半ノッチ基調判断が下方修正された1月の景気ウォッチャーと貿易・サービス収支が黒字を記録した12月の経常収支
本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2024年12月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.4ポイント低下の48.6となった一方で、先行き判断DIも𥬡.4ポイント低下の48.0を記録しています。また、経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+1兆0773億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターのサイトから記事を引用すると以下の通りです。
街角景気1月は0.4ポイント低下、食品価格上昇などでマインド悪化
内閣府が10日に発表した1月の景気ウオッチャー調査は現状判断DIが48.6となり、前月から0.4ポイント低下した。3カ月ぶりマイナス。引き続きインバウンドや観光関連が景況感の押し上げ要因となっている一方、物価高がマイナス要因となっている。景気判断は「緩やかな回復基調が続いている」で維持した。
指数を構成する3部門では、企業動向関連DIが0.3ポイント上昇した一方、家計動向関連が0.6ポイント、雇用関連が0.7ポイントそれぞれ低下した。
食料品や日用品など身近な商品の値上がりが人々の消費マインドを悪化させているとみられ、回答者からは「野菜や卵などが高くなったという声が多い。98円均一セールなどの商品に魅力がなくなっていることから、客の買物かごの中身が減ってきている」(中国=スーパー)との声が聞かれた。
企業関連では「運賃値上げの気運が高まってきている感はあるが、実現には至っていない。燃料をはじめとした資材価格の高騰が止まらない中、人手不足が更なる状況悪化を招き厳しい環境下にある」(南関東=輸送業)との指摘もあった。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは前月から1.4ポイント低下の48.0と、2カ月連続で低下した。
内閣府は先行きについて「緩やかな回復が続くとみているものの、価格上昇の影響などに対する懸念がみられる」と表現を変更した。先月までの「価格上昇の影響などを懸念しつつも、緩やかな回復が続くとみている」から、文章の前後を入れ替えた。
内閣府の担当者は「回答者からの物価に関するコメント数が、先行きで多くなっている。コメントの内容もマイナス方向のものが多いということで、より回答者の見方を的確に表現した」と説明した。
大和証券のエコノミスト、鈴木雄大郎氏は「年後半にはインフレ率の鈍化を背景に実質賃金が改善して個人消費は回復することが予想されるが、コロナ後のリベンジ消費が一巡している様子もあり、力強さには欠ける動きとなる」と指摘。足元では人手不足倒産も増えており「街角景気が上向く可能性は低い」との見方を示した。
経常収支12月は1兆円、訪日客増で旅行収支の黒字拡大 24年は過去最高の黒字
財務省が10日発表した国際収支状況速報によると、12月の経常収支は1兆0773億円の黒字となった。ロイターが民間調査機関に行った事前調査の予測中央値を若干下回ったものの、堅調な所得収支や貿易黒字に支えられた。
海外証券投資や直接投資等からなる第1次所得収支は、証券投資収益が赤字幅を拡大したことから黒字幅を縮小したが、1兆2755億円の黒字となった。第2次所得収支は2401億円の赤字、貿易・サービス収支は419億円の黒字。
訪日外国人旅客者数が前年比27.6%増となり、旅行収支は前年比26.5%増の5521億円の黒字だった。旅行収支の黒字幅拡大でサービス収支の赤字が大幅に縮小した。
東日本大震災後、貿易収支の赤字化に伴い、経常収支も赤字に転落するのではないかと危惧されたが、2023年1月に2兆円超の赤字を記録した後は、円安と食料品、エネルギー、資源価格の高騰などによる貿易赤字にもかかわらず、海外への証券投資や直接投資からの収入に支えられ黒字が続いている。今後も第1次所得収支に支えられ黒字基調を保つとの見方が大勢で、財務省担当者は、経常収支が近い将来、赤字に転落する可能性は少ないと分析している。
農林中金総合研究所理事研究員の南武志氏は「経常収支は、国内の投資・貯蓄(IS)バランスの反映だといえる。巨額の経常黒字は、国内の投資不足・消費不足の表れ」と指摘し、今後少子高齢化が進むにつれて国内貯蓄が減少に転じる段階で黒字に下押し圧力がかかる可能性があるとしつつ、「向こう何年かで急減することはない」とみている。
