2024年10-12月期GDP統計速報1次QEはちょっとびっくりの年率+2.8%成長
本日、内閣府から2024年10~12月期GDP統計速報1次QEが公表されています。季節調整済みの系列で前期比+0.7%増、年率換算で+2.8%増を記録しています。民間消費も設備投資も前期比プラスです。3四半期連続のプラス成長です。なお、GDPデフレータは季節調整していない原系列の前年同期比で+2.8%、国内需要デフレータも+2.3%に達し、GDPデフレータは9四半期連続、国内需要デフレータも15四半期連続のプラス、うち、最近13四半期では+2%超となっています。また、2024年通年のG成長率は前年比+0.1%増と、ギリギリながら4年連続でプラス成長を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
GDP、10-12月年率2.8%増 24年名目初の600兆円超え
内閣府が17日発表した2024年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.7%増、年率換算で2.8%増だった。省エネ家電の販売増などが個人消費に寄与したほか、半導体関連を中心に設備投資も堅調だった。
24年通年の名目成長率は前年比で2.9%増、実額で609兆2887億円と過去最高となった。通年で初めて600兆円を超えた。
通年の実質成長率は前年比0.1%増と4年連続でプラス成長となった。ダイハツ工業など一部自動車メーカーで発覚した認証不正問題の影響で24年1~3月期にマイナスだったものの、3四半期連続でプラスを維持した。
24年10~12月期の成長率はQUICKが事前にまとめた民間予測の中心値の前期比年率1.0%増を上回った。
GDPの過半を占める個人消費は前期比0.1%増と、3四半期連続でプラスを確保した。東京都が24年10月に省エネ家電購入に関する補助制度を拡充したことなどから、冷蔵庫やエアコンなどの白物家電の購入が増えた。このほか、年末年始に長期休暇を取りやすい日並びだったことから宿泊需要も堅調だったという。
一方、前期に南海トラフ地震臨時情報が出されたことなどを受けて急増した清涼飲料水などの備蓄需要が一服したことや、物価高騰が続くコメや野菜などの消費も低調で、個人消費の押し下げ要因となった。
消費に次ぐ民間需要の柱である設備投資は0.5%増だった。国内で新工場の建設が進む半導体関連の需要がけん引する格好で、半導体製造装置の受注が好調だった。このほか、プラントエンジニアリング関連で新規の設備投資があったほか、ソフトウエア関連の設備投資も引き続き堅調に推移したという。
外需は輸出が1.1%増と3四半期連続でプラスだった。軽油などの石油関連製品が増えたほか、製薬会社が特許権などを譲渡し、サービス輸出も増えた。計算上は輸出に分類するインバウンド(訪日外国人)の日本国内での消費も引き続き好調だった。輸入は2.1%減だった。医薬品や電子部品などの輸入が減ったことから3四半期ぶりにマイナスに転じた。
赤沢亮正経済財政・再生相は速報値の結果を受け、談話を公表。日本経済の先行きについて「引き続き雇用・所得環境が改善する下で、景気の緩やかな回復が続くことが期待される」とする一方、「食料品など身近な品目の物価上昇の継続が、消費者マインドの下押しを通じて個人消費に与える影響に十分注意する必要がある」とした。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした需要項目 | 2023/10-12 | 2024/1-3 | 2024/4-6 | 2024/7-9 | 2024/10-12 |
国内総生産GDP | ▲1.0 | ▲0.5 | +0.7 | +0.4 | +0.7 |
民間消費 | ▲0.1 | ▲0.5 | +0.7 | +0.7 | +0.1 |
民間住宅 | ▲1.2 | ▲2.8 | +1.4 | +0.5 | +0.1 |
民間設備 | +1.9 | ▲0.4 | +1.1 | ▲0.1 | +0.5 |
民間在庫 * | (▲0.1) | (+0.3) | (▲0.0) | (+0.2) | (▲0.2) |
公的需要 | ▲0.3 | ▲0.3 | +1.8 | ▲0.1 | +0.1 |
内需寄与度 * | (+0.0) | (▲0.2) | (+1.1) | (+0.5) | (▲0.1) |
