来週公表の2024年10~12月期GDP統計速報2次QEは1次QEから大きな変更はない見込み
一昨日公表の法人企業統計をはじめとして必要な統計がほぼ出そろって、来週火曜日3月11日に、昨年2024年10~12月期GDP統計速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。ということで、いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下のテーブルの通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、GDP統計の期間である10~12月期ではなく、足元の1~3月期から先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。しかしながら、2次QE予想は法人企業統計のオマケ的な扱いで、アッサリしたものも少なくありません。明示的に言及しているのはみずほリサーチ&テクノロジーズと明治安田総研くらいのものでした。特に前者については長々と引用してあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
内閣府1次QE | +0.7% (+2.8%) | n.a. |
日本総研 | +0.7% (+2.7%) | 2024年10~12月期の実質FDP(2次QE)は、設備投資が小幅上方改定、公共投資が下方改定される見込み。この結果、成長率は前期比年率+2.7%(前期比+0.7%)と、1次QE(前期比年率+2.8%、前期比+0.7%)からほぼ変わらないと予想。 |
大和総研 | +0.6% (+2.6%) | 2024年10-12月期のGDP2次速報(QE)(3 月 11 日公表予定)では実質 GDP 成長率が前期比年率+2.6%と、1次速報(同+2.8%)から小幅に下方修正されると予想する。主因は10-12月期の法人企業統計の結果を受けた設備投資の下方修正であり、民間企業設備の伸び率は1次速報値から同0.1%pt程度縮小するとみている。 |
みずほリサーチ&テクノロジーズ | +0.8% (+3.0%) | 1~3月期の経済活動については横ばい圏での推移にとどまる可能性が高いとみている。 まず、外需については引き続き景気の牽引役は期待しにくい。米国経済は既往の高金利の余波等で減速が見込まれるほか、中国経済も不動産部門の調整長期化・消費の低迷継続が予想される。特に、これまで堅調な推移が続いてきた米国については足元の経済指標が総じて弱い点が懸念材料だ(1月の実質消費支出は予想を上回る減少幅になっており、関税引き上げ前の駆け込み需要の反動に加え、寒波による下押しが主因とみられるが、景気の先行きについては注意が必要だ)。米国や中国の景気減速に加え、中国輸出の第三国市場への進出拡大と中国企業の競争力向上による輸入代替の動きも日本の輸出(特に機械関連)にとって逆風になる可能性が高いだろう。1月の輸出数量指数(みずほリサーチ&テクノロジーズによる季節調整値)も前月の反動が出た欧州向けを中心に前月比▲0.4%と軟調に推移しており、先行きも輸出数量は横ばい圏での推移が続く公算が大きいとみている。インバウンド需要についても、訪日外客数の増勢が一服に向かう可能性が高く、これまでのような回復ペースは期待しにくくなってきている。1月の訪日外客数は378万人(19年比+41%)と大幅に増加したが、春節期間のズレが押し上げに寄与したとみられ(旧正月が2019年や2024年は2月始まりであったのに対し、今年は1月下旬始まりであった)、2月以降は水準を落とす可能性が高く、1月の動きは割り引いて評価する必要があるだろう。先行きの訪日客数は宿泊施設や航空便の供給制約もあり、増加ペースが鈍化すると予想している。 さらに、トランプ大統領による強硬な関税政策がリスク要因となる。トランプ大統領の政策運営は、関税を交渉材料とした「移民・麻薬対策の強化」から政策の軸足が「貿易不均衡の是正」にシフトしており、これまでも鉄鋼・アルミニウムに加えて自動車・半導体・医薬品に25%の関税を課す方針を発表しているほか、メキシコ・カナダに対しては3月4日から25%、中国に対しても追加で10%の関税導入を表明している。さらに足元では欧州製品に対しても25%の関税を課す計画を近く発表すると明言しており、仮に中国に20%、メキシコ・カナダ・欧州に25%の関税が課された場合、日本のGDPは▲0.2%程度下押しされる計算だ(なお、米国のGDPは▲1.5%程度下押しされると試算され、米国経済がゼロ%台の成長率となる可能性があり米国自身の返り血が相当大きいと考えられることから、実際に中国以外の国に対して全品目を対象とした高関税を課すかどうかは引き続き注視する必要があるだろう)。 米国政府の「相互関税」に関する覚書は、各国に対して関税だけでなく非関税障壁や付加価値税など幅広い障壁の削減を要求しており、対米貿易黒字が継続している日本についても「構造的な(非関税)障壁が高い」ことが問題視されることで対米輸出自動車等に追加関税が課される可能性も否定できない状況だ。25%への関税引き上げが報じられる鉄鋼・アルミニウム・半導体については対米輸出額が相対的に小さく、関税引き上げによるGDPへの直接的な影響は限定的であると考えられるが、日本に対する自動車の輸入関税が引上げられる事態となれば日本経済への影響は大きい。仮に日本に対する自動車の輸入関税が大幅に引上げられた場合、日本メーカーは単価の低い車種の輸出停止(一部を現地生産に切り替え)を余儀なくされる可能性があるだろう。