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2025年3月26日 (水)

2月の企業向けサービス価格指数(SPPI)は上昇率がやや縮小したものの+3%で高止まり

本日、日銀から2月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月1月の+3.2%からわずかに縮小して+3.0%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIも前月から△0.2%ポイント縮小の+3.1%の上昇となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、2月3.0%上昇 人件費の転嫁続く
日銀が26日に発表した2月の企業向けサービス価格指数(速報値、2020年平均=100)は108.7となり、前年同月に比べ3.0%上昇した。伸び率は1月(3.2%上昇)から0.2ポイント低下したものの、5カ月連続で3%台となった。人件費を価格に転嫁する動きの広がりが鮮明になりつつある。
3%以上の上昇率が5カ月続いたのは、消費税導入・増税の影響を除くと1990年4月から91年3月(12カ月連続)以来約34年ぶりとなった。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格動向を表す。例えば、貨物輸送代金やIT(情報技術)サービス料などが含まれる。企業間取引のモノの価格動向を示す企業物価指数とともに、今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。今回、1月分の前年同月比上昇率は3.1%から3.2%に上方修正になった。
2月分の内訳をみると、テレビ・ラジオ広告が前年同月比で0.8%下落し、1月(7.6%上昇)と比較すると伸び率が上昇からマイナスに転じた。フジテレビ問題などを発端に業界全体で需要が落ち込み、出稿量が減少したことで単価が下落した。
宿泊サービスは11.8%上昇し、1月(16.8%上昇)から伸び率が鈍化した。引き続き堅調なインバウンド需要がみられ、高い伸び率が続いた。一方、春節(旧正月)が2月中にあった昨年に比べ、今年は1月下旬から始まったことで中国などアジア圏からの旅行需要が1~2月に分かれて発生したことが押し下げ要因として働いた。
調査品目のうち、生産額に占める人件費のコストが高い業種(高人件費率サービス)は3.3%上昇し、全体をけん引した。低人件費率サービスは2.6%上昇し、1月(3.1%上昇)から伸び率が鈍化した。高人件費率サービスは足元で高い伸び率を維持しており、人件費を価格に転嫁する動きが明確になっている。
調査対象の146品目のうち、価格が上昇したのは111品目、下落19品目、不変は16品目だった。

もっとも注目されている物価指標のひとつですから、どうしても長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

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上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、上昇率としては2023年中に上昇の加速はいったん終了したように見えたのですが、昨年2024年年央時点で再加速が見られ、PPI国内物価指数の前年同月比上昇率は2月統計で+4.0%に達しています。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準として一貫して上昇を続けているのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、昨年2024年6月に+3.2%まで加速し、その後、2024年9月に+2.8%を記録した以外は、本日公表の2025年2月まで+3%以上の上昇率を続けています。日銀物価目標の+2%を大きく上回って高止まりしているわけです。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、+3%近傍の上昇率はデフレに慣れきった国民マインドからすれば、かなり高いインフレと映っている可能性が高いと考えるべきです。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率と高人件費比率のサービスの違いに大きな差はなく、人件費をはじめとして幅広くコストが価格に転嫁されている印象です。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて2月統計のヘッドライン上昇率+3.0%への寄与度で見ると、機械修理や廃棄物処理や土木建築サービスなどの諸サービスが+1.63%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分超を占めています。諸サービスのうち、引用した記事にもあるように、宿泊サービスは1月の+16.8%の上昇から2月には+11.8%になりましたが、インバウンド需要もあって引き続き高止まりしています。加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている項目として、10月から郵便料金が値上げされた郵便・信書便、石油価格の影響が大きい道路貨物輸送などの運輸・郵便が+0.54%、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスといった情報通信が+0.40%、ほかに、不動産+0.22%、リース・レンタルも+0.18%などとなっています。

連合による春闘回答の集計結果は、3月14日の第1回集計では17,828円 +5.46%、3月21日の第2回集計でも17,486円 5.40%と昨年をやや上回る高水準の賃上げが期待できそうです。日本経済は本格的にデフレを脱却して、物価と賃金の好循環を実現できるのでしょうか?

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