外需(純輸出)寄与度 * | (▲0.1) | (▲0.3) | (▲0.3) | (▲0.1) | (+0.7) |
輸出 | +2.8 | ▲4.1 | +1.7 | +1.5 | +1.1 |
輸入 | +3.1 | ▲2.8 | +3.0 | +2.0 | ▲2.1 |
国内総所得 (GDI) | ▲0.2 | ▲0.5 | +1.0 | +0.5 | +0.8 |
国民総所得 (GNI) | +0.0 | ▲0.5 | +1.4 | +0.5 | +0.4 |
名目GDP | +0.3 | ▲0.1 | +2.1 | +0.7 | +1.3 |
雇用者報酬 (実質) | +0.1 | +0.4 | +0.9 | +0.4 | +1.5 |
GDPデフレータ | +4.2 | +3.1 | +3.1 | +2.4 | +2.8 |
国内需要デフレータ | +2.3 | +2.0 | +2.6 | +2.2 | +2.3 |
上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、縦軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2024年10~12月期の最新データでは、前期比成長率がプラス成長を示し、黒の純輸出のほか、内需では赤の消費や水色の設備投資がプラス寄与しているほか、灰色の在庫やがマイナス寄与しているのが見て取れます。

まず、引用した記事にある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前期比年率で+1.0%のプラスで、予想レンジの上限が+2.1%とはいうことでしたので、実績の年率+2.8%増は上限を突き抜けて上振れしたと私は受け止めています。ただし、中身は外需に依存した成長となっています。すなわち、季節調整済み系列の前期比伸び率で見て、GDP+0.7%増のうち、内需寄与度が▲0.1%、外需寄与度が+0.7%となっています。また、成長をけん引した外需のプラス寄与についても、輸出は伸びている一方で、GDPの控除項目である輸入については内需が奮わない中で減少しており、結果として純輸出の大きなプラス寄与となっています。内需では、特に、GDPコンポーネントとして最大シェアを占める消費が+0.1%とわずかながらプラス寄与を示しています。後のグラフで見るように、雇用者報酬が賃上げの影響でかなり上昇していますので、今年の春闘でも高水準の賃上げ続くようであれば、今後もかなり期待できます。加えて、年末ボーナスも消費増につながった、と私は考えています。目先の景気はそれほど悪くないと私は楽観しています。

先週取りまとめた民間シンクタンクの1次QE予想では、多くのエコノミストが消費についてマイナスを予想していまいた。このブログで取り上げた中で、消費がプラスと予想していたリポートは PwC Intelligence と三菱UFJリサーチ&コンサルティングだけでした。私も同じで、インフレと雇用者報酬の伸び悩みから2024年10~12月期の消費はマイナスと考えていました。それを覆されたのは、当然ながら、インフレの落ち着きと雇用者報酬の一段の伸びです。それをグラフにしたのが上の通りです。上のパネルが季節調整済み系列の雇用者報酬の年率の実額であり、下のパネルは季節調整していない原系列のデフレータの前期比上昇率です。2024年中に雇用者報酬は春闘に従って4~6月期にやや高い伸びを示した後、本日公表されたGDP統計の対象期間である10~12月期には大きく伸びています。私の直観的な想像ながら、年末ボーナスに起因するこのと考えられます。さらに、インフレもまだまだ日銀物価目標の+2%を上回っているとはいえ、国内需要デフレータや民間消費デフレータについては+2%台に徐々に落ち着きを取り戻しつつあります。ただ、盛んに報じられているコメ価格の高騰が、ほかの食料品価格とともに、今後の消費に及ぼす影響については、まだ未知数の部分があります。引用した記事の最後のパラにある通りであり、この点だけは注意が必要です。
それにしても、1次QEの高成長にはびっくりしました。2次QEでどうなるか、特に消費と設備投資について私は興味津々です。
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