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2025年4月11日 (金)

日銀「さくらリポート」(2025年4月)を読む

やや旧聞に属するトピックながら、今週月曜日の4月7日に日銀支店長会議において「さくらリポート」(2025年4月)が公表されています。おそらく、トランプ関税直後で株安なども含めて、まだ経済的影響が十分に織り込まれていない一方で、春闘の1次回答はすでに分析されているという気がします。その意味で、やや中途半端なのですが、それは日銀の責任ではありません。いずれにせよ、このリポートを簡単に見ておきたいと思ます。まず、日銀のサイトから総括判断を短く引用すると以下の通りです。

景気の総括判断
一部に弱めの動きもみられるが、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。

続いて、各地域の景気の総括判断と前回との比較のテーブルは以下の通りです。

 【2025年1月判断】前回との比較【2025年4月判断】
北海道一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している
東北緩やかに持ち直している持ち直している
北陸一部に能登半島地震の影響がみられるものの、緩やかに回復している一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
関東甲信越一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
東海緩やかに回復している緩やかに回復している
近畿一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに持ち直している一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
中国緩やかな回復基調にある緩やかな回復基調にある
四国緩やかに持ち直している緩やかに持ち直している
九州・沖縄一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している

テーブルを見れば明らかなのですが、すべての地域で「前回判断と比較して景気の改善・悪化度合いが変化しなかった」という意味の水平矢印が示されています。しかも、北陸でビミョーに表現が変更されて、「能登地震の影響」が削除されたほかは、4月の地域別総括判断は1月から変更なしであり、まったく同じ表現振りとなっています。
pdfの全文リポートでは、トピック別の「企業等の主な声」というのがあって、① 個人消費、② 精算・輸出・設備投資、③ 雇用、賃金設定、④ 価格設定、のトピックを取り上げています。これらのうち、② 精算・輸出・設備投資 のなかから、米国の関税や通商政策に関するものが3点あり引用すると以下の通りです。

  • 国内外の堅調な需要を背景に、生産は増加基調にある。なお、米国等で先行きの政策運営に関する不透明感が強く、とりわけ通商政策についてはその影響を見極めたうえで、具体的な行動に移る方針 (名古屋[輸送用機械])。
  • 米国の通商政策の影響を事業計画に織り込むのは困難。現時点で生産・輸出計画を変えていないが、ダウンサイドリスクは意識している (大阪[電気機械])。
  • 米国大統領選の行方が不透明な中で発生していた海外顧客の買い控えの動きは、政権発足後も通商政策の着地がみえないことから、続いている (高松[生産用機械])。

米国トランプ政権による関税政策や通商政策に起因し先行き不透明感が強まる中で、リスクはダウンサイドに厚い、という点は十分に認識されているようです。

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