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2025年2月14日 (金)

来週公表予定の2024年10-12月期GDP統計速報1次QEの予想やいかに?

鉱工業生産指数(IIP)や家計調査や商業販売統計をはじめとして必要な統計がほぼ出そろって、来週月曜日2月17日に、昨年2024年10~12月期GDP統計速報1次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である10~12月期ではなく、足元の1~3月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。明示的に言及しているのはみずほリサーチ&テクノロジーズと明治安田総研くらいのものでした。特に前者については長々と引用してあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.3%
(+1.3%)
2025年1~3月期の実質GDPも前期比年率+1%前後のプラス成長を予想。所得環境の改善や政府の電気・ガス代抑制策の再開などを背景に、個人消費は前期比プラスに復する見通し。好調な企業収益を支えに設備投資も堅調に推移する見込み。
大和総研+0.3%
(+1.4%)
2025年1-3月期の日本経済は4四半期連続のプラス成長を見込んでいる。設備投資には10-12月期に伸びた反動が表れる一方、所得環境の継続的な改善が個人消費の回復を後押しするほか、インバウンド消費の堅調な増加にも期待ができよう。
個人消費は、増加に転じると予想する。厚生労働省「毎月勤労統計調査」によれば、実質賃金(就業形態計・現金給与総額)は2024年6月に前年比+1.1%と27カ月ぶりにプラスへと転換し、7月も同+0.3%とプラス圏で着地した。8~10月はマイナス圏で推移したものの、11月には再びプラス圏(同+0.5%)に浮上するなど、総じて見れば2023年初からの改善傾向が継続している。1-3月期は、エネルギー高対策の再開・延長が実施され、物価上昇が抑制されることなども背景に、実質賃金の上昇が続くとみられる。2024年10月分(支給は12月)から始まった年1.3兆円規模の児童手当の拡充も所得環境の改善を促し、個人消費を押し上げよう。
住宅投資は横ばい圏で推移するとみられる。前述した通り、住宅着工戸数の減少には歯止めがかかったものの、持ち直しの動きは鈍い。住宅価格の高騰が需要を下押しする展開が続くとみられる。
設備投資は、10-12月期に増加した反動から、伸び悩むと予想する。ただし、企業の高い投資意欲を背景に小幅な減少にとどまり、高水準を維持しよう。日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(日銀短観)によると、12月調査時点1における2024年度の設備投資計画(全規模全産業、除く土地、含むソフトウェア・研究開発)は前年度比+10.0%だった。12月調査時点としては比較的高水準を維持しており、企業の投資意欲は引き続き旺盛だ。デジタル化、グリーン化に関連したソフトウェア投資や研究開発投資も底堅く推移するとみられる。
公共投資は横ばい圏で推移するとみられる。4-6月期に上振れした影響の剥落が一巡する中で、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」の執行が下支えを続けると見込んでいる。他方、政府消費は10-12月期の反動もあり増加すると予想する。
輸出は増加が続くとみられる。財輸出は半導体市況の回復などを背景に、増加を続けるとみている。サービス輸出は、10-12月期に上振れした一部の業務サービスにおける反動減が重しとなる一方、インバウンド消費は堅調に増加しよう。
みずほリサーチ&テクノロジーズ+0.2%
(+0.6%)
1~3月期の経済活動についても回復の加速は見込みにくいとみている。
