第一生命経済研究所リポート「エンゲル係数上昇の主因は家計の節約」に見る貧しい日本
先週2月7日に総務省統計局から昨年2024年家計調査の集計結果が公表され、一番目についたのがここ数年のエンゲル係数と消費性向の急激な上昇です。このうち、エンゲル係数の上昇について、一昨日2月10日、第一生命経済研究所から「エンゲル係数上昇の主因は家計の節約」と題するリポートが明らかにされています。図表を引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、リポートから 急上昇するエンゲル係数 のグラフを引用すると上の通りです。実は、私が家計調査の担当課長をしていたのは2010-13年であり、私が担当課長を外れた途端、ということでもないのでしょうが、2010年代半ばからエンゲル係数が急上昇しているのが見て取れます。それまでは、ほぼ22%前後で安定していたのですが、昨年2024年には27%ほどまで、10年かけたとはいえ+5%ポイントの上昇を見せています。そして、このエンゲル係数の上昇をいくつかの要因に分解していて、消費性向の低下と食料品の相対価格の上昇が押上げ要因と指摘した上で、「賃上げや定額減税などに伴い可処分所得が増加したにもかかわらず、値上げに伴い節約志向が強まったことが推察される」と結論しています。
続いて、リポートから 消費者物価と賃金の関係 のグラフを引用しています。食料やエネルギーなど国内供給が十分でなく輸入に依存する財の価格上昇、特に、円安と相まっての国内価格の上昇は悪い物価上昇と指摘し、ディマンドプルによる悪い物価上昇と対比し、名目賃金の上昇が食料やエネルギーの物価に追いついていないことを確認しています。
続いて、リポートから 所得階層別食料・エネルギーの可処分所得比 のグラフを引用しています。家計調査によれば、可処分所得に占める食料・エネルギーの割合は、年収最上位20%の第Ⅴ分位世帯が27.6%程度であるのに対して、年収最下位20%の第Ⅰ分位世帯では51.2%程度であると指摘し、食料・絵ベルギー価格が相対的に上昇することにより、低所得家計の負担感が強まり、食料・エネルギー以外への支出が圧迫され、高所得家計との生活格差がいっそう拡大する、と結論しています。
エンゲル係数については、私も高校教育からの継続性を考慮して大学の授業でも言及しますが、おそらく、大学のはるか以前から教えられるもので、高いということは貧しいことの表れであり、豊かになれば低くなる、という判りやすい経済指標です。ですから、時系列的に貧しい家計や国が豊かになるとエンゲル係数は低下してゆきますし、横断的に貧しい家計や国よりも豊かな家計や国では低いという事実が観察される場合がほとんどです。極めて単純に考えて、エンゲル係数の推移を見る限り、ここ10年ほどで日本は貧しくなった、と結論できるのではないでしょうか。はい、リポートの結論は貧しくなって節約を余儀なくされている、ということなのかもしれません。
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