みずほリサーチ&テクノロジーズは、仮に自動車について25%の関税が課せられ対米自動車輸出が(低単価の車種を中心に)4割減少すると想定した場合は日本のGDPが▲0.3%程度下押しされると試算している(いずれも産業連関表により国内生産への波及効果も加味した試算であるが、輸出(▲0.5兆円)と生産波及効果(▲1.3兆円)を合わせ、輸送用機械が生産する付加価値の10%超が吹き飛ぶ計算となる)。こうしたリスクも頭に入れた上で、引き続きトランプ大統領の政策運営や日米交渉の動向に注視していく必要があるだろう。 国内に目を転じると、物価高の継続を受けた実質賃金の改善の鈍さが個人消費の重石になるだろう。野菜・米類の価格高騰が続いていることに加え(1月の消費者物価指数では生鮮野菜が前年比+36.0%、米類が同+70.9%と高騰)、既往の円安、人手不足に起因する物流費・人件費の上昇を受けた幅広い食料品の価格上昇が家計の節約志向を強めることが予想される。帝国データバンク「「食品主要195社」価格改定動向調査(2025年3月)」によれば、2025年前半は前年を上回るペースで飲食料品値上げが予定されている。エネルギー分野でも、政府による電気・ガス代補助が再開される一方、燃料油価格の激変緩和措置が縮小されることが物価の押し上げ要因となる。冬のボーナスによる賃金上昇率の押し上げは一時的なものであり、2025年1月以降の名目賃金は前年比+3%程度での推移が見込まれるが、CPI(持家の帰属家賃を除く総合)の伸びが上回り、1~3月期の実質賃金は再び前年比マイナスでの推移が見込まれる(1月の全国の持家の帰属家賃を除く総合CPIの前年比をみても+4.7%と伸び幅が拡大している)。1月の消費者態度指数をみても「暮らし向き」を中心にさらに低下しているほか、1月の景気ウォッチャー調査でも家計動向関連の現状判断DIは小売や飲食を中心に低下しており、消費マインドの弱さが目立つ。1月の商業動態統計の小売業販売額(実質・季節調整値)をみると、自動車の国内販売が回復する一方、節約志向の高まりを受けた衣類・飲食料品の不振が下押ししたことで全体では前月比▲0.5%と低下しており、1~3月期の個人消費は弱い動きとなる可能性が高いだろう。一方、設備投資については、引き続き増加を見込んでいる。先行指標をみると、10~12月期の機械受注(実質ベース)、受注ソフトウェア売上高(実質ベース)はいずれも増加傾向で推移している。建設着工床面積(非居住用)が減少するなど建設投資は弱い動きが続く一方で、特にソフトウェア投資が全体をけん引する構図が続いている。前述したように価格転嫁の進展やインバウンド需要の増加が企業の投資余力を下支えしているほか、DX・GX関連投資や人手不足対応の省力化投資も設備投資の押し上げ要因になっているとみられる。グローバル・サプライチェーンの見直しや近年の円安進行、政府による補助等を受けて半導体関連・電池業種等では国内生産拠点強化の動きがみられることも持続的な押し上げ要因になろう。ただし、前述したようなトランプ大統領の政策運営等を巡る不確実性が先行きの設備投資を下押しする可能性もある点には留意が必要だ(1月の景気ウォッチャー調査をみても、「米国の動静によっては設備投資が止まるため、予断を許さない状況(一般機械)」等のコメントが見られる)。 以上を踏まえ、1~3月期の日本経済は現時点でゼロ成長近傍にとどまる可能性が高いと予測している。外需に景気の牽引役は期待しにくい中、高水準の企業収益が賃金や設備投資に回ることで内需を中心に日本経済は回復基調で推移するとの見方を維持しているが、当面は実質賃金の低迷が引き続き個人消費の重石になることに加え、トランプ大統領の強硬な政策運営がリスク要因になる点には留意が必要だ。 |
ニッセイ基礎研 | +0.6% (+2.5%) | 3/11公表予定の24年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.6%(前期比年率2.5%)となり、1次速報の前期比0.7%(前期比年率2.8%)から下方修正されると予想する。 |
第一生命経済研 | +0.7% (+2.8%) | 2024年10-12期実質GDP(2次速報)は前期比年率+2.9%(前期比+0.7%)を予想する。 |
三菱総研 | +0.7% (+2.9%) | 2024年10-12月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.7%(年率+2.9%)と、1次速報値(同+0.7%(年率+2.8%))から概ね不変と予測する。 |
明治安田総研 | +0.7% (+2.9%) | 先行きの日本の景気は緩やかな回復傾向が続くと予想する。個人消費は、今年も春闘における高い賃上げ率が実現する可能性が高まっているものの、食品価格の上昇が引き続き足枷となるが、底堅いデジタル関連投資が追い風になると見込む。輸出は、サービス輸出についてはインバウンド需要が引き続き下支え要因いなるとみる。一方、財輸出については中国景気の停滞が長期化すると見込まれることに加え、トランプ政権の関税政策がどの程度の広がりと深さを見せるのか現状では不透明感が強く、停滞気味の推移が続くと予想する。 |
見れば明らかな通り、1次速報の季節調整済み系列の前期比+0.7%、前期比年率+2.8%成長から大きな変更はないとの予想が多くなっています。従って、日本経済は緩やかな回復局面にある、という現状認識も変更する必要はないものと考えられます。法人企業統計の結果に従った設備投資の修正の方向がシンクタンクによってマチマチに見えるのですが、私は下方修正だと考えています。ですから、GDP成長率もこの下方修正に従って、同じ方向、すなわち、下方修正されるのだろうと見込んでいます。
最後に、ニッセイ基礎研究所のリポートから 2024年10-12月期GDP2次速報の予測 のテーブルを引用すると以下の通りです。
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