まず、外需については引き続き景気の牽引役は期待しにくい。米国経済は既往の高金利の余波等で減速が見込まれるほか、中国経済も不動産部門の調整長期化・消費の低迷継続が予想される。米国や中国の景気減速に加え、中国輸出の第三国市場への進出拡大と中国企業の競争力向上による輸入代替の動きも日本の輸出にとって逆風になる可能性が高いだろう。また、世界の半導体市場は堅調に推移しているものの、AIブームを受けた価格の押し上げによる面が大きく、高金利下でスマホ・PCの出荷台数は(循環的には回復局面にあるものの)力強さを欠くとみられ、日本の輸出増加にはつながりにくいだろう。インバウンド需要についても、訪日外客数の増勢が一服に向かう可能性が高く、これまでのような回復ペースは期待しにくくなってきている(既にタイ・マレーシアなど一部の国は2019年同月を下回っている。中国からの訪日客についても、国際定期便冬期スケジュールでは中国方面の便数はコロナ禍前対比76%となっている点を踏まえれば、目先はコロナ禍前対比7~8割程度の水準で一進一退となる可能性がある)。
また、トランプ大統領による政策運営については、2月1日からメキシコ・カナダに25%の関税、中国に10%追加関税を導入すると表明するなど、強硬な関税政策等が実施された場合の経済への影響が懸念されるところだ。トランプ大統領が就任以降に発出した大統領令・覚書を分野別にみると、移民政策、外交・安全保障政策、歳出削減に関するものが多く、共和党支持者の賛同率が高い政策に重点的に取り組んでいく姿勢が示されている(インフレへの懸念が根強い中、共和党支持者の中での関税引き上げに対する優先順位は高くない)。米国内のインフレに配慮する形で、関税はあくまで移民排斥・安全保障等の政策を遂行するための交渉材料に位置付けられているとすれば強硬な関税政策が回避される可能性も考えられるが、トランプ大統領の政策運営については不確実性が大きいため引き続き状況を注視する必要がある。2月1日からメキシコ・カナダに関税が課された場合、日系現地法人に大きな影響が生じる点には留意が必要だ(日系現地法人の中南米からの北米向け売上の約75%は輸送機械であり、みずほリサーチ&テクノロジーズは、メキシコ・カナダに25%の関税が課せられた場合は自動車産業で0.6兆円程度のコスト上昇影響が生じると試算している)。日本企業は、交渉次第で高関税が課されるリスクがあるカナダ・メキシコ・中国を中心にサプライチェーンへの影響を踏まえた対応の検討が迫られる。
国内に目を転じると、物価高の継続を受けた実質賃金の改善の鈍さが個人消費の重石になるだろう。野菜・米類の価格高騰が続いていることに加え、既往の円安、人手不足に起因する物流費・人件費の上昇を受けた幅広い食料品の価格上昇が家計の節約志向を強めることが予想される。エネルギー分野でも、政府による電気・ガス代補助が再開される一方、燃料油価格の激変緩和措置が縮小されることが物価の押し上げ要因となる。名目賃金は前年比+3%程度での推移が続くことが見込まれるが、CPI(持家の帰属家賃を除く総合)の伸びが上回り、1~3月期の実質賃金は前年比マイナスでの推移が見込まれる(1月の東京都区部の持家の帰属家賃を除く総合CPIの前年比をみても+4.1%と伸び幅が拡大している)。1月の消費者態度指数をみても「暮らし向き」を中心にさらに低下しており、消費マインドの弱さが目立つ。1~3月期の個人消費は鈍い動きとなる可能性が高いだろう。
一方、設備投資については、引き続き増加を見込んでいる。先行指標をみると、10~11月の機械受注(実質ベース)、受注ソフトウェア売上高(実質ベース)、建設着工床面積(非居住用)はいずれも増加している。前述したように価格転嫁の進展やインバウンド需要の増加が企業の投資余力を下支えしているほか、DX・GX関連投資や人手不足対応の省力化投資も設備投資の押し上げ要因になっているとみられる。グローバル・サプライチェーンの見直しや近年の円安進行、政府による補助等を受けて半導体関連・電池業種等では国内生産拠点強化の動きがみられることも持続的な押し上げ要因になろう。
以上を踏まえ、1~3月期は現時点で年率+0%台半ば程度のプラス成長を予測している。高水準の企業収益が賃金や設備投資に回ることで、内需を中心に日本経済は回復基調で推移するとの見方は維持しているが、実質賃金の低迷は引き続き個人消費・GDPの回復の重石になるだろう。
ニッセイ基礎研+0.3%
(+1.0%)
