない」としている。

3つの統計から取りましたので、年次データが利用可能になったというタイミングも加わって、とてつもなく長くなりましたが、的確に取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは下の通りです。上のパネルは2020年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にはある通り、ロイターによる市場の事前コンセンサスでは、鉱工業生産指数(IIP)は+0.3%の増産、また、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、同じく+0.3%の増産が予想されていましたので、実績とまさにジャストミートしました。2か月ぶりの増産ですが、特段のサプライズはありません。統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断については、「一進一退」で据え置いています。先行きの生産については、製造工業生産予測指数を見ると、引用した記事にもある通り、足下の1月は補正なしで+1.0%の増産、2月も+1.2%の増産なのですが、上方バイアスを除去した補正後では、1月の生産は#x25B2;2.1%の減産と試算されています。経済産業省の解説サイトによれば、12月統計における生産は、生産用機械工業が前月比で+2.9%の増産で+0.26%の寄与度を示したほか、電子部品・デバイス工業が+2.1%の増産で+0.21%の寄与度、無機・有機化学工業が+1.4%の増産で+0.06%の寄与度、などとなっています。他方で、生産低下に寄与したのは、自動車工業が▲1.7%の減産で▲0.22%の寄与度、化学工業(除、無機・有機化学工業・医薬品)が△3.0%の減産で△0.14%の寄与度、電機・情報通信機械工業が△1.2%の減産で△0.10%の寄与度、などとなっています。
広く報じられている通り、米国ではトランプ政権発足に伴って関税引上げを連発していて、輸出にいく分なりとも依存する我が国の生産の先行きは極めて不透明です。取りあえず、1月末からの中華圏の春節もあり、春先まで統計的には不連続な時期となる可能性を覚悟しなければならないと私は考えています。

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続いて、商業販売統計のヘッドラインとなる小売業販売額のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の小売業販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整済みの2020年=100となる指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。見れば明らかな通り、小売業販売のヘッドラインは季節調整していない原系列の前年同月比で見るのがエコノミストの間での慣例なのですが、伸び率はまだプラスを維持しているものの、やや伸びに鈍化が見られます。季節調整済みの系列では9月統計からの4か月を見ると、9月△2.2%の減少、10月も△0.2%の後、11月こそ+1.9%と増加を示しましたが、本日公表の12月統計では△0.7%の減少となっています。引用した記事にある通り、ロイターでは前年同月比で+3.2%の伸びを市場の事前コンセンサスとしていましたので、上振れした印象を持つエコノミストも多かろうと思いますが、統計作成官庁である経済産業省では基調判断について、季節調整済み指数の後方3か月移動平均により、経済産業省のリポートでかなり機械的に判断していて、本日公表の12月統計までの3か月後方移動平均の前月比が+0.3%の上昇となりましたので、昨年2024年9月の段階で「上方傾向」から「一進一退」と明確に1ノッチ下方修正した後、今月も「一進一退」で据え置かれています。鉱工業生産と同じ表現となっています。加えて、参考まで、消費者物価指数(CPI)との関係では、12月統計ではヘッドライン上昇率が+3.7%、生鮮食品を除くコア上昇率も+3.0%、生鮮食品及びエネルギーを除くコアコアCPI上昇率も+2.4%となっていますので、小売業販売額の12月統計の前年同月比+3.7%の増加は、インフレ率との関係はビミョーであり、実質消費はプラスか、マイナスか、きわどいところといえます。さらに考慮しておくべき点は、国内需要ではなく海外からのインバウンドにより、部分的なりとも小売業販売額の伸びが支えられている可能性です。したがって、小売業販売額の伸びが国内消費の実態よりも過大に評価されている可能性は考慮されるべきです。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。よく知られたように、失業率は景気に対して遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人数ないし新規求人倍率は先行指標と見なされています。影を付けた部分は景気後退期を示しています。記事にもある通り、ロイターでは失業率に関する事前コンセンサスは前月と同じ2.5%、有効求人倍率も前月から横ばいの1.25倍が見込まれていました。人口減少局面下の人手不足を背景に、失業率・有効求人倍率ともに前月から横ばいながら、どちらの指標も雇用の底堅さを示す水準が続いています。例えば、失業率は2%台なかばですし、有効求人倍率も1倍を超えています。加えて、有効求人倍率はハローワークの統計であって、民間職業紹介事業者では企業の採用ニーズは高いという日経新聞の報道もあります。ただし、そろそろ景気回復局面は後半期に入っている可能性が高いと考えるべきですし、その意味で、いっそうの雇用改善は難しいのかもしれません。ただ、あくまで雇用統計は最近の失業率と有効求人倍率のように横ばいや改善と悪化のまだら模様である一方で、人口減少下での人手不足は続くでしょうし、米国がソフトランディングの可能性を高めている限り、それほど急速な雇用や景気の悪化が迫っているようにも見えません。

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