2024年通年の経常黒字は前年比6兆6689億円増の29兆2615億円と過去最大を記録した。
第1次所得収支が黒字幅を前年比4兆円超拡大した。輸出額の増加が輸入額を上回り、貿易収支の赤字幅も2兆6019億円縮小し、3兆8990億円になった。為替は対ドルで前年比7.8%の円安で、保有する外貨を円換算した時の金額が膨らむ一方、子会社からの配当金や、海外金利の上昇で債券の利回りが上昇した。
やや長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では昨年2024年10月統計で47.0となった後、11月統計では48.6、12月統計では49.0、そして、本日公表の1月統計でも48.6と3か月ぶりの下低下となっています。家計動向関連が先月から▲0.6ポイント低下した一方で、企業動向関連は+0.3ポイント上昇を見せています。ただし、家計動向関連のうち飲食関連が前月から▲4.0ポイントと大きく低下しており、また、住宅関連も▲2.0ポイントの低下となっています。先行き判断DIでも家計動向関連のうちの住宅関連はさらに▲4.6ポイントの低下となっている一方で、飲食関連は+2.0ポイントの上昇が見込まれています。基本的には、飲食関連は物価高の影響と私は受け止めています。特に、外食のはコメ価格の高騰が大きな影響を及ぼしていると考えるべきです。加えて、コメ以外にも食料品価格の値上がりも激しくなっている点は広く報じられていることと思います。加えて、インフルエンザの流行で人出が少なかった点も上げられるかもしれません。さらに、住宅関連がここまで低迷しているのは、価格上昇に加えて、どこまで金利上昇が影響しているのか、やや気になるところです。また、企業動向関連については、現状判断DI、先行き判断DIともに製造業は前月差プラスで、逆に、非製造業は前月マイナスとなっています。ただ、現状判断DIの水準は家計動向関連で48.6、企業動向関連で48.9と、50に近くて高い水準を維持している点も見逃すべきではありません。長期的に平均すれば50を上回ることが少ない指標ですので、現在の水準は、マインドが決して悪い状態にあるわけではない点には注意が必要です。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「景気は、緩やかな回復基調が続いている」の基本ラインは据え置いていますが、引用した記事にもあるように、ビミョーに懸念材料が明示されて、半ノッチ下方修正という印象です。先行きについては、価格上昇の懸念は大いに残っていて、最大の焦点となりそうです。また、内閣府の調査結果の中から、家計動向関連のうちの見方に着目すると、小売関連では「主要原材料、特に米やのりの値上げが過去最高となっており、価格転嫁せざるを得ず、それが販売数の減少につながっている (南関東-コンビニ)。」や住宅関連では「いつまでも建築資材等の価格上昇が止まらない。様々な物の価格が上昇し、利益が圧迫されている (近畿-住宅販売会社)。 」といったものが目につきました。

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。季節調整していない原系列の統計では、引用した記事にもあるように、貿易・サービス収支が419億円の黒字を計上したようで、私が確認したところ、季節調整済みの系列でも久しぶりに2023年10月以来の黒字を計上しています。季節調整済み系列による貿易・サービス収支の黒字は、この2023年10月をさかのぼると、2021年3月ですので、ここまでさかのぼれば、超久しぶりといえます。ただ、この先の今年2025年1月統計や2月統計は中華圏の春節の時期次第で貿易・サービス収支が大きく振れますので、その点は注意が必要です。私が調べた範囲で、今年の春節は1月29日から2月にかかる期間となっています。お休みは1月28日から始まるそうです。ですので、1月統計と2月統計に何らかのかく乱要因が持ち込まれる可能性があります。さらに、引用した記事にもある通り、日本の経常収支は第1次所得収支が巨大な黒字を計上していますので、貿易・サービス収支が赤字であっても経常収支が赤字となることはほぼほぼ考えられません。ですので、経常収支にせよ、貿易収支・サービスにせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、と私は考えていますので、付け加えておきます。
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