2024年10-12月期は3四半期連続のプラス成長となったが、民間消費は3四半期ぶりの減少となり、依然としてコロナ禍前(2019年平均)の水準を▲1%程度下回っている。消費活動の正常化にはまだ距離がある。現時点では、2025年1-3月期の実質GDPは前期比年率1%程度のプラス成長を予想しているが、物価の上振れなどを要因として、引き続き民間消費を中心に下振れリスクは高い。
第一生命経済研+0.2%
(+1.0%)
GDP成長率は3四半期連続のプラス成長が予想され、前年比でも2四半期連続でプラスとなる見込みである。景気は緩やかに持ち直していると言って良いだろう。
PwC Intelligence+0.3%
(+1.4%)
2024年10-12月期の実質GDP(1次速報)は前期比+0.3%、年率換算では+1.4%を見込む。
伊藤忠総研+0.4%
(+1.6%)
続く2025年1~3月期も、輸出が堅調に推移する見通し。設備投資が景気の回復を背景に増勢を維持するとみられる中、物価上昇の鈍化や実質賃金の増加を反映して個人消費が持ち直す見込みで、内需が実質GDP成長率を一段と押し上げると予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.4%
(+1.7%)
2024年10~12月期の実質GDP成長率(1次速報値)は、前期比+0.4%(前期比年率換算+1.7%)と予想される。3四半期連続でのプラス成長であり、景気は緩やかな持ち直しを続けていることが示されよう。個人消費が横ばいにとどまるものの、設備投資が底堅く増加し、輸入の減少で外需寄与度が4四半期ぶりにプラスとなることが、全体の伸びを押し上げた。
三菱総研+0.3%
(+1.4%)
2024年10-12月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.3%(年率+1.4%)と、3四半期連続のプラスを予測する。
明治安田総研+0.3%
(+1.1%)
先行きについて、まず個人消費は、春闘における高い水準の賃上げ率が期待できそうだが、食品を中心とする物価高が下押し要因となり、緩やかな回復にとどまると予想する。設備投資は、日銀短観など各種調査で見られるとおり計画は強く、良好な企業業績を追い風に底堅い推移が続くと見込む。一方、住宅投資は、住宅価格の高止まりと住宅ローン金利の上昇が引き続き足枷になるとみる。外需にも景気の牽引役は期待しづらい。インバウンド需要は下支え要因となるものの、中国景気が力強さを欠くことなどから財輸出は停滞気味の推移が見込まれ、日本の景気は緩慢な回復が続くと予想する。
農中総研+0.2%
(+0.6%)
10~12月期のGDPについて、実質成長率は前期比0.2%(同年率換算 0.6%)と、7~9月期(0.3%、1.2%)から鈍化するものの、3期連続のプラスと予想する。前年比は0.4%と2期連続のプラスが見込まれる。名目成長率も前期比0.3%(同年率1.0%)と3期連続のプラスとなるだろう。とはいえ、デフレギャップが存在する中で「潜在成長率」並みの成長率にとどまることから、GDPで見る限り、景気は足踏みに近い動きだったと評価できる。

ということで、季節調整済み系列の前期比年率で+1%前後という緩やかなコンセンサスが見られます。3四半期連続のプラス成長ということになります。なお、日本経済研究センターによるESPフォーキャストではエコノミストの平均値として+1.32%という結果が昨日2月13日に明らかにされています。基本的に外需と設備投資に支えられた成長であり、家計部門の消費や住宅投資はマイナス寄与という見方が多いと私は受け止めています。さらに、上のテーブスのヘッドラインに見られるように、足元の1~3月期もプラス成長が継続して、4四半期連続のプラス成長になる可能性が高いものの、成長率が加速するわけではない、という見方が多いようです。私自身は、直観的な予想ながら、昨年2024年10~12月期の年率成長率は、ESPフォーキャストのコンセンサスを少し下回っていて、プラスはプラスとしても+1%には届かない可能性が高い、その主因はデフレータの上昇である、と考えています。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研究所のリポートから引用しています。私の直観的な予想にもっとも近いと受け止めています。

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