« 10か月連続で「下げ止まり」を示す2月の景気動向指数 | トップページ | 4か月連続で低下した3月の消費者態度指数 »

2025年4月 8日 (火)

物価高騰で低下の続く3月の景気ウォッチャーと大きな黒字を計上した2月の経常収支

本日、内閣府から3月の景気ウォッチャーが、また、財務省から2月の経常収支が、それぞれ、公表されています。各統計のヘッドラインを見ると、景気ウォッチャーでは、季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.5ポイント低下の45.1、先行き判断DIも▲1.4ポイント低下の45.2を記録しています。経常収支は、季節調整していない原系列の統計で+4兆607億円の黒字を計上しています。まず、統計のヘッドラインを報じる記事をロイターと日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

街角景気3月は3カ月連続の悪化、食品高で 先行きは米関税に懸念
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査は、現状判断DIが前月から0.5ポイント低下し45.1となった。低下は3カ月連続で、2022年7月(43.6)以来の低水準となった。食料品の価格上昇や各種コスト高が景況感を悪化させている。先行きでは、米国の通商政策に対する懸念が強まっている。
指数を構成する3部門は全てマイナスで、家計動向関連が前月から0.1ポイント、企業動向関連が0.5ポイント、雇用関連が3.9ポイントそれぞれ低下した。
景気判断は前月引き下げたばかりで、今月も状況に変化がないことから「緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる」で据え置いた。
回答者からは「野菜およびコメの価格高騰の影響が大きく、買い控えが顕著」(中国=一般小売店<食品>)、「建設費高騰などの影響で事業予算内に収まらず、計画中止になる案件が複数出ている」(東北=建設業)といった声が聞かれた。
2-3カ月先の景気の先行きに対する判断DIは前月から1.4ポイント低い45.2と、4カ月連続で低下。22年7月(43.2)以来の低水準となった。トランプ米政権の関税政策の影響を懸念する声が急増している。
内閣府は先行きについて「賃上げへの期待がある一方、従前からみられる価格上昇の影響に加え、米国の通商政策への懸念もみられる」とまとめた。
大和証券の鈴木雄大郎エコノミストは、引き続き商品の値上げに対する節約志向が強いと指摘。米国の相互関税が想定を上回る内容だったことは調査に反映されておらず、来月分が「もう一段悪化する可能性が高い」との見方を示す。
調査期間は3月25日から31日。トランプ政権が26日に輸入自動車に対して25%の追加関税を課す計画を発表し、調査期間は世界景気の不透明感に対する織り込みが進んでいた。
2月経常黒字、過去最高の4兆607億円 前年比48%増
財務省が8日発表した2月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支は4兆607億円の黒字となった。黒字幅は前年同月から48.4%拡大し、単月としては過去最高となった。前年に比べ輸出額が増えた。
経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやりとりを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。
貿易収支は7129億円の黒字(前年同月は2983億円の赤字)だった。自動車や半導体製造装置の輸出が増え、輸出額は9兆55億円と前年同月比10.4%伸びた。輸入額は1.9%減の8兆2926億円だった。
貿易黒字に転じた背景には、中国の春節(旧正月)の時期のズレもある。例年、春節休暇中には現地の生産活動が停滞し、日本からの輸出が鈍る。2025年は1月末から春節に入り、2月は影響が少なかったが、24年は2月半ばが春節期間だったため、反動で前年からの伸びが大きくなった。
サービス収支は1755億円の赤字だった。赤字幅は前年同月から49.1%拡大した。製薬会社などに関連する知的財産関連の使用料の受け取りが減る一方、海外向けの支払いが増えた。
旅行収支は5599億円の黒字だった。前年同月から黒字額は約4割増え、2月としては過去最高だった。訪日客(インバウンド)が増えた効果が出た。
海外投資に伴う利子や配当の収支を示す第1次所得収支は3兆8817億円の黒字で、黒字幅は10.9%増えた。主に債券の投資残高が増えたことが寄与した。

