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2025年4月24日 (木)

6か月連続で+3%台の上昇率となった3月の企業向けサービス価格指数(SPPI)

本日、日銀から3月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は前月2月の+3.2%からわずかに縮小して+3.1%を記録し、変動の大きな国際運輸を除くコアSPPIは前月と同じ+3.2%の上昇となっています。まず、日経新聞のサイトから統計のヘッドラインを報じる記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、3月3.1%上昇 人件費転嫁進む
日銀が24日に発表した3月の企業向けサービス価格指数(速報値、2020年平均=100)は109.7となり、前年同月に比べ3.1%上昇した。伸び率は2月(3.2%)から0.1ポイント低下したものの6カ月連続で3%台となった。人件費を価格に転嫁する動きが続く。
企業向けサービス価格指数は企業間で取引されるサービスの価格動向を表す。貨物輸送代金やIT(情報技術)サービス料などが含まれる。企業間取引のモノの価格動向を示す企業物価指数とともに、今後の消費者物価指数(CPI)に影響を与える。
日銀は今回の発表で2月分の前年同月比上昇率を3.0%から3.2%に遡及修正した。
3月分の内訳をみると、人件費の価格転嫁を背景に機械修理は前年同月比9.4%上昇、廃棄物処理は6.6%上昇した。いずれも2月から伸び率は横ばいだが、全体の押し上げに寄与した。宿泊サービスは11.0%上昇した。2月(11.8%上昇)から0.8ポイント鈍化したが、好調なインバウンド需要を受けて伸び率は高水準を維持している。
情報通信でも人件費の転嫁が進み、ソフトウエア開発が前年同月比2.5%上昇した。2月(1.9%上昇)から伸び率が拡大した。不動産では入居テナントの売り上げ増加などを受けて、ホテル賃貸や店舗賃貸などが2.6%上昇した。
調査品目のうち、生産額に占める人件費のコストが高い業種(高人件費率サービス)は前年同月比3.4%上昇し、低人件費率サービス(2.8%上昇)を上回った。人件費を価格に転嫁する動きが鮮明になりつつある。
24年度の企業向けサービス価格指数は108.3と前年度比2.9%上昇した。14年度(3.3%上昇)以来10年ぶりの高水準となった。宿泊サービスなどの伸びが大きく寄与した。

もっとも注目されている物価指標のひとつですから、どうしても長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)のグラフは下の通りです。上のパネルから順に、ヘッドラインのサービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)の国内物価上昇率もプロットしてあり、真ん中のパネルは日銀の公表資料の1ページ目のグラフをマネして、国内価格とサービス価格のそれぞれの指数水準をそのままプロットしています。一番下のパネルはヘッドラインSPPI上昇率の他に、日銀レビュー「企業向けサービス価格指数(SPPI)の人件費投入比率に基づく分類指数」で示された人件費投入比率に基づく分類指数のそれぞれの上昇率をプロットしています。影を付けた部分は、景気後退期を示しています。

photo

上のグラフで見ても明らかな通り、モノの方の企業物価指数(PPI)のトレンドはヘッドラインとなる国内物価指数で見る限り、上昇率としては2023年中に上昇の加速はいったん終了したように見えたのですが、昨年2024年年央時点で再加速が見られ、PPI国内物価指数の前年同月比上昇率は3月統計で+4.2%に達しています。昨年2024年12月から4か月連続での+4%台の上昇です。他方、本日公表された企業向けサービス物価指数(SPPI)は、指数水準としてコンスタントに上昇を続けているのが見て取れます。企業向けサービス価格指数(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率は、昨年2024年6月に+3.2%まで加速し、その後、2024年9月に瞬間風速で+2.8%を記録した以外は、本日公表の2025年3月まで+3%台の上昇率を続けています。2024年10月からカウントしても6か月連続の+3%台の上昇率です。日銀物価目標の+2%を大きく上回って高止まりしているわけです。もちろん、日銀の物価目標+2%は消費者物価指数(CPI)のうち生鮮食品を除いた総合で定義されるコアCPIの上昇率ですから、本日公表の企業向けサービス価格指数(SPPI)とは指数を構成する品目もウェイトも大きく異なるものの、+3%近傍の上昇率はデフレに慣れきった国民や企業のマインドからすれば、かなり高い物価上昇と映っている可能性が高いと考えるべきです。人件費投入比率で分類した上昇率の違いをプロットした一番下のパネルを見ても、低人件費比率と高人件費比率のサービスの違いに大きな差はなく、人件費をはじめとして幅広くコストが価格に転嫁されている印象です。その意味では、政府や日銀のいう物価と賃金の好循環が実現しているともいえますが、実態としては、物価上昇が賃金上昇を上回っており、国民生活が数量ベースで苦しくなっているのは事実であるといわざるをえません。
もう少し詳しく、SPPIの大類別に基づいて2月統計のヘッドラインSPPI上昇率+3.1%への寄与度で見ると、機械修理や廃棄物処理や宿泊サービスなどの諸サービスが+1.60%ともっとも大きな寄与を示していて、ヘッドライン上昇率の半分超を占めています。諸サービスのうち、引用した記事にもあるように、宿泊サービスは2月の+11.8%の上昇から3月には+11.0%になりましたが、インバウンド需要もあって引き続き高止まりしています。加えて、SPPI上昇率高止まりの背景となっている項目として、10月から郵便料金が値上げされた郵便・信書便、石油価格の影響が大きい道路貨物輸送さらに、サードパーティーロジスティクスなどの運輸・郵便が+0.50%、ソフトウェア開発や情報処理・提供サービスやインターネット附随サービスなどといった情報通信が+0.44%、ほかに、不動産+0.20%、リース・レンタルも+0.14%、広告+0.13%などとなっています。

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