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、色分けは凡例の通りです。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

photo

景気ウォッチャーの現状判断DIは、最近では2月統計で前月から大きく▲3.0ポイント低下して45.6となった後、本日公表の3月統計ではさらに▲0.5ポイント低下して45.1を記録しています。先行き判断DIもさらに大きな低下を見せており、3月統計は前月から▲1.4ポイント低下の45.2となっています。現状判断DIでは家計動向関連のうちの小売関連が▲0.3ポイントの低下となっている一方で、飲食関連は+0.4ポイントの上昇、サービス関連も+0.3ポイントの上昇と、わずかながら上昇を記録しています。基本的には物価上昇、特に食料の価格高騰の影響が家計関連のマインドに出ていると私は見ています。それにしては、外食のはコメ価格の高騰が大きな影響を及ぼしていると考えるべきなのですが、1月統計から2月統計にかけて▲4.8ポイントの大きな低下を示した後、3月統計では+0.4ポイントの上昇を見せています。また、住宅関連が3月には前月差で▲1.9ポイント低下しており、価格上昇に加えて、どこまで金利上昇が影響しているのか、やや気になるところです。企業動向関連については、現状判断DI、先行き判断DIともに製造業は前月差プラスで、逆に、非製造業は前月マイナスとなっています。まだ、米国の関税政策・通商政策の影響は、ロイターの記事では織込み済みとはいえ、マインドには現れていません。ただ、先行き、ここ数日の米国通商政策に起因する金融市場の混乱などを受けて、家計も企業もマインドを悪化させることは確実です。統計作成官庁である内閣府では基調判断を「景気は、緩やかな回復基調が続いているものの、このところ弱さがみられる。」と先月からの基本ラインは据え置いています。先行きについては、国際面での米国の通商政策とともに、国内では価格上昇の懸念は大いに残っていて、最大の焦点となりそうです。また、内閣府の調査結果の中から、家計動向関連に着目すると、小売関連では「野菜及び米の価格高騰の影響が大きく、買い控えが顕著であり、販売数量は前年を下回っている(中国=一般小売店[食品])。」といったものが目につきました。

photo

続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。季節調整していない原系列の統計では、引用した記事にもあるように、貿易・サービス収支が5374億円の黒字を計上したようです。ただし、私が注目している季節調整済みの系列では、2024年12月に2023年10月以来の黒字を計上した後、今年に入って、2025年1月、2月は赤字に戻っています。直近でデータが利用可能な2月は速報段階で▲1337億円の赤字を計上しています。1月統計や2月統計は、旧暦で決まる中華圏の春節の時期次第で貿易・サービス収支が大きく振れますので、その点は注意が必要です。私が調べた範囲で、今年の春節は1月29日から2月にかかる期間となっています。お休みは1月28日から始まるそうです。ですので、1月統計と2月統計に何らかのかく乱要因が持ち込まれていた可能性があります。さらに、引用した記事にもある通り、日本の経常収支は第1次所得収支が巨大な黒字を計上していますので、貿易・サービス収支が赤字であっても経常収支が赤字となることはほぼほぼ考えられません。はい。トランプ関税によって貿易収支の赤字が拡大したとしても、第1次所得収支で十分カバーできると考えるべきです。ですので、経常収支にせよ、貿易収支・サービスにせよ、たとえ赤字であっても何ら悲観する必要はありません。エネルギーや資源に乏しい日本では消費や生産のために必要な輸入をためらうことなく、経常収支や貿易収支が赤字であっても何の問題もない、逆に、経常黒字が大きくても特段めでたいわけでもない、と私は考えていますので、付け加えておきます。

|

« 10か月連続で「下げ止まり」を示す2月の景気動向指数 | トップページ | 4か月連続で低下した3月の消費者態度指数 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 10か月連続で「下げ止まり」を示す2月の景気動向指数 | トップページ | 4か月連続で低下した3月の消費者